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燃えた夏  作者: Karyu
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第二十二話 比婆山強化合宿七日目(決着)


 吹き矢か……厄介だな。もしかしたらつけられていたのか?だがそんな気配はなかった。もしかして新手か?


 そんなことを考えているうちにまたもや針が一直線に俺たちの元に飛躍してきた。すかさず俺は綾夏を抱きこんだまま木の陰に転がり込んだ。


「はあ、はあ……。まずいな……、見るからに五人ぐらいはいる」


「えっ?でも、飛んできた針はひとつずつだったよ?」


「いや、最初の針と二回目に飛んできた針は別々だった。それにその二人は木から多分吹き矢らしきもので狙ってきた。それで茂みのほうに三人の影が見えた。綾夏はここでファイアーアローを使って木の上の相手を撃ってくれ」


「うん、わかった」


「よし、じゃあ行くぞ!」


俺はすかさず水速転換で思いっきり相手のいる茂みの中に突っ込んでいった。相手はきっと手馴れているのだろう、すかさずばらばらに散り茂みから出ないようにぎりぎりの境界線を沿って懐から銃を取り出した。俺もすかさず中央にいた相手に逃げられる前に殴りこみ、相手を悶絶させた。


 綾夏もファイアーアローで相手のうちの一人を射抜いたらしい、悲鳴を上げながら炎に焼かれながら木の上から落ちていった。残りの三人は先にやられた二人よりも運動神経が良いらしく、すぐさま茂みから出て、三人集まって川の周辺に集まった。


 茂みからでは分からなかったが、彼らは全身を黒い軍用服に身を包み、銃をそれぞれ持ち二人は俺のほうに銃口を向け、綾夏のほうにも狙いを定めていた。相手はリベリオンのシンボルである、Rに白と黒の翼の生えた紋章を両肩につけていた。


 しかし奇妙なことに彼らの顔が人間とは思えないほど一人は鼻がまるで犬のように出っぱていて、もう二人のほうは顔の表面に鱗のような凹凸が見られた。そして緊迫していた状況に彼らから口を切った、


「おまえが、噂の水のシルキか」


「ああ、そういうお前たちもリベリオンの兵士か」


俺は気づかれないように綾夏にホタルで直接頭に話しかけ自分の姿を残像として残し自分自身の本体を木の陰に隠れるよう指示しておいた。


「ああ、だが俺たちは新たに創られた人間型のキメラだ」


「人間型だと?」


俺は気づかれないように慎重に自分のコピーを空気上の水素を凍らせ、鏡に映すように自分の姿を屈折反射させた。


「ああ、俺たちはある動物達と融合されてその動物の特技を人間のまま使えるようになったのさ。前まで研究されてた言葉をしゃべるキメラと違ってな」


「そうか、ならお前たちにオリジナルの力はないわけか」


俺は最後の鎌をかけ男たちの射程内から抜け出した。


「は?オリジナルだと。何をわけのわからないことを言っているんだ。おっと、おしゃべりが過ぎたな。それじゃそろそろ永遠と眠ってもらおうか!」


いっせいにバンバンと男たちは銃を乱射し始めた。しかし、いくら銃弾が命中しても通り抜けるだけの俺たちの虚像の異変に気づいたのか犬と融合されたらしき男が匂いで俺たちの居場所を嗅ぎ分ける前に、


「出でよ氷人の刃、ヒエロ・ランス!」


俺が技を唱えるや否や自分の手の中に氷でできた長槍が現れた。それですかさず犬型キメラの脳天を突き刺し小さな血の糸を引きながら引き抜いたヒエロ・ランスを横にいた蛇型キメラの二人に薙いだ。


そのうちの一人の蛇型キメラをしとめる事ができたのだが、もう一人のほうは蛇独特の柔軟性を生かして人間ではありないほどの動きで俺の攻撃を避けた。多分関節を外したのだろう、やはりこいつらの言っていたことは本当だった。


 そしてかろうじて避けたその男はすかさず銃の標準を俺に向けた。しかし狙いが定まる前に、瞬時に男の後ろが赤く燃え上がりその男の背中を火矢が貫いた。多分綾夏の援護だろう。


 周りを見渡すとかなり散々とした光景になった。まだ燃え上がる火と燃やされる肉塊、多量出血しノイローゼ状態の死体。


あばら骨を折られそのまま心臓まで達し絶命した死体など一般人には一視できない状況の中、始めての実戦を行った綾夏は悠然と隠れていたはずの大木の横に立っていた。その瞳に驚愕と怯えを揺らめきさせながら……。


「綾夏、大丈夫か……?」


俺はなるべく穏やかに話しかけたが、自分では綾夏が大丈夫ではないことぐらいわかりきっていた。初戦で少なくとも人を二人正当防衛とはいえ殺めたのだから。しかし、MBSにいる以上こういったことは随時ありえることなので早い段階での戦闘経験は必要なのである。


「綾夏、少し横になるか?」


俺はまたも訪ねたが綾夏は自分の作り出した修羅場から眼を放そうとはしなかった。おれ自身も最初に人を殺めたときは自己嫌悪と後悔の波の間に酔い三日は立ち直れなかった日々があったがそれでも早いほうだといわれたことがある。


「ねえ、流騎くん」


「な、なんだ綾夏?」


「私、人を殺めたのこれが初めてじゃないんだ……」


 綾夏の孤独な告白が行われようとしていた。



いいかげんなタイトルのオンパレードですが、この回が最後ですのでどうぞご安心を……。

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