第五十二話 闇での陰謀
ここは地下数十メートルにあるMBS専用の極秘基地。政府と共同で上層部の人間をかくまうのに用意された正に生き残るための最終手段として作られた。そして今ここにリベリオンのリーダー三人が集まり簡易会議室といっても人五十人は入ることの出来る広さのところで座っていた。そのリーダー三人は直接その場にいず会議室のテーブルに配置されているモニター画面に顔を映していた。
そしてその会議室には男が一人、議長用かと思われる椅子に座り、その後ろに屈強そうな男が立っていた。二人とも部屋の明かりをつけず、シルエットは浮かぶもののはっきりとした輪郭までは分からずそこに存在するということだけがわかる。そして、そのモニターのひとつに映し出されていたリベリオンのリーダーの一人であるクキョウがしゃべりだした。
「あぁ、かったりー。もう早いとこけりつけようぜ。まだ後何日だ?ひぃ、ふぅ、みぃ……ってまだ一ヶ月ぐらいあとじゃねぇか。もう退屈で退屈で退屈死しそうだぜ……」
「辛抱せいクキョウ。我々にも準備というものがある。たとえ我々三人の実力でこの日本を征服できてもだ」
「でもよ、ビワのじいさん。じいさんのあんたなら待ってることも苦になんねぇとおもうけどよ、俺なんか何をしてもくたびれるだけなんだよ。準備、準備といってもよ、俺には何の仕事もこねぇんだぜ? おかげにこっちは北海道だ、仕事ぐらい入ってもいいんじゃねぇのか?」
「そこらへんにしときなクキョウ。今日俺たちが集まったのはおまえの愚痴を聞くためじゃない」
「ああ。そうだったな……すまん、シコン」
すると会議室の影の中に座っている人物が喋りだした。
「皆、ようやく集まったか……。クキョウの言ったとおりまだ正確に25日ほど時間が要る。今日集まってもらったのは他でもない。おまえたちにまだ言ってはいないことが多少ある。それを話すためだ」
「な、なんだよそれ! まだ俺たちに隠し事かよ……どこまで信用されてねぇんだ?」
クキョウが不平をこぼした。スクリーン越しでも見える顔には幼さと荒々しさが残り、本当に退屈そうでいらいらしているそうである。
「まあそう怒るな。私にも準備があるのでな。それで秘密といっても現在の状況の細かい詳細のことと今回の作戦についてだ。作戦は多少の変更ありだ。
おまえたち三人が自分達の県の機関を乗っ取った後、すぐさま東京に来い。そして残りのMBS本部のある他七県も我々が機関を制圧した後ダイテツのいる東京に集まる。東京には隊員総動員で事を運ぶ。
それと今のチルドレンの数は百十一人だ。はっきり言って足りない……。そしてその中の数十人は裏切ると思われる。そいつらは政府側のチルドレンだ。そしてこの作戦の後、チルドレンは激減するだろう。そこでおまえたち三人には退屈しのぎにもなるだろう、できるだけ新たなチルドレンを集めろ。あるいは今の現段階で有能な部下を鍛え上げろ」
「へっ、最初っからそう言ってくれればいいんだよ。それじゃ俺は早速行くぜ、あばよ」
三つのうちのスクリーンのひとつからクキョウの顔が消えた。
「それでは私も」
とビワも続こうとしたが
「いや、おまえたち二人にはまだ話がある。それは作戦終了後の話だ。作戦終了を持って日本政治は今きわどい状態を保っている民主主義ではなくなる。それにもうすでに十二年前に国が起こしたゲリラ戦争とMBSの四年前のリベリオン襲撃で今の政府は未だ回復段階だ。それを壊すのはたやすい。
そして作戦がうまくいった場合、他国からの侵略があるだろう。そのときにはシコンには中国、ビワにはロシアを攻めてもらう。私はここで指揮を執ることになるだろうがな」
「わかりました。それがあなたの御意志であるならば」
「ま、仕方がないな。ここを離れるのは気が引けるが中国には強いやつがうじゃうじゃいそうだからな。右肩の傷跡がうずくぜ。流騎は俺にやらせてもらうぜ、この作戦ではな」
「ああ。まあ、いいだろう。だがやつも強くなっていると聞くぞ?」
「ふん、あんなひよっこに俺が二度も負けるなんて事はないな」
「そうか、それならいい。それでは二人とも来週にもう一度同じように会議を行う」
「わかりました。それでは失礼いたします」
「それじゃ失礼するぜカゲフミさん」
ビワとシコンも同時にスクリーンから姿が消えた。すると、影の中に座っていた男の背後で立っていた180cm以上の男が
「いいのか、あんな小童どもにすべてを託して?」
「ああ。やつらならこの日本を変えてくれるだろうからな。今の首相なら簡単に捻り潰せる。あいつは昔から臆病だったからな、私の助言なしにはここまでやってこれなかっただろうしな」
「それはそうだが……。まあそれが親父さんの言うことならそうなるんだろうな。それにしても、あんなガキ共がどこまでやれるか楽しみだな」
「ああ、そうだな。私たちもそろそろ引退する日が近いって事だな」
「ふん、あの三人には良く働いてもらわないと困るしな」
「ああ、そうだな。だがビワはどうも怪しいな」
「ああ、俺もそう思う。やつはなにか隠しているというか裏がありそうだな」
「いざとなったら、頼むぞ」
「ああ、任せなカゲフミの親父」
そして二人の男は周りの影に同化するかのように消え去った。
はい、〜陰謀シリーズ(勝手に命名です^^)
陰謀とかいうのは普段見えないからこそいじりがいというのがあっていいですね。ストーリーもまとまっていく感じがするのが。