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燃えた夏  作者: Karyu
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第二十一話 比婆山強化合宿七日目(決戦?)

 

 俺は事前にホタルでカゲフミに連絡をつけ事情を説明した上で一時間の敵への視察許可をもらい、綾夏の最終試験の内容を話しそれを実行する許しも貰っておいた。なんともすんなりあの親父が了承したので少し疑問に感じたが、ホタルではあまり長く話せないのでその為の配慮だろう。


 俺は水速転換を使って目にもとまらない速さで今しがたカゲフミの親父から得たシコンの本拠地の場所にむかった。その間わずか5分足らず。やはり、あいつらも人目につかないところで活動していたことがわかった。そこは比婆山に連なるひとつ向こうの山にあった。


 俺は息を殺しながら、見えてきた多分国が昔に作った発電所であったのだろう、今ではすっかり機能を停止している建物を捉えた。


 真っ白であったはずの建物、いやタワーといってもいいのかもしれない、の塗装はすっかり禿げ、人がいるとは思えないような雰囲気を醸し出していた。


 そのタワーは垂直上に建っていて、まるで灯台のような形をしていたのだが、普通の灯台よりはるかに凌駕するほどの重量感と高さを誇示していた。発電機は恐らく建物の中なのであろう、普通なら建っているはずの発電モーター専用の建物が見当たらなかった。


 俺はゆっくりとそのタワーを木の上を移動しながら観察し人気がいないことを確認した上で、自分を空気上の水素に溶かし込み、周りの景色に溶け込みタワーの中へ入っていった。


 しかしタワーに入り込むや否や罠が張ってあったのだろう、いきなりタワーに入った入り口が閉まり、どんどんと窓や人が抜け出せそうな空間は遮断されいっせいにタワー内がライトアップされた。俺は即座にタワーといっても一階なのであろう天井の鉄格子に人間業とは思えないほどの跳躍をして5、6メートル上の天井にしがみつきようすを見ることにした。


 そしたら人が十人ぐらい銃を武装しながら地下の階段からあがってきて、警戒しながら一階のフロア中を詮索し始めた。


 フロア全体には今では使わなくなったであろう機械や箱などが積み上げられていて無造作に配置されていた。


 一体どうなってるんだここは……?いくらなんでも警戒しすぎなんじゃないのか?いや、まあ確かにリベリオンのスパイがMBSにいたようにMBSのスパイもいまは数人だがここにいるはずだからなその為のリベリオンの処置だろう。しかし、地下から出てきたということはこのタワーはダミーで本拠地は地下にあるのか。


 そんなことを下を見下ろしながら考えていたら、武装兵の一人が


「多分また動物でも入りかけたんだろう。この装置は侵入防止と侵入者排除には役立つが敏感すぎるからな」


「ああ、そうだな。それじゃ戻るとするか」


 と、ぞろぞろまた地下への階段を下りていきシャッターがゆっくりとまた上がり始めた。


 俺はそのチャンスを見逃すことなく外に出て、深入りするよりも先に綾夏が多分朝食を準備しているはずであろう場所まで帰ることにした。


 しかし、俺の後ろをつけてくる五体の影には気がつかなかった……。俺はかなり野生的な気配を感じたのだがいくら考えてもヘビや野犬ぐらいの気配だったのでそのまま無視して山の中を駆け戻った。




 俺が川のほとりに戻った頃、綾夏は靴と靴下を脱ぎ川の中で腰をかがめ必死に魚を取ろうと四苦八苦していた。何とか一匹の鮎を捕れたようだが綾夏は俺の姿に気がつかず、やきになって川を睨んでいた。俺は綾夏のすぐそばまで行って、


「おい、綾夏」


「え、流騎くん?あれ、いない……。空耳かな……?」


 綾夏は何を言ってるんだ……?俺の姿が見えないのか?と、ふと思って自分の手を見てみたら見えなかった。ああ、そうか……。まだ技をといてなかったな、俺としたことが。俺は技を解いて空気上の水素との同化を解いた。


「きゃっ!流騎くん!なんでっ……?って、きゃっ!」


 綾夏は一人騒ぎながら川の中に落ちた。


 昨日どうよう綾夏はびしょびしょになり俺のことを昨日と同じ目で見られた……。くそ、またやっちまった。


「悪い、綾夏。パフェ以外にも何かおごるから、な?」


 俺は手振り身振り綾夏の怒りを治めようとあわてながら言った。


「あはは、流騎くん、そんなに慌てちゃって、おもしろーい」


 綾夏は半分ほど口を手で覆いながら川の中から立ち上がり笑った。


「う……。じゃあ、怒ってないんだな?」


「怒ってないよ、でも流騎くんがそこまで言うんだったら合宿終わったらもう一個なんか奢ってもらおーっと」


「い、いや、綾夏が怒ってないんだったら、それはそれでいいってことで奢るのはなしってことで……」


「えー、流騎くん嘘つく気?」


「いや、男に二言はない!何でも好きなやつを奢ってやる」


 俺は意地になっていった。


「そうこなくっちゃ。あはは、さてと濡れちゃったから流騎くんちょっとだけ後ろ向いててくれない?服をあっためて乾かすから」


「あ、ああわかった」


 と、俺が後ろを振り返った瞬間少し離れた森の影で何かが光った。


「綾夏、伏せろ!」


「えっ?きゃっ!」


 俺は無理やり綾夏の頭をつかみしゃがんだ途端に俺たちの頭上を一本の細い針のようなものが「ひゅっ」という音と共に通過した。



(決戦?)と書かれていますが、どうなのでしょう?これは決戦でしょうか?

まあそういうことにしておいてください。七日目が最終日なので綾夏の活躍ぶりをご覧ください。

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