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燃えた夏  作者: Karyu
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第三十三話 流騎の過去(3)


「しかし、そんなにいるのか? おっさんの作戦にのるような隊員が?」


「ああ、私の管轄化の鳥取MBS本部の隊員のいくらかは私に協力するし、ダイテツの東京MBS本部のいくらかも協力するとの話だ。後のMBS本部とは今や連絡は取れない」


「そうか、でもそれならなんとかなるかもな。リベリオンのほうはすべて敵だと思っていいんだよな?」


「ああ、今のところはな」


「どういうことだ?」


「恐らくリベリオンの隊員たちの中にはこのことを知らない連中がいるだろう。そのときにリベリオン内で亀裂が走ることも考えられる」


「なるほど、そいつらもこちらに丸め込めれたら丸み込めということか」


「いや違う、逆に利用するのだ。それと今後からのお前たちの任務だが明日にでも新しい上司と今後の方針が通達されるだろう。しかしお前たちはいつもどおり待機と新しい隊員の勧誘が主な任務となるだろう。表向きはそうやって私たち真・MBSの起こす反乱のときに必要な隊員を集めておいてくれ」


「だが、集めろといってもせいぜい一人も集まればいいほうだぞ?」


「それでもかまわん。今は戦力が欲しいからな。そしてお前があの支部のリーダーだ。それとあそこにはチルドレン達がいる可能性も他のところより高いしな。現にもうすでに二人いた」


「ああ、わかった。それで、あの大金が送られてきたわけか」


「ああ、当分はあれで大丈夫だろう。それと前金も含まれている。新たな隊員の訓練の報酬も入っているからな」


「準備のいいことだな。いいぜ、わかった」


「ああ、よろしく頼むぞ。それともうひとつお前に話しておかなければならないことがある」


 カゲフミの眼光が急に鋭くなったのが見えて俺は生唾を飲み込みながら俄かな緊張感が汗となって額をつたっていくのがわかった。


「なんだ?」


「それはお前の過去についてだ」


「!!」


 俺は驚き以外の感情を表すことができなかった。俺は自分の過去はあまりよく知らないのである。ただ気が付いたらカゲフミに引き取られ物心付く頃にはMBSにいた。まさかここで俺の過去が話されるとは……。


「お前は、詳しく言えば国籍がない」


「なに!?」


「お前はある組織の研究材料として実験に使われていた。俗に言う人体実験、もちろんご法度である実験にお前は使われていた。その実験内容とは人間の生態能力の向上と人工的に科学の力でどれだけ潜在能力が上げられるかどうかが試された。つまり人工的にチルドレンを作り出そうとしたのだ」


 俺はカゲフミの言っていることが理解できなかったが、嘘をついたことのないような男だ……。聞いていないと怖い気がして食い入るようにカゲフミの一言一言を頭に刻んでいった。


「そして、お前はそこで初めてその実験の最高傑作品として売り捌こうとした。お前はまだあの時4、5歳だったな……、それでお前を買い取ったのが私というわけだ」


「そんな馬鹿な……。俺がそんな研究の最高傑作品だと!?一体どこのどいつがそんなことをっ……!」


「その組織は我々がすでに潰した。それでお前を買い取った……。いや引き取った後国籍を日本人として萱場流騎という名前にした。それからはお前の知っている通りだ」


「くそっ……。だが国籍のない俺が何でこんなにも日本人に似てるんだ?」


「DNA鑑定の結果おまえの両親が日本人だということがわかったからだ」


「そ、そうか……」


 俺は言葉を失っていた。この事実だけを受け入れるだけで頭がいっぱいいっぱいだった……。


「それと、お前の左足についている包帯のことについて話そう。その包帯とってみようと思ったことはあるか?」


「ああ、だが取れなかった。一体どうなってるんだ?」


「それは一種の封印だ。お前が研究で得た人類を超えた力は計り知れなかった。たかだか5歳のお前に我々はお前をなだめるのにかなり苦労したからな。だからそれ専門のチルドレンの隊員に包帯のようなお守りといっても封印ようの札をお前の左足についてた奇妙な紋章の上に貼ってもらった。取れないようにな」


「じゃあ、これはもうとれないのか?」


「いや、もういつでも取れるようにはなってはいるが取ったらお前が自分の力をコントロールできるかが心配なだけだ。だから、出すときは少なくとも最初は三分の一かそれ以下だけ紋章を封印の札から出せ。それから様子見だ」


「ああ、わかった」


「それともうひとつ重要なことをいい忘れていた。お前の能力はもうひとつ存在する。シズカのようにな」


「なんだって!?」


 俺は続けざまに語られる俺の秘密を聞き、驚嘆の目を見開くだけであった。


「もうひとつのおまえの能力それは風だ。そのお前についている紋章が風を操る能力のしるしだ。お前の得意な水速転換、水の力だけとしてはあまりにも早くないか?」


「ああ、確かに。だからって何で今まで教えなかったんだ?」


「それは確証がなかったからだ。だが今になってお目の能力が水だけではなく風をも扱える能力ということだ」


「そうだったのか……。だが俺は覚えてないぞ、風を扱えるオリジナルの分身にあったことは。水のなら覚えているのに」


「それはお前を研究材料にしていたのが風を扱えるチルドレンだったのだ。そこでお前が風を最初に受け継いだのだと考えている、お前の足の紋章も風独特のイメージを漂わせる印だからな」


「そうだったのか……。信じがたいが、信じることしかできないんだろうな」


「ああ、それでは後は頼むぞシルキ」


「それじゃあなおっさん、また生きてたらどっかで会おうぜ」


「ああ、そう願いたいものだな」


 そういい残しカゲフミは自分の能力である闇を使ってホテルの部屋の一角に置かれているランプスタンドの影の中に溶け込むように消えていった。


「さてと、俺もそろそろいくか」


 俺はその部屋の扉を開け、エレベーターに向かって歩き出した。



流騎の過去編第三弾。といってもカゲフミ自身から物語られましたが。

流騎の過去であってシルキの過去ではないのでご了承願いませ。ん?同じかな……?

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