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燃えた夏  作者: Karyu
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第五話 モンスター


夕方の6時、町は朝並みのにぎやかさは失いつつあったが、まだ町は人で賑わっていた。夕日が赤く燃え上がるのを背に俺は綾夏と一緒に繁華街を歩いていた。


「ねえ、流騎くん、一体どこまで行くの?」


「なーに、もうすぐで着くさ」


そして、二人の間では沈黙が流騎が歩き終わるまで続いた。


「え、ここって……」


「いいから、早く来い」


そして、俺は綾夏を立ち入り禁止と書かれた廃屋ビルの中へと導いた。


「今日、綾夏に用があったのは、おれのパートナーになってほしいからだ」


「え、パートナーって?それは、友達ってこと?」


「いや、そうじゃない。俺の所属している組織のだ」


「組織?」


綾夏は余計にわけのわからないような顔をして俺を見つめている。


「ああ、おれはMBSという組織に入ってる。それで、よりよく任務を遂行するためにも綾夏の力が必要なんだ。組織のため、いや俺のためにな」


「え、ちょっと待ってよ流騎くん。もしかして、あの真っ黒いスーツを着てる?冗談だよね?」


「冗談じゃなんかないさ。現に、綾夏は、他人にはない力を持ってるじゃないか。それも、火を操れる力を」


「え?何でそのことを……。このことは誰にも話してないのに」


「まあ、真実というものはいつまでも隠し通せはできないってことさ。それと、俺の能力は水をあやつれることだ」


そして、俺は綾夏に、オリジナルやチルドレン、MBSの発端、ほかの組織、そして今世界で起こっている怪奇現象の数々を話した。そして、MBSの目的も。


そう、MBSは独立した機関となったものの公的にはその存在は知られている。


「けど、流騎くん、こんなこと急に言われたって、私どうにもできないよ。だって、MBSだってどういったものかわかんないし」


「まあ、そうだよな。俺も最初は訳がわからなかった。だけどな、自分の秘密はいつまでも隠し通すことはできないんだよ。俺は、この組織に入って俺と同類の人間がこんなにもいることに感動した。そして、自分たちの力でほかの人もすくえることができる……。俺は今それに生きがいを感じている。だから、綾夏、俺と一緒に同じ道を進んでくれ」


しばらく、沈黙という時間が過ぎ、綾夏が頬を染めな決意を決しながら口を開きかけた瞬間、


ドーーーン!!


という音と共に、ビルの壁が崩れ落ちてきた。


「きゃあっ!」


「あぶない!」


俺はとっさに綾夏を庇った。


そして俺が顔を見上げたとき、そこにいたのは黒い仮面をかけたライオンのような生き物であった。


くそっ!何だってこんなときに。


「な、なに?なんなのこれ?」


綾夏からは明らかに恐怖の声が聞こえてきた。


「お前か、水のシルキは。お前によって葬られた我らの同胞の命、今償ってもらう」


と、その邪悪な生き物(MBSではモンスターと称される、一般に知られていない怪獣や怪物のことを言う)が、いった。


「何を言ってやがる。お前らが無差別に一般人を食い荒らすから、俺が成敗してやったまでのこと。お前に恨まれる筋合いはない。それともなにか?おれに、喧嘩をうってきたってんなら、いつだって相手になってやるよ」


そして、そのモンスターは鋭い咆哮をあげ、俺に突進してきた。それも神速ともいえる速さで。


なるほど、こいつの力は風か。ならば、


「水神海女の神、水速転換」


術を唱えたあと、俺はモンスターめがけて走った。それも、そのモンスターを上回る速度でだ。


そして、勝負は一瞬だった。風を操るモンスターはうめき声も上げる暇もなく、地面に真っ二つに落ちた。


それを見ていた綾夏は愕然とその戦いを見ていた。まるで、過去の出来事を思い出しているかのように。


「綾夏、大丈夫か?」


「え、う、うん。たぶん、大丈夫。けど、これって一体……」


「これが、今世界で起こっている怪奇現象の一つだ。これらの怪物を抹消するのもMBSの仕事だ。綾夏、俺たちはそんなに長くは待てない。お前の答えを今聞かせてもらおう。俺と一緒に来てくれるか?」


俺は、右手を綾夏の前に出した。


「私は……役に立たないかもしれないし、流騎くんの足手まといになっちゃうかもしれないけど、それでもいい?」


綾夏は自分の右手を出した。


「ああ、その意思だけで充分だ」


俺たちは笑みを浮かべながら、互いの手を握り合った。


そして、俺は、始めて自分のパートナーを手に入れた。



ここでモンスターの登場です。怖いですが、世界設定はこうなっていますのでご理解ください。

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