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燃えた夏  作者: Karyu
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第五十話 球技大会(2)


 そうして朝の七時ごろに流騎、綾夏、静香、刈谷の四人はのそのそと起きはじめた。今日は鳳欄高校の毎年恒例の球技大会の日であったがそれをまったく忘れたかのように四人はのそのそと亀のようにクラスに行く準備をし始めた。四人とも昨日のシューティングの特訓で教える側も教えられていた側も疲労困憊もしていた。


「ねぇ、もう今日は学校行きたくない……」


「綾夏さん、そういってもあなたも私も学級委員ですし、それに後十分ぐらいでクラスで準備をしておかないと今日の球技大会の打ち合わせとか……」


「うぅー、何で今日に限って……。私もう何も持てないよ。昨日のあれで手ががたがた……」


「私もちょっとめまいが……」


「あ、ごめん、私が下手なばっかりに迷惑掛けちゃって……」


「あ、いえ、そういうわけではありませんから。それよりも早く準備をしないと」


「そうだった……。それじゃ流騎くん、刈谷くん。いってきます」


「あ、ああ……。いってらっしゃ……」


 刈谷が綾夏たちを見送りに出ようとしたがまだ眠気が残っていたのかまたソファの上で熟睡しだした。その横では流騎ががーがーと鼾をかきながらだらしなく口をあけて眠っていた。それを見た静香が、


「これはいいかもしれませんね……」


「え、なにが?って、もういかなきゃ」


「ちょっと、待っててください」


 静香はそういい、着替えた制服のポケットから携帯を取り出し、開き、カメラモードに切り替え流騎のところまで歩み寄り、


パシャ


という音と共に携帯の画面を再確認し、少し残酷な笑みを浮かべ携帯を閉じた。


「それじゃ、行きましょうか」


「う、うん……。でもいいのかな?」


 そうして綾夏と静香はスペースから出て教室に向かった。




そして、二十分後……。




「おい!起きろ萱場!遅刻だ遅刻!」


「んああぁ?なんだ、もうそんな時間か……」


「なに落ち着き払ってんだよ!早くいかねぇとマジやべぇぞ」


「お前がそんなこと気にするなんて、性格変わったか?」


「おい、お前もしかしてここの規則全部読まなかったのか?」


「読んだぞ。でも最後らへんの……鳳欄恒例事業特別規則は読まなかった」


「なに?一番大事なところを!ええい、とにかくここでくっちゃべってる時間はねぇ。とっとと行くぞ!」


「なっ!?おい、ちょっと待てよ」


 刈谷は流騎の制止の声などまったく耳に入れず流騎の袖口を引っ張りながら猛ダッシュで教室まで向かった。そして、二人が教室に駆け込み、刈谷が流騎を席に放り込み、自分が席に手を掛け座った直後にベルが鳴った。すると、ベルが鳴るか鳴かないかの微妙なタイミングに担任の教師が扉を開け、


「いいかお前たち。今日は毎年恒例の球技大会だ。遅刻者、欠席者はいないみたいだな。先生としてはちょっと残念だな。去年みたいに遅刻した生徒に私の部屋の掃除を頼もうかと思っていたんだが……。今年は誰か雇わなきゃいけないみたいだな。それじゃ、皆今日を楽しむように。そして勝つんだぞ。じゃ、後は木宮、よろしく」


 と言い残し欠伸をしながら教室から出て行った。


『一体どんだけやるきないんだ、あの教師?』


 と流騎は内心思ったがあえて口には出さなかった。


「それにしても、担任の部屋掃除ってのは何のことだ?さっぱりわからん」


 流騎が口に出すや否や隣に座っていた生徒が、


「何だ萱場、おまえ知らないのか?この日には遅刻、あるいは理由なしの欠席の場合、担任の言うことをひとつ聞かないといけないんだ。よくわかんないけど、俺たちの担任の部屋は蟲の住み着く修羅場らしい……。去年の生徒は二人、丸二日、最新のクリーニンググッズを使ってやっと人並みにすることが出来たらしい。そしてその二人の体からあの部屋での悪臭が一週間取れなかったらしい。怖いよな。その二人はもう卒業しちゃったけどな」


「へえ、そんなことがあったのか…って…あの担任そんな中で暮らしてるのか?」


「ああ、そうらしい。それでもあの担任がここにいられるわけがわかるか?」


「いや、わからないな。ここの教師ってことはそれほど月給のほうもいいはずだろ?」


「ああ。でもな、それはあの担任がここの理事長の親戚だかららしい」


「そうなのか。それなら納得いくな。ありがとな。それで、いつから準備に掛かるんだ?」


「ああ、あと一時間ほどで委員会の準備が終わってそれまでに着替えておけばいいから、それまでは自由時間だ。じゃあな」


 と、その生徒は自分のサークルのほうへといった。残された流騎は、窓際に座っている刈谷を一瞥し、考えに耽った。


『ドッジボールのほうは問題ないだろう。それで、問題なのはタイムリミットのほうだ。今日が九月九日……、あと二十五日か……。ぎりぎりだな。いまのままじゃ全国規模で守り抜くことは不可能だ……。そうすると、直接向こう側へ行く必要があるな。広島、京都、北海道を回ってから東京に行くほうがベストだな。だが、それだと時間が掛かりすぎる。分散していくか?だがそれじゃ、必ず負ける。いくら支援が来るといってもシコン、ビワ、クキョウの三人とは当たることになる……。それなら、東京で迎え撃つか?どの道あの三人も東京に来るはずが、そして一番の大軍と共に来るはずだ。そうするしかないみたいだな。刈谷と綾夏を来週までにグレード10並にはあげなきゃな。そうすれば一対一で持ち込めて俺はシコンと当たることができる。後はカゲフミとダイテツの二人を信じるしかないな』


 などと結論を見出す前に綾夏と静香が教壇の前まで来て、


「それでは皆さん、がんばりましょう。がんばって今年の豪華特典を奪い取っちゃいましょう」


「「おおぉーーー!!」」


 部屋中に生徒達の雄叫びがあがった。



球技大会、再来です。盛り上がってますね、盛り上げてます。

実際ドッジボールは小学校以来していませんね。あの頃は燃えてました^^

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