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燃えた夏  作者: Karyu
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第六十六話 リベリオンの事情


 そして翌日から流騎達は新しい訓練を開始した。そしてそれをよそにある場所でも十月三日に備えて様々な準備が行われていた。





広島





 広島リベリオン本部、シコンとミキはソファに座りながら憩っていた。


「ねぇ、シコン様〜、私もう退屈で退屈で死にそう……」


「お前、クキョウとおんなじこと言うな……」


「え〜、でも事実だし……」


「それなら少しは技でも磨いたらどうだ?」


「してます〜、結構強くなったんだから〜。でもなんか綾夏達も強くなってるみたいだよ〜。しかもかなり」


「そうか、そうじゃなくちゃこっちもつまらないからな」


「シコン様もちゃんと特訓しないとね〜」


「いちいちうるさいなお前は……。でも俺はちゃんと日々の鍛錬は怠ってないぞ」


「そうなんだ〜……。それよりもシコン様二週間後には私も東京に行くの〜?」


「ああ、お前も一緒だ。シルキ達と一緒に来い」


「わかった〜。旅行だ旅行―」


 ミキは少しはしゃぎながら眼を輝かしていた。


「おい、あんま、はしゃぐなよ。旅行じゃないんだぞ」


「でも〜東京だよ〜?まあ、何百回もいったことはあるけど、同世代と行くんだから楽しいに決まってるじゃん」


「でもその同世代の連中とお前は闘わなきゃいけないんだぞ?」


「うん、わかってる。でもそんなの覚悟のうちだし〜シコン様だって闘うんでしょ?」


「ああ、まあな。でもいいのかそれで?へたすりゃお前のだちのアヤカっていう女が死ぬかもしれないんだぞ?」


「うん……。そうだね、でも私達親友だからきっとわかってくれるよ……」


 それでもミキは少し淋しそうで悲しいような陰りを顔に浮かばせていた。


「そうか……。お前がそれでいいんだったら、そうしろ」


 シコンはミキの頭を軽くなで自分の胸元に引き寄せた。そしてミキはシコンの胸元で少しの間泣き、すぐさま涙をふき取り目が軽く腫れていながらも無理に笑顔を作った。


「私は、大丈夫だから……。こうなるとは思っていなかったけどね……」


「そうか、そうだな。ミキ、俺は今から一旦京都に向かう。少しビワと話がしたいからな。だからお前はここのリベリオン本部を仕切っといてくれ。俺の代わりにな」


「うん、わかった。同胞達のことはどーんと大船に乗ったつもりでいて〜」


「ああ、よろしく頼む。それじゃな」


「うん、ばいばい〜」


 ミキは無邪気に手を大きく振り、それを見届けたシコンは暖かな笑みを浮かべリベリオン本部から出て行った。





場所は移り、京都





 九月の終わりといっても残暑の激しい日本では、京都は未だにその特有な地形により蒸し暑い日々が続いていた。そして日本古来の建造物と近代の建造物が並びあっている町並みで一人の老人を乗せた黒いBMWが軽佻(けいちょう)なエンジン音を奏でながら走っていた。


 エアコンの効いた涼しげな車内の後部座席で杖を突いた物静かそうな老人、ビワが鎮座していた。ビワはまるで江戸時代を思わせるような服装をしており、何枚もの羽織を纏っていた。


 運転席には一人の若い青年がハンドルを握り耳にイヤホンをあてながら激しいロックを聴いていた。ビワ自身は開いているのか閉じているのかわからない両目を瞑り安らかな寝息を立てていた。


 ビワを乗せたBMWは銀閣寺方面まで走り、その途中の如意ヶ岳の麓で車を止めた。


「爺さん、着いたよ」


 運転席に座っていた青年が呼びかけるが後部座席からの反応なし、


「仕方が無いな……」


 青年が直にビワを起こそうと後ろを振り向いたがそこには誰一人座っていなかった。


「はぁ……行くなら行くって言ってくれてもいいんだけどな……」


 青年は溜息をつきながらもビワが居ないことには驚きもせず、そのまま運転席でエンジンを切り、シートを後ろに倒し、音楽を再び聴き始めた。


 ビワが乗っていたBMWは木々の影に覆われ心地よい風が残暑の暑い中流れていた。





 ビワは車が如意ヶ岳の麓に到着したや否や車から音も無く降りた。そして杖を地面に垂直に降ろし、


「水仙水禍」


 たちまちビワの杖の底から透明な水色の波紋が広がり、その上にビワは両足をのせた。するとビワの体は宙に二十センチほど浮かび、そのまま山の斜面をなめるように上へ上へと目的地まで滑走した。


 十分ほど木々が生い茂る山の中を走った後、小さな洞穴が見えてきた。洞穴の周りは苔むしており、神秘的な雰囲気を漂わせていた。洞穴は人がすっぽり入れるほどの高さはあるのだが幅は狭く、力士などの人間は到底入れないほどの洞穴にビワはそのまま水仙水禍を展開したまま奥へ奥へと進んでいった。


 二百メートルほど暗闇を直線に進んだ後、急に行き止まりになっていた。しかし行き止まりではなく足元から垂直に穴が空いており、ビワのように水仙水禍を展開していなければそのままな楽の底へと落とし、命を落とすところであった。そしてビワはゆっくりと水仙水禍の上に立ったまま下へ下へと降りていった。二十メートルほど降りたところで水仙水禍を見通してぼんやりと濁った光が底から湧き上がっていた。



今回はリベリオン側に焦点を置いて書いてみました。

ミキの心情やビワのなぞめいた行動など、リベリオンファンの方なら必見!みたいな感じです^^


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