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燃えた夏  作者: Karyu
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第六十三話 流騎vs刈谷 覚醒

 

『く、くそ……。萱場の奴なんなんだ、さっきの技は? かなりダメージを喰らっちまった。くそ、スーツもそろそろ限界か、ならこの大技で決めてやる』


 刈谷は片膝で息が荒くも前方で自分のことを遠く見下ろしている流騎を見据えながら自分の次の行動について考えをまとめた。その頃流騎も、


『ふぅ、かなり体力を使ったな……。刈谷も段々強くなってきてるってことか、なら俺もあの技を使うときがきたってことだな。まだ成功したばっかだがこの場はなんとか切り抜けられるだろう』


 刈谷はのそのそと立ち上がり、不敵な笑みを流騎に投げつけ術を唱えた、


「これが俺の必殺技だ、覚悟しろ萱場! 我に加護を敵に怒りを、ヤマタノオロチ!」


 刈谷が術を唱えた直後、刈谷の背後で一瞬空間が歪んだ。そして次の瞬間、刈谷の背後から八本の長い首が生え、その先端には大蛇を思わせる顔が生えていた。八本の首に八つの頭が生え、日本神話上の伝説の生き物である()(また)大蛇(のおろち)を思わせる外見をしていた。その目は黒く瞳がないように見え、頑丈そうで硬く、全身は灰白色の鱗で覆われていた。その八岐大蛇であろう生物は自分の意思を持っているかのように八本それぞれの首が違った動作を行っていた。刈谷の背から生えている八本の首は現時点では一本二メートルぐらいではあるが伸びることが可能であることは一目見るだけでその雰囲気がその石でできた生物からは容易に察することが出来た。


 刈谷が召喚させた生物は刈谷を取り囲んで守るかのように八本それぞれが刈谷の周囲を固め、敵として認識している流騎を瞳無しの計十六の(まなこ)が睨んでいた。


 流騎は一種の悪寒と殺気を感じ取ったのか少し身を引いたが、気を引き締め自分もその技に対抗するべく術を唱えた。


「我が祈りに応えたまえ嵐龍、水龍!」


 流騎が唱えた直後、刈谷同様に時限という名の空間が流騎の周りで歪みその中から二匹の龍が現れた。一方は全身が鮮やかな緑青の鱗で覆われ、もう一方は人を魅了する様な蒼い鱗で覆われていた。二匹の龍は全長にしてそれぞれ十メートル弱、二匹の龍は刈谷を威嚇しながら流騎の周りでとぐろを巻いていた。


 二匹の龍と一匹のヤマタノオロチが互いを睨みあい、殺意に満ちた空間がその場に凍りついていた。心臓の弱いものであればこの対峙を一瞥するだけで天空に昇れるであろう程にその場の空気は憎悪と殺気の気で歪んでいた。


「龍と大蛇どっちが強ぇか今ここで証明してやる。オロチ、石砲!」


 刈谷の背後から出現していたヤマタノオロチの八頭の内の二頭が重々しい顎を開き流騎目掛けて岩の砲丸が恐ろしい速さで放たれた。


 流騎は石砲の軌道をよみきり、体を半回転させながら避け、石砲の二つは流騎を外し流騎を守り固めていた嵐龍と水龍の胴部に命中したが石砲はそのまま二匹の龍をも貫通した。刈谷の流騎が避けるであろうことを予測した上での二匹の龍に当てるはずだった攻撃が(ことごと)く無と化した。


「なっ!?」


「いい攻撃だな、刈谷。でもな、嵐龍と水龍の原料の元は酸素や水素だ。物体を貫通するのは当たり前だろ? 今度はこっちから行くぜ嵐龍、かまいたち! 水龍、波濤水紋!」


 流騎の掛け声に呼応するように二匹の龍はそれぞれの眼光をよりいっそう強め嵐龍はかまいたちを、水龍は波濤水紋を発動させた。かまいたちは風の刃の如く刈谷に迫り、波濤水紋は水で出来たリングの束が超音波のように刈谷に放たれた。二つの攻撃とも威力は絶大。


「ぐっ! オロチ!」


 刈谷の大声でヤマタノオロチは刈谷を守るべく、刈谷を包み込んだ。そして術が刈谷の石の怪物に衝突。ガラガラと質量のある石が砕け落ちる音と共に刈谷のヤマタノオロチの内の四頭のオロチが刈谷を守り砕け散った。残る頭部は四つのオロチが刈谷の背後から伸びていた。刈谷の前方では流騎が悠然とその場に二匹の龍を従え悠然と立っていた。


 実力の差が体を通して伝わってきた刈谷は敗北を予知するかのように嫌な汗が額に流れていた。しかしそれを無視するかのように刈谷の四頭のオロチの瞳無き眼に赤き眼光が現れた。


 それを遠目で眺めていた流騎は異変に気付いたのか刈谷のオロチに神経を集中させた。


『なんだ? いきなり刈谷のオロチのパワーが上がったような気がする……。気のせいか? それに刈谷本人が気付いていないのか? さっきから下を向いたままだ』


 刈谷が自分の負けを認めようとしたとき、刈谷の背後から急に力が漲ってきた。それと共に刈谷の脳に直接訴えかけてくる声が聞こえた。


『刈谷秀明、我が主よ……』


『だ、だれだ!?』


 刈谷は自分の脳の中で聞き返す。


『我はそなたを加護し、敵にそなたの怒りをぶつけるもの』


『まさか、オロチか!?』


『ああ、その通りだ。お主はここで諦めるのか? 我は確かに己の半数の頭部をなくした。しかし、我は敵に故意的に頭部を破壊されたとき以前に比べて力を増す。そのとき我の眼光は赤き輝く』


『だが俺が使える技は石砲とお前を盾と突進として扱うぐらいだ……。その両方が効かない今、萱場の龍に勝つなんてのは無理だ』


『何を弱気になっている……お主の心が破られたら我も終わる。それに我にはあの二匹の龍を倒せる技が一つだけ残っている』


『本当か……?』


『ああ、だがその為には我の頭部を後残り二つにする必要がある。出来るか?』


『ああ、やってみるさ。いや、やってやるっ!』


『それでは我の頭部が残り二つとなったときこの技を使え………』


『本当にそんな技が使えるのか!?』


『我を信じるのであればな』


『わかったぜオロチ』


 刈谷は前方で身構えていた流騎を睨みつけた、その両瞳には覚悟という名の闘志が漲っていた。


刈谷が覚醒??でしょうか、そうなるでしょうね。

次話、刈谷の新技が……!?

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