第三十六話 流騎の朝
朝日が昇ってきたのだろう、だんだんとカーテンの向こう側が薄っすらと朝日を帯びてきた。
「ふぅ、少し休憩するか。そろそろ朝飯にするかな。何があったかな……」
俺は冷蔵庫の中を空けてみた。先日買いだめしておいたから品揃えは豊富だった。さてと、何を作るかな……。最近インスタントが多かったからな、定番のハムエッグといくか。
俺は卵二個にハム二枚とパンを冷凍庫から取り出して、そのままパン二枚ほどオーブントースターの中に入れた。フライパンに火をかけ充分に温めてから卵を入れた。ジューという音と共に卵の周りをひいておいた油が飛び跳ねた。ふぅ、久しぶりだなこうやって朝食を作るのは……。そろそろいいか。
俺は残った二枚のハムをも入れて出来上がった頃にパンも程よく焼けていた。それを皿にのせテーブルに運び、椅子に座りながら食べた。なかなかいい出来具合だな。
さてと、テレビでもつけるか。俺はそばにあったリモコンでテーブルから二メートル離れて天井からぶら下がっているというより天井に設置されているテレビに電源を入れた。もちろんテレビはこのリモコンひとつで半径三メートルのところなら可動可能なシステムになっている。するとテレビのニュースで、
【昨日広島県比婆山で発見された血痕の付着した軍用服の持ち主の検討はつかず、その当時現場にいたとされる二名の重要参考人の目星もつかないまま山での捜査は打ち切りとなりました。警察はこれからも事情聴取を行うと共に見つかった証拠をもとにこれからも捜査を続ける方針であることが昨晩発表されました】
ふぅ、まだ続くのか……、まあしかしMBSもよくやったな。これで俺たちが疑われることはまずないだろう……。打ち切りという意味は事実上の打ち切りだからな、ああでもいっとかないと警察が非難を蒙ることになるんだからな。
「ごちそうさま」
俺はすぐさま後片付けを済ましニュースの右上に表示されている時間を見たらまだ六時であった。まだまだ時間はあるが、支部の準備もしなきゃならないし暇だからもう行くか。
俺はすぐさま荷物をまとめて朝霜が街を覆いつくした道を高校まで歩いた。そして校門が見えてきた、頑丈な柵が重厚な雰囲気を保ちながら悠々と立ちはだかっていた。
俺は校長から渡されたカードを取り出しセキュリティチェックの前で翳した、すると、
ギギギギギギギギ……
と重たい鉄が鉄を擦れる嫌な音を立てながらゆっくり開いた。
俺はそのまま門をくぐると俺の後ろでまた門が俺を逃がさないようにするかのようにゆっくりと閉じた。登校時間外だとこういった仕組みになっているらしい。
そのまま校舎に入り支部にもカードを使って入った。すると昨日と同じように入るや否や室内がライトアップされ白色の蛍光灯が点いた。俺はとにかく鞄を置いて部屋の中の設備を見回し、確認しておいた。
すると、使い慣れていたMBS専用の電子機器が最新式ので取り付けられていた。通信機、計測器、測定器、データ管理用コンピューターなどなど少なくとも億単位の機器が備わっていた。
ここまでやるか……?だが、今はカゲフミを信じるしかないな。さてと……。俺は最低限の操作で自己認証装置を起動させMBS隊員以外が使えないようプロテクトをかけておいた。
それが終わるとすぐさま窓の外からぞろぞろと一般生徒達が蟻のようにやってきた……。
さてと俺もそろそろ教室に戻るかな……。
俺は支部の談話室の冷蔵庫から水のボトルを取り出し飲み干してからゴミ箱に捨てた。
そして支部から出た後、俺は自分の教室へと繋がる廊下を歩き出した……。
ふぅ、昨日は疲れたな〜。静香ちゃんの話って長いんだもん、あれから流騎くんいなくなってから三時間もぶっ続けに話が続いてまた続きは明日からとか言われてお開きだったし……。
でも楽しかったな。今日こそは流騎くんも一緒にいてもらおう。その方がわかりやすいし、案外早く終わるかも……。それに今日は流騎くんを苛められるかもしれないし。
ふぅ、ちょっと早く着ちゃったかな……。でもいいや、クラス委員の仕事を済ませないといけないし、多分静香ちゃんももう着てるだろうしね。
てくてくと校内の廊下を歩き教室に入ってみるとそこには二人生徒がすでに席についていた。
「あ、流騎くんに静香ちゃん。おはよう」
「ああ、綾夏。おはよう」
「綾夏さんおはようございます。早速ですがクラス委員の仕事手伝ってもらってよろしいですか?」
「あ、うん。ごめんね、静香ちゃん一人にやらせちゃって」
私は鞄といってもお弁当と着替えぐらいしか入ってないんだけど、を置いて静香ちゃんの席まで少し小走りした。
「それでは綾夏さん、今日のHRで皆さんにお話をしておかなければならない必要条項はこれとこれです」
「あ、うん、わかった。ありがとう。なんか静香ちゃん私よりすごい出来るのに私が委員長やってていいのかな?」
「それは皆さんが投票で決められたことですので私がとやかく言う資格はありません」
「そ、そっか。なら、いいんだけどね」
「なんだか、静香が綾夏の秘書みたいだな」
流騎くんが私たちのことを遠目から眺めていて顔に薄っすら微小を浮かべながら言った。
「まあ、似たようなものですね」
「そ、そんな。それじゃ私が静香ちゃんをこき使ってるみたいになっちゃうじゃん」
「似たようなもんだろ」
流騎くんが追い討ちをかけるかのように言い、静香ちゃんも
「そうですね」
「な、なんで二人して私をいじめるの〜?しかも何で急に流騎くんと静香ちゃん何気に息ぴったりだし。私ぐれるから」
本心からそう思った、少し泣きたくもなったかのような仕草をした。
もし流騎が平凡な朝を過ごした場合の描写です。そして綾夏視点にも移してみたり。
平和な日々っぽい感じで^^