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燃えた夏  作者: Karyu
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第五十四話 対ゴウキ(2)


 スペースから出た流騎は学校を出てドッジボールの決勝が行われたグラウンドまで来ていた。夏から秋に近づくにつれ段々と日も早くなり真っ赤な夕日が辺りいったいを包み込んでいた。


 そんな中、夕日を背に人が立っていた。肩までかかる銀色の髪を夕日が反射しながら(なび)いて、その人物は流騎だとわかるや否や流騎の元まで歩み寄ってきた。そして、


「はは。やあ、久しぶりだねシルキ君」


 愛嬌のある笑みを浮かべながらゴウキは言った。しかしその両目の奥にははっきりと殺意に満ちた歪んだ(よど)みがあった。


「ああ。久しぶりだなゴウキ。お前から受けた古傷が痛むぜ」


「へぇ、そうなんだ。それは良かったね。それじゃ、今日はもう二度と立ち上がれないようにしてあげるよ」


「それは、たのしみだな。お前もシコンから見限られたのか?」


「うん、まあね。あんなに仕えたのにさ……。でも僕はシコンさんを恨んだりはしないよ。だからせめてもの恩返しに君を殺しておくことにしたんだ。そしたらシコンさんだって僕の利用価値をまた見直してくれるだろうからね」


「へぇ、お前もかわいそうなやつだよな」


「うるさい!おまえなんて、おまえなんて……! これでもくらえっ! 雷のチェーン協奏曲第二番、フラッシュ・ウィップ!!」


 ゴウキが腰につけていたチェーンの束を自分の手足のように扱い流騎めがけて錘のついているほうを投げつけた。その鎖のチェーンは電気を纏いながら流騎の近くの足場を錘が跳ねながら流騎の足を捉えようとした。


「水神海女の神、水速転換!」


 流騎は目にも止まらない速さでその攻撃を避け、ゴウキの目の前に躍り出た。そして片手に作り出したヒエロ・ランスを振りかざそうとしたらゴウキは笑った。


「!?」


 すると流騎の後方に飛んでいったはずの錘が横から迫ってきた。


パッキーン……


「な!?」


 辛くもヒエロ・ランスで防いだものの流騎は横に弾き飛ばされ、ゴウキの猛攻は続く。


「フェローチェ・コン・フォート!野生的に激しく、熱烈に!」


 ゴウキのチェーンは鋼が鈍く、しかし荒々しく擦りあったような音をあげながら流騎の周辺の足場を跳ね回るように迫り流騎の足首に巻きついた。


「くそ!」


 ゴウキは強引にチェーンを引き戻し、それにつれて流騎も真っ逆さまになりながら空中に放られ止まった。


「はは。いい気味だよシルキ君。やっぱり君は今も昔もまったく変わってないね。僕もそれなりには昔より強くはなってるんだよ? それにこのチェーンは僕の体の一部ともいえるんだから、そんな槍で適うわけないだろ?」


「く……」


 流騎は空中でぶら下げられ頭に血が回ってきたがなんとか時間を稼ごうとした。


「それにしても久しぶりだなゴウキ、お前あの後トウキがどうなったか知ってるか?」


「兄さんのことかい?君が僕から珠を奪い去った後兄さんは憎たらしいほどやりとげったっていう様ないい笑みを浮かべてたよ。きっと君の安否のことを気にしていたんだろうね、ほんとにむかついくよ。


 それで兄さんは逃げたよ。兄さんは昔から戦闘力は無いのに逃げ隠れるのは得意だからね。今はどうやら行方不明らしいけどね、あの後以降」


「ああ、てっきりおまえなら知ってるんじゃないかって思ったけど的外れだったみたいだな」


「うん、そうだね。なんか話が長くなっちゃったねそろそろ終わりにしよっか」 


 ゴウキは流騎に向かって笑った。するとゴウキのチェーンが青白く光った。


「ぐぅああああ……!!」


「はは、どうだい? 百万ボルトの電気のお味は? もっともそのスーツを着てたら即死ってわけにもいかなさそうだね」


 流騎の意識が朦朧とし始めた頃、


「惑わしのフローラ」


 ゴウキの周りに純白と暗黒の花びらを思わせる花弁が舞い、ゴウキの視界を奪った。


「!?」


 ゴウキが一瞬ひるんだ瞬間を狙って。


「行け!大地の鈎爪!」


「流騎くん! えいっ、フレイムレイピア」


 刈谷が叫びグラウンドの土から作られた爪を思わせるような塊がゴウキと流騎の間にあったチェーンを切断し、綾夏はフレイムレイピアで流騎の足首に巻きついていたチェーンを焼き斬った。


「みっともねぇな萱場。勢い良いのは意気込みだけかよ」


 刈谷は皮肉っぽく言い放ったが顔は真剣そのもので静香のつくりだした白と黒のフローラに多い尽くされている敵を見据えていた。


「だ、大丈夫? 流騎くん?」


「ああ、まだ戦える。やつは結構手ごわいぞ」


「言われなくても本能が教えてくれるぜ。この緊張感たまらねぇ!」


 刈谷は大地に両拳を地面に埋めて引き抜くと共に、


「土塊!」


 刈谷の両手には直径一メートルほどの土の球体がすっぽり覆っていた。そうすると前方のゴウキに異変がしょうじた。静香の惑わしのフローラが散り散りに引き裂かれ、白と黒の粉がゴウキの周りを舞った。その顔には優しそうで邪悪な笑みを浮かべていた。



ゴウキ、やはり強いですね。ただそれだけを言うがために後書きに書くことがない私も私ですが……。

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