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燃えた夏  作者: Karyu
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第二十四話 綾夏の食欲

 山を下りること三十分、やっと俺たちは山のふもとまで下りることができた。朝から何も食べてなかったのですかさず街のほうへと向かい、商店街の並ぶ昼一番に忙しい時間帯の中を喫茶店を求め歩いた。


 しかし、ここの商店街が自慢するほど多いと言われてるレストラン、喫茶店、食堂やファーストフード店を満席にしてしまうほどの人が蠢いていた。


「凄いねこの人の数、まあお昼時だからしょうがないけどちょっと感動するなー」


 綾夏は目を少し潤わせながら言った。


「なんにだ?」


「だってこの一週間流騎くん以外の人に会ってなかったんだもん。ちょっと感涙」


「ああ、そうだな。俺も最初はそうだったな。でも、まあ今は人見て感動するよりもまずは飯だ」


「うん、そうだね。あ、そうだ私いい場所知ってるよ。地元の人ぞ知ると言われてる喫茶店を」


「お、それはいいな。早速行ってみよう」


「えーと、確かこっちだよ。ここの角を右に曲がって……」


 歩くこと5分、ようやくその喫茶店につくことができた。看板に、


[ザ・カフェ喫茶]


 と、書かれていた。一体どっちなんだ?まあとにかく飯が食べれるんだったらどうでもいいんだけどな。


「いらっしゃいませー」


 と、店に入るや否や店員に連れられ窓側の席に案内された。メニューを渡され、


「ごゆっくりどうぞ」


 と、笑顔を忘れず軽くお辞儀をし立ち去った。


「ここはね、値段も結構安いしすんごくおいしいんだよ。未来と一緒に見つけてからよく来るようになったんだ。でも今日は結構人も多いね。いつもなら半分ぐらいしかいないのに」


「ま、いいさ。それに結構和めるな、ここ」


 店内には多分、竹をモチーフにしたのだろう。ところどころに竹を使った小道具が店内に置いてあった。


 それに、席はソファで綾夏をテーブルを挟んで座るような形式になっている。それに、後ろに座っている客とはブラインドが使われていて向こう側がぼやけて見える。


「それじゃ流騎くん、なににする?」


「ああ、俺はもう決まったから。呼んでも構わないぞ」


「うん、わかった。すいませーん」


 綾夏は手を上げ店員を呼んだ。 


「はい、ご注文お決まりですか?」


「はい、私はこのキングサイズイチゴパフェ3つとミックスサンド5人前ください」


 俺は耳を疑った、たぶんこの店員もそうであろう。


「わ、わかりました。ご注文以上でよろしいですね」


「え、いえ、さっきのは私の分で彼はまだ注文してません」


 綾夏は少し頬を赤くしながら言った。


「あ、これは失礼いたしました。それではご注文お願いします」

 

 店員は頭を下げ俺に注文を聞いた。

 

「あ、ああ。じゃこの夏野菜カレーとコーヒーをください」


「承知いたしました。それでは失礼いたします」


 店員は俺たちからメニューを受け取り厨房へ入っていった。


「おい綾夏、そんなに食べれるのか?キングサイズってさっきのメニューで見たけど普通のぱパフェの5人分はあるぞ?」


「大丈夫、私パフェ大好きだから。それに普通だったらキングサイズ5つぐらいは食べれるよ。でもミックスサンド頼んだからそれで充分かなって」


「いったいその細い体のどこにそんなに入るんだ?」


「わかんない、けど入るんだよね。私も不思議」


「そ、そうか。ならいいんだけどな」


 俺は自分の財布を取り出し綾夏が見えないようにこっそり開けてみた。入っていたのは現金にして一万円ぽっきり。足りるのかどうか不安だ……。確かにパフェがいやになるほど買ってやるとは言ったがこれほどまでとは……。


 たしかに合宿中も綾夏はしょっちゅう木の実や果物を捥ぎって食べていたからな。


 くそ、今月もカップめんの日々か……。やっぱりここは綾夏に我慢してもらって……。


「流騎くん」


「あ、ああ。なんだ?」


 俺は綾夏に呼ばれ財布から急いで視線を上げた。


「やっぱりイチゴパフェもう一個追加していいかな?」


 綾夏は俺に期待感を込めた瞳で顔に訴えかけてきた。

 

 う、かわいすぎる……。くそ、こうなりゃ意地だ。


「ああ、もちろんいいさ。なんてったって今日は俺のおごりなんだからな」


 俺の心の中でナイアガラの滝以上の涙が流れていた。俺の全財産である一万円札を綾夏の腹の中へ吸い込まれながら……。


「はい、お待たせいたしました。キングサイズイチゴパフェ4つ、ミックスサンド5人前、夏野菜カレー、それとコーヒーです。お水はここに置いときますのでどうぞごゆっくり」


 と店員はテーブルの上に領収書を表を下にしておき、軽く頭を下げて立ち去った。


「それじゃあ、いっただっきまーす」


 綾夏の頼んだパフェの容器はゆうに50cmはありその上にはアイスクリームや山のようなイチゴでうめつくされ、全長60cmほどの巨大パフェが四つ並び綾夏の顔を隠していた。


 俺はそのボリュームに押しつぶされそうになりながらもほのかに湯気を漂わせるカレーを食べ始めた。やっぱりカレーは夏野菜に限るな……、このなんともいえない夏野菜の絶妙なコラボレーション。茄子、人参、玉ねぎ、かぼちゃ、ピーマン、それにトマトが入り、色鮮やかで様々な食感が楽しめるこのカレーを考え出した人物は尊敬すべき料理人だ。


 そして俺がカレーの二口目を食べようとしたときある異変に気づいた。綾夏のパフェのひとつがすでに空だったのだ。俺は唖然としながらもカレーを食べ続けた。



もうさすがにベタでふるいかもしれませんがこの大食い要素は綾夏には必須なのです。

私は食べたら太りますが、綾夏に関してはそんなことは一切ないのがうらやましいですね。

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