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燃えた夏  作者: Karyu
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第七十二話 前夜祭レディ・セット……

 

 刈谷は後頭部を抑えながら涙を滲ませている綾夏の所に駆け足で向かった。


「木宮さん、何してんだ?」


「あ、刈谷くん……。じ、実は流騎くんが……女の子で………パーティーで……一緒なの!」


「か、萱場がどうかしたのか……?」


「だからパーティーで、女の子で、食べ物で、流騎くんなんだってば!」


「木宮さん、とにかく落ち着け、な?」


「う、うん……」


「君達知り合いかね?」


 先程まで無視されていた警官は少し怒りながらも尋ねた。


「あ、はい。同級生です。何かありましたか?」


 刈谷は綾夏に代わって警官に説明した。


「いや、彼女が不審な行動をしていたので注意したまでなのだが、今後から気をつけてくれたまえよ」


「はい、すみませんでした」


 刈谷は綾夏の代わりに謝り、警官は納得したような安堵したかのような表情で立ち去っていった。


「ごめん……刈谷くん」


「いや、ああいうのは向こうの仕立てに回った方が早くけり付くからな。それで萱場がどうしたのか?」


「うん、さっき流騎くんを見かけたんだけどね」


「ああ」


「流騎くんそこのスーパーから出てきて両手に大量の食料持ってたの」


「きっと今日のパーティー用の食料だろうな」


「それでね流騎くんの隣に私達と同い年ぐらいの女の子が引っ付いてたの」


「そうか……。萱場のやつにも彼女ができたってことか。一緒にいたとなると今晩のパーティーにも出てくるかもしれねぇな」


「えぇ、そ、そんな……」


「なんで木宮さんが項垂れるんだ……?」


「あ、え……な、なんでもないよ」


 綾夏の顔は真っ赤に染まって慌てて顔を背けてたが、刈谷は気付かずそれ以上追求はしなかった。


「そうか、ならいいんだけどな……。それでどうする、パーティーまで後三時間もある」


「そうだね……それなら私達もどっかいこうか?」


「ん? いや、俺は買い物をしに……」


「いいから、いこっ!」


 綾夏は刈谷の袖口を引っ張りながら流騎と桃が去っていった方向とは逆の道を、歩調を強めながら歩いていった。


「木宮さん、一体どこに行くんだ……?」


 刈谷は綾夏に袖を引っ張られ、視界が斜めになったまま聞いた。


「ゲーセン!」


「な、何をそんなに怒ってんだ?」


「怒ってないから!」


「う……わ、わかった」


『さわらぬ神にたたりなし……』


 刈谷はそう胸に言い聞かせゲーセンに引っ張られながら一言もしゃべらないことにした。


 実際綾夏の体からは燃え(たぎ)る怒りが痛いほど刈谷に伝わってきていた。





 そんなことが起こっているとはつゆ知らず流騎と桃は鳳欄高校の校門前に着いた。


「ふぅ、やっと着いたか。桃がそうやってくっつくから時間が掛かったな」


「いいじゃん、いいじゃん久しぶりなんだし。それじゃ早速準備に取り掛かろう!」


 桃は張り切りながら流騎の手を引っ張りスペースへと急いだ。しかしこの学校に初めて来た桃が何故スペースの居場所を知っているのか。それは桃の能力を持ってすれば容易いことであった。


「早く、早くあけてよ流騎」


「そう急かすなよ」


 流騎は買い物袋を一旦床に置きカードを取り出しロックを解除した。するとスペースに入る扉が横に開いた。


「うわーすごーい。感じてた(・・・・・)ものとは全然違うんだー。それに広いし」


「いいから、早く手伝ってくれ。時間があんまないからな」


「はいはい」


 桃と流騎は早速準備に取り掛かった。食料はすべて冷蔵庫と談話室のテーブルに置き、まずはスペースの装飾に取り掛かった。


 流騎はスペースの掃除に取り掛かり桃がデコレーション用の紙細工である花やバナーを作り始めた。


 その準備は一時間ほどで終わり、スペースの中はかなり華やかな姿に一変した。所々に赤、白、桃色のティッシュで作られた花やスペースの中央には白い布に大きな字でとにかく頑張れ! と書かれていた。


 それを見た流騎は、


「お前な……」


「えへへ、まあ細かいことは気にしない気にしない」


 流騎はその後何も言わず食べ物や冷やしておいた飲み物を談話室のテーブルを持ち出しその上に並べた。


 パーティーの準備は整った。後は役者がそろうのを待つだけであった。時刻は五時半。





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