第七十話 デート??
翌日の九月二十九日、流騎は朝早く目覚めた。時計を見ると朝の四時、まだ小鳥もまばらにだけ囁いていた……。
流騎はまた寝付こうと試みたが、結局眠れずに少し汗を流すことにした。寝起き姿のまま筋トレルームに入り、早速トレーニングに取り掛かった。室内では流騎の持ち上げた重りが無機質に音を奏でているだけであった。
流騎は汗を流しながらも、この後のことで頭がいっぱいであった。
『モモに準備のことを手伝ってもらったはいいが、あいつが来ると余計なことにならないからな。人格が変わらなきゃいいが……。まぁ、頼んでしまったのはしょうがないし実際モモには来てもらわないと困るからな。
よし、モモにパーティーのことは任せるとして問題は昨日もシャワーのときに考えてたがこのクーデターは単純すぎる。力押しだけでこの国の政権が乗っ取れるとでも思っているのか?
それに何故政権を欲するんだ? 既にこの国はMBSが圧力を掛けれるまでに成長したって言うのに……。
それに考えてみればここ最近自然現象によって生み出される怪奇現象が極端に減っている気がする……。それともただ単に任務が俺に下されないだけか? 悩んでても埒が明かないな……。ふぅ、結構いい汗掻いたな。もう一回シャワー浴びるか』
流騎は軽くタオルで汗を拭き取り、そのまま浴室に行った。そして十分もたたない内にシャワーを終え筋トレルームから出た。
時刻は既に六時半になっていた。
「げっ、もうこんなにたってたのか……。朝飯早く食わないとモモが来ちまうからな」
流騎は談話室の冷蔵庫から適当にバナナ、ヨーグルト、おにぎり、魚肉ソーセージとお茶を取り出しなんとも奇妙な朝食を済ませた。時刻を見ると七時半ちょっと前。流騎はトレーニングスーツを脱いで私服に着替えた。
穴の空いたジーンズにバックルの少し大きいベルトを斜めに掛け、黒のボタンシャツに白のパーカーを重ねて、グレイのニューエラキャップを被った。そしてソファに座り込んで携帯を眺めていた。
そして七時半ちょうどに流騎の携帯が鳴った。
「あ、もしもしシルキ? 今校門の前に来てるんだけど迎えに来てくれない? 特急で」
「ああ、わかった。今行く」
流騎はのそのそと立ち上がり小さな嘆息を吐きスペースから出て行った。昨日のモモとの会話を思い出しながら……。
「な、なんだよ条件って?」
「まず第一にねー、明日デートしよ」
「はっ!? いや、ちょっと待て何をいきなり訳の分からな」
「訳のわからなくないから、それに拒否するんだったら明日手伝いに行かないから。それに昔はよくしたじゃん」
流騎が言い終わらないうちにモモはすばやく切り返していた。
「ああ、でもだからってなんでデートなんだよ?」
「だってシルキとデートしたいんだもん」
流騎は返す言葉が見つからなかった、というよりもなかった。内心断りたかったがそれだとモモの助力が借りれず自分の面目が崩れることになる……。流騎は苦々しい選択を余儀なくされ、
「それでデートしたら本当にパーティー手伝ってくれるんだろうな?」
「モモに二言はありません」
「そうか、なら……」
「あ、ちょっと待って」
モモは流騎に制止をかけた。
「ん? なんだ?」
「えっとね、明日ちょっとストリートっぽい格好してきてくれない?」
「なんでだ?」
「理由は明日わかるよ」
「そうか……。なら、それだけか? 条件って」
「うん、まあ、後はシルキが男として明日は奢ってね。そうしたら張り切ってパーティー手伝って楽しんであげるから」
「そうか、わかったよ。じゃあ明日な、何時がいい?」
「七時半にそっちの高校に行くよ、それで二時ぐらいに戻って一緒に準備に取り掛かろう」
「ああ、場所はわかるか?」
「だって鳳欄高校っていったらここいらで超有名じゃん、モモぐらいそれくらい知ってるよ。じゃあね」
モモは電話を切った。
校門に近づくにつれ、一人の少女が立っていた。同年代の少女は桃色の髪を靡かせ、桃色のマフラーをまだ残暑の残る九月でも首に巻き、白のガーデガンに優しい鼠色のミニスカートを着ていた。足には軽めのブーツを履いていた。そして流騎同様帽子を目深に被っていた。
「待ったか?」
「うん、待った」
人懐っこそうな顔つきでモモはまじまじと流騎を見つめていた。
「容赦ないな……」
流騎は冗談めかした笑みを浮かべ、モモとの視線をずらした。そして校門をカードで開けた。
「それじゃ、いこ」
モモは流騎の手を握り、いそいそと歩調を強め始めた。
「ああ、でもどこに行くんだ?」
流騎はデートだとわかりつつもやはり緊張し、自分の鼓動をおさめるために必死であった。
モモは悪戯な笑みを浮かべながら
「内緒っ」
と言うだけであった。
はい、デートになるのかならないのか?それは、まあ、ですが読んでもらったらお分かりになると思いますので^^
それでは明日の展開をお楽しみに