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燃えた夏  作者: Karyu
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第六十八話 京の規律、ビワの定則

 

「ですがビワ様、いくらソウマが北海道リベリオンリーダークキョウの部下と交流があったとはいえここまでするのは……」


「その通りだイチノセ、だがこれが我らの掟という物だ。掟が無ければ必ず我々の秩序を乱すものが現れる。ソウマやお前のような輩がの」


「!?」


 イチノセは身の危険を察知し椅子から飛び乗り両手に短剣を構えようと腰の辺りに手を伸ばしたが、イチノセの体は宙に浮いたまま肉塊と化し床に不愉快な音と共に落下した。


「これでここにいる裏切り者はすべて除去した。だが当初の計画には狂いは無し、そこで一人補充することにはなったのでサキに入ってもらう。よいな?」


「はっ」


 ビワの席の後ろでたっていた女の忍、俗に言うくノ一は返事した。


「悪いがクレナイ、裏切り者の二人の死体からSと書かれたカードを取り出してはくれぬか?」


「御意」


 クレナイと呼ばれた二十台半ばの男は懐から蛇を二匹取り出しそれぞれをソウマとイチノセの死体に向かわせ、目的のものが見つかると口に持たせ、ビワの所まで這わせた。

「このカードが何か意味があるので?」


 クレナイが尋ねた。


「うむ、これは恐らく発信機のようなものじゃの、しかも所持者の心拍音が途絶えるとここの居場所を外部に知らせるタイプのものじゃ」


「そ、それでは!?」


「そう取り乱すではないホウギク。ここの電波妨害の術式は既に施しておる。我々も甘く見くびられたものよの。お主達も戦闘ではその勇姿は素晴らしいがそれ以外だと赤子同然なのが大半だからの」


「め、面目ございません」


「それではミカン、我らの計画の段取りをまとめてくれぬか。それにまだいっていなかったことがあるのでな……」


 ビワはその糸のように細い眼を薄らと開いた。


「それと、明日か今日にでもシコンが京都に来るらしいの。やれやれ、あやつの勘も鋭いものだ、しかし皆の衆、放っておいて構わん」


「御意」


 その場の全員一同の返答が合致しビワはすでに皺のよった口を湾曲に捻らせながら嗤った……。





北海道、札幌





 北海道リベリオン本部、といっても今や仮ルネサンス支部とはなってはいるがそのリーダールームにクキョウは多数の本棚に囲まれていた。そしてクキョウの座っているソファの周りにはありとあらゆる漫画が散乱していた。もはや人の歩けるスペースなど無いほどに幾重もの漫画が無造作に敷き詰められていた。


 しかしクキョウはその環境に苦にもせずにせっせと漫画を読んでいた。そして周りの本棚にも漫画、漫画、漫画が並べられていた。


 するとクキョウのいる部屋をノックでたたくものがいた。


「リーダー、よろしいでしょうか?」


「あぁ」


「失礼いたします」


 入ってきたのは筋骨逞しい白髪の三十台半ばの男であった。


「シラクサか……。なんのようだ?」


「リーダー……ここ何日もそうやってお過ごしですがよろしいのですか?」


「ん? あぁ……。俺はもともとこんなのあんまし興味ねぇしな」


「そうですか……。おかしなものですね、我々チルドレンは今や普通の一般人の恐れの対象とされている。そして多くのチルドレン達はその力に恐れ、隠し、自分自身の存在すらも隠そうとする。そういった同胞を我々リベリオンが救い出し、理想郷のエンパルレを作ろうとしているだけなのに。多くのチルドレンを自分達の手駒として使用しているMBSと協同作戦を実行するとは」


「ふん、俺はただシコンさんの下についているだけでいいのによ……。こんなふざけた作戦に付き合ってられっか。それにMBSの胡散くせぇ司令達は全員チルドレンじゃないと来た。笑えねぇ冗談だぜ」


「ですがこのままではリーダー、あなた御自身がシコン殿の足手纏いになるのでは?」


「そんなことは今の今まで起こらなかったし俺は毎日ちゃんとやるべきこたぁやってんだよ」

「そうですか、それならよろしいのですが」


「それで、そっちの方は順調なのかよ?」


「はい、順調ですこのままですと九月いっぱいで仕上がるとのことです」


「そうか、はは、そりゃあいい」


「ですが、あれを使うとなるとかなりの負担が掛かると聞き及んでおりますが?」


「ん? あぁ、そのために俺は毎日やるべきことはやってきたその日の為にな」


「作用ですか。それならばわたくしは何も申し上げることはありません。それでは失礼いたします」


「シラクサ、待て。それでお前の用件はなんだ?」


「さすが、リーダー。やはりあなた様の前で隠し事はできませんね。つい先程、ソウマとイチノセからの電波が途絶えました。いくらビワ殿でも力を施した電波の妨害はできなかったようですね。ですが場所までは特定はできませんでした」


「そうか……わかった。ビワのじいさんは黒か……。へへ、こりゃおもしれぇことになりそうだな……」


 クキョウは再び自分の手にある漫画に没頭しだした。


 シラクサはクキョウの部屋から出、その頑強そうな顔に残虐そうな笑みが力強く彫られていた。



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