第五十六話 ケース訓練
流騎達四人はスペースに戻り、全員が倒れこむようにソファに座った。
「今日はご苦労だったな。でもゴウキみたいな強敵に俺たちはこれから挑まなければならない。いや、ゴウキよりもっと強いやつらがまだまだたくさんいる。だから俺たちはこの限られた時間内で強くならなければならない。明日から後二十四日しかない」
「でもよぉ、どうするんだ? そんな短時間で強くなれるもんなのか?」
「なれるんじゃなくて、なるんだよ」
「ですが、現状は厳しいです。ある得策でもない限りこれ以上のレベルアップは……」
「ああ、そうだな静香。現実的にみればそうなる。だが俺は一応考えておいた、それは……」
「「それは?」」
刈谷他三人は同時に聞き返した、
「それは、これだ」
流騎は自分のポケットから円柱型の空のケースを取り出した。
「……?なんだそりゃ?何も入ってないじゃねぇか」
「ああ、でも静香ならこれの意味がわかると思うぞ」
「え、ほんと?静香ちゃん」
「え、ええ。ですがこれを行うには……」
「ああ、確かに命の危険性が伴うだろう。だがやらなければならない」
「そうですね……。それしか方法はないかもしれませんしね」
「おい、なんなんだよ。俺たちにもわかるように説明しろ」
「そうだよ、二人だけでどんどん話しすすめないでよ」
綾夏と刈谷は抗議した。
「ああ、悪かったな。このケースは昔MBSで強化特訓ように開発されたんだがそのあまりもの隊員たちに掛かる負担が大きすぎるため廃止になった代物だ。実際にかなりのチルドレンが死んだ。
使い方は極簡単。自分達の能力をある体の一部に集中させるんだ、その集中した部分にこのケースを当てるか握るかしてるとケースの中のパラメーターが段々と上がっていく。そしてこのケース内のパラメーターが満タン、100になって中が赤くなったら訓練終了だ」
「なんだ、そんなの簡単じゃねぇか」
刈谷は自信に満ちた顔でその訓練内容を諂ったが静香は、
「いえ、そうでもありません。私も昔やったことがありますが成功したためしがありませんから。それにその集中させる部分は毎日変わっていきます。ですから、かなりの精神面での忍耐力が重視される訓練です」
「ねえ、そんなの本当に私たちにできるの?」
「ええ、今の段階ではこれより他になさそうですから」
「ああ。とにかくやってみてくれ。説明より実践だ」
流騎は三本新たにケースを取り出し綾夏たち三人に手渡した。
「いいか?まずは右手で握ってやる。自分の能力を右手だけに集中させるんだ」
「ああ……」
「うん……」
「はい……」
そうして四人は目を瞑り右手に円柱のケースを握りこみソファに座り込んだまま一時間がたった。四人は全員額に汗を浮かばせ、苦悶の表情を浮かばせながらケースを握りこんでいた。ケースの大きさはリレーのバトンほどの大きさであった。しかし一時間たってもパラメーターはまったく上がる傾向を見せなかった。
「ぐあぁ、もうだめだ……。俺にはもう無理だ……。はぁ、はぁ……」
刈谷はケースをソファに投げ出しスーツの上着を脱ぎ始めた。
「わ、わたしも……。もう、へとへと……」
綾夏もケースをソファに置きスーツのネクタイを緩めた。
「わたくしも……」
さらには静香も諦め、ケースを自分の横に置いた。
「ふぅ……。俺ももう続かないな……」
流騎もケースを横に置き、ソファの中にぐったり沈み込んだ。
「はぁ、はぁ。なんなんだよこれ? すっげー体力使うじゃねぇか……」
「ああ……。このケース訓練を何時間も続けさせられて死んだ隊員がでて廃止になったぐらいだからな。ふぅ、久しぶりにやったけどこりゃきついな……」
四人のパレメーターを見てみると刈谷のは0.2、綾夏は0.3、静香のは0.5、流騎のは0.8を示していた。
「この訓練は自分の忍耐力、精神力、それと集中力を高めるからな。効果は絶大だがリスクは限りなくでかい。でも今はこれしかないからな。一時間ずつやって三十分の休憩を繰り返す。今日はもう遅いから明日からだな」
「でもよ、後合宿は三日しかねぇぜ。間に合うのかよ?」
「ああ。だから合宿は続ける。もう許可は取ってある」
「え? いつの間に……」
「膳は急げって言うからな、これからもがんばっていくぞ」
「リーダー、それ使い方間違ってます」
静香は的確に流騎に指摘した。
「う……。と、とにかく練習あるのみだ。がんばるぞ」
流騎は右の拳を宙に翳した。
「ああ」
「うん」
「そうですね」
ケース訓練、それは簡単に見えて地獄の味を体感する過酷なもの。と格好良く言ってみたつもりですがそうもいきませんかね?後書きが味気ないかもしれないのはただいま全話リニューアル中で話数が合わないため後書きもその話にあっていないため後書きも全部書き換えているからです。お騒がせしてすみません。