第二十六話 冷蔵庫の中身は?
「え、学校にあるの?じゃあ毎回ここに来なくていいんだ」
「ああ、まあほとんどがさっきみたいな通信式だけどな。それで明日から学校に行って案内人がいるはずだからその隊員の管理している部屋がこれからの正式なもうひとつの広島MBS支部になる」
「へえ、じゃあ学校で待機しているその隊員もチルドレンなんだ」
「ああ、あそこには結構チルドレンの集まってる密度が高いからな。まあまだ俺もその隊員にあったことはないんだけどな。目印というより合図はホタルだそうだ」
「ホタル?」
「ああ、まあ一種のテレパシーみたいなものでチルドレン同士が扱える特殊な念波でそれを念じて発信することでどこにチルドレンがいるか分かるようになるんだ。だから携帯なんかはあんまり使わないんだけどな。あのカゲフミも一応はチルドレンだ」
「へえ、そうなんだ。じゃ、明日から本格的に私はMBS隊員なんだ。なんかどきどきするな」
「ああ、そうだな。まあ結構楽なもんだから退屈かも知んないけどな」
「そっか、でも明日の学校どうする?なんか気まずくないかな」
「まあ、なんとかなることを祈るしかないだろ」
「そうだね」
そして俺たちは広島支部をでて電車に揺られ駅にまで戻り、それぞれの家に向かって別れた。
俺は綾夏と別れてMBSに配備されたアパートに戻った。一週間留守にしていたせいだろう新聞やら広告やらが郵便受けからあふれ出ていた。こんなに出てるのに誰も触らないところを見るとプライバシー保護は完璧なようである。そのわりには掃除をしているところを見ると矛盾だらけだなこのアパートは。
鍵を開けて部屋に入ると何もかもが整理整頓されていた。まあなんにもないのだからもともと綺麗だからあんまし変わんないんだけどな。さてと、冷蔵庫に何が入ってたかな……。
俺は冷蔵庫を開けたら直後異様なほどの悪臭が立ち上った。
「うっ……。な、なんだこの匂いは?こ、これは先週買っておいた賞味期限ぎりぎりだった納豆に牛乳……。なんなんだこのなんともいえない臭さは……、死ぬ。な、なんとかこれを捨てなければ……」
俺はマスクを顔にして使いきり手袋をはめ、冷蔵庫の中を換気扇を回しながら掃除した。徹底的にだ。掃除をしているうちに色々な腐った食べ物や飲み物が出てきた。それをすべてゴミ袋につめて部屋から放り投げた。
「ふぅ。なんとか片付いたな……。それにしても食べ物が残ってない…………。ほぼ腐ってたな。仕方がない、コンビニに行くか……」
俺は制服を脱いで身軽な服装に着替えてジャケットを羽織ってアパートを出た。やけに今夜は冷えていた。
夜風がやけに肌に響くな。今は夜の九時ごろか……。
俺は近くのコンビニについた。そこでカップ麺を一個とスポーツ飲料一本買ってアパートに戻った。しかし、ポケットの中を探ると出てきたのは百円玉と十円玉二個だけであった。
「…………。明日から俺はどうやって生きていくんだ?」
給料は確かに三倍以上もらえるはずなのにそれが一週間後だとは……。いや、もしかしたらあの郵便受けにもう入ってるかもしれない。急いで帰るか。
俺は小走りにアパートまで戻り郵便受けからはみ出ている郵便物を部屋にすべて持ち帰って見た。するとそこには俺宛にMBSから封筒が入っていた。すると中から現金にして三百万出てきた。
「こういうことだけには準備いいんだよなカゲフミのやつ……。まあしかし助かったな。これで当分はもつ。しかし現金を送ってくるのはちと用心不足なんじゃないのか?ま、いいか」
俺は早速ポットに水を入れて沸かし始め、その間に買ってきたスポーツ飲料を飲んだ。
ふぅ、生き返るな。お、もう湯が沸いたのか、何かしらいろんなところにハイテク技術が施してあるなこのアパート……。
そして俺は買ってきたカップ麺に湯を注ぎ、待ってる三分の間割り箸を探し出しちゃぶ台の上に持って行きテレビをつけた。
テレビには明日の天気をやっていて明日はこの夏一番の猛暑日になるそうだ。どうやら地球温暖化問題はかなり深刻なようだな……。まあ実際それに伴って俺たちのチルドレン数もここ最近現れる人数がまばらだしな。おっ、三分経ったか。それじゃ、
「いただきます」
ずるずるずるずる……
静かなアパートの一室に麺をすする音がかなり大きな音で響いた。でも、うまいな……。こんな安く、うまくて、早い食べ物を考えたやつは天才だ。ふぅ、うまかったな。シャワーを浴びてもうねるか。
俺は立ち上がってカップ麺の空を捨て、シャワーを浴びすぐさま布団に横たわった。山での一週間のほうがこのアパートにいた日数より多いんだよな……。
寝心地はいいはずなのに、慣れってのはこわいもんだな。慣れたら岩の上でも寝れるってのは本当なんだな。などと考えてるうちに俺は眠りについた。
流騎のちょっとした欠点が見え隠れしてみたりそうでもなかったり。そんな感じですみません。