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燃えた夏  作者: Karyu
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第六十話 新技考案(1)

 

 静香、刈谷、そして綾夏(未だに刈谷に担がれたままの状態)は鳳欄高校の核シェルターと思しき建物の付近までやってきた。そして静香が刈谷の肩に乗っかっている綾夏を軽く手のひらで綾夏の頬をたたいた。


「綾夏さん、もう朝ですよ。起きてください」


「うぅん……。ふぅあぁぁぁ〜。うーん、良く寝たーって、えっ!?」


 綾夏は体全体を使って刈谷の肩の上で背伸びをした後で自分の状態を理解できなかったのか少し混乱していた。


「え? 何で私刈谷くんに担がれてるの? それになんで外?」


「ああ、すまない木宮さん……。これはその、えっとあれだ……な? 倉木さん?」


 刈谷は綾夏の返答に良い答えが見つからないまま静香に託した。


「ええ、ではまず刈谷さん、綾夏さんを下ろしてください。それで綾夏さん、ここにスーツがありますからこれに着替えてきてください。もちろん見たりしませんから」


「あ、う、うん。わかった」


 刈谷は毛布ぐるみの綾夏を下ろし、すぐに背を向けた。その頬は少し赤みが掛かっていて頭は気を紛らわすためか空の方を向いていた。


 綾夏は静香からMBS用のスーツを受け取りその場でせっせと着替えを済ました。もとより寝格好がショートパンツとシャツだけだったのでスーツはただ着るだけでよかったのであったが刈谷は依然として綾夏に背を向けたまま空を仰いでいた。


「それでは刈谷さんと綾夏さん。これよりあなた達二人には技の種類を、バリエーションを増やしてもらいます。その為今日は心置きなく訓練できるようこの校庭すべてが使用できます」


「でも、私達が力をこんなところで使っちゃうと他の人に見られたりするんじゃない?」


「はい、その為今から私が術をかけます……。偽りの闇よ、この光と同化し我を隠したまえ、ブラインド」


 静香の術が唱えられると刈谷の見上げていた空が一瞬暗くなり、またいつもどおりの青空に戻った。そこでやっと正気になった刈谷は静香のほうに向き直った。


「倉木さん、あれは一体?」


「はい、これでこの高校外部から内部の状況はわからなくなりました。つまり、この学校の外からは誰もいないように見えているのです、所謂(いわゆる)3Dの張りぼてでこの高校周辺を覆ったと考えてください。この技は通常私個人を隠すためだけに考えたのですがあのケース訓練とCNCのおかげでここまで広範囲に術を使えるようになりました。ですからお二人とも以前より遥かに強くなっています」


「そ、そうなのか。よしっ! 絶対強烈なのを作り出して萱場に一泡吹かしてやる!」


「私もがんばるよ」


 刈谷と綾夏はやる気を漲らせ早速自分達のイメージどおりの技を頭の中で考えていた。


 刈谷の場合、


『うーん、新技って言われてもな。ほんとに前より俺は強くなってるのか?いや、倉木さんが言うんだったら本当なんだろう……。一応新技のイメージはできてるんだが、結構高度だからな……。うまく自然が同調してくれるのか?』


 綾夏の場合、


『うーん……私もう結構技はあると思うんだけどな……、やっぱり多い方がいいだろうし。それにまだ必殺技って呼べる大技がないからな……。よーし、それじゃファイアーアローをぐんと強力にしてみよっと。えーっと、この技は……』


 そうこう考えている綾夏と刈谷を見守っていた静香も、


『私もこの機会にあの技が完成させることができるかもしれませんね。それはそうとリーダーは遅いですね……。やはり決戦地が東京だとダイテツ司令官も大変ですね』


 三人が自分たち独自の物思いに耽っていると、鳳欄高校の玄関の方から流騎は出てきた。流騎自身も物思いに耽っているのか歩みは静香たちのほうに向いてはいるが遠くを見ているような目であった。


 静香は流騎の方に駆け寄って流騎と相談し始めた。


「リーダー、今二人とも自分独自の必殺技を考え出していますのでそれができた時点で実戦形式にしたいのですが」


「ああ、それでいいだろう。それじゃ、俺も張り切って新技を作ってみるか。それじゃ三十分おきにここに集合ってことだな。この校庭どこを使っても良いんだったよな?」


「ええ、それに破壊しても修復はできますから。もちろんリーダーの技でですけど」


「ああ、そうな。でも刈谷のほうが適任かもな。そろそろ力のコントロールもそれぐらいのこともできるだろうし。それに静香、リーダーってのはちょっとな……痒くある」


「それでしたら、隊長にします。これは譲れません」


「そ、そうか……。まあ、それの方が幾分ましかな……」


 と流騎は静香の提案に妥協したが、


『こんなに強気な静香は今まで見たことないな。名前で呼んでくれてもいいんだが……』


 などと思いつつ流騎は綾夏と刈谷の二人にその旨を伝えた、


「いいか、二人とも。これから俺たち四人はこの校庭に散らばって自分達の新技を考案、試行して完成させる。三十分おきにここに戻ってきて後どれくらいで出来るか伝えてからまた自分達の場所に戻っていってくれ。その後はその新技を実戦で活用していく」


「ああ、わかった。なら俺はトラックを使うぜ、あのサンドピッチは結構砂が豊富だからな」


「それじゃ、私は焼却炉のところに行ってこようかな……」


「ああ、わかった。もし何かあったら俺はプールの方にいる。静香はどこに行く?」


「私は校舎内にいます。限られたスペース内での訓練もしておきたいので」


「ああ、わかった。それじゃ三十分後に」


 流騎がそう告げると他の三人はこくりと頷きそのまま各自の場所へと歩いていった。時刻は九時、朝でも夏なので暖かい陽射しが校庭の地面を別け隔てなく降り注いでいた。



次話よりキャラそれぞれの視点に移ります。つまりスポットをあてるということですね。

最近第三者視点が多かったので気分転換的にも今後の方針になっちゃうかもしれないという大事な場面です。

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