第十九話 比婆山強化合宿?六日目
歩いて二分ぐらいのところに大きな岩が川に面してあった。そして、その裏で何かが蠢くもの音がしていた。多分綾夏だろう……しかし一体なにをしているんだ?
「おい、綾夏!」
俺は背後から声をかけた。
「えっ、流騎くん?きゃっ……!」
バッシャーン!!
と大きな音がし、おれは岩の後ろの綾夏の元へ駆け寄り、
「おい綾夏、大丈夫か!」
と声をかけ川の中にしりもちをついている綾夏を見たら服を着てはいなかった……。
「見ないでーーー!!!」
勢いとともにまたもや、火拳が何倍の威力で俺の顔面めがけてせまってきた。
「うおっ!わ、わるい綾夏!」
俺はとっさに火拳を避け背を向けた。
「はー、はー、はー……。なんのようなの流騎くん?覗き!?」
綾夏は体の前をタオルで隠しながら叫んでいた。
「い、いや断じて違う!俺はただ綾夏がいないし、朝飯の準備ができたから呼びに来ただけで……」
「問答無用!いけっm昨日結局は完成できなかった蛍火のかわりにできた追撃用の技、炎竜!」
と、綾夏は技を唱え見る見るうちに綾夏を螺旋状に包み込むように赤橙色の帯が生じだんだんと太くなり竜の頭と思わせるような頭部までが現れ俺のことを睨みつけた……。
「おい綾夏、何でそんな説明口調なのかわかんないが、とにかく落ち着け!な?」
俺は必死に綾夏をなだめようと試みたが、
「いくら流騎くんでも、か弱い乙女の裸を見ようとするなんて最低!だからせめて私の怒りを受け止めて。やっちゃえ炎竜!」
川の水を蒸発させながらもくもくと湧き出る水蒸気から姿を現す炎竜の姿は火山から這い出てきた竜のようであった。このままでは俺が焼け死ぬよりも前にこの山全体が大火事になる。ええい、くそっ……仕方がないこういうときは俺も龍の力に頼るしかないな……。
「深き海原より蘇れ、水龍!」
俺が召喚させた水龍は、すぐさま炎竜に向かってゆき大量の水で炎竜を沈下させその場にいた綾夏自身もがずぶぬれになった。
「きゃっ!もう、びしょびしょ……」
「わ、わるい綾夏……」
「ううん、もういいよ。流騎くんが覗きなんてするわけないしね……。ごめん。悪いけど先戻っててくれない?私着替えた後戻るから」
「あ、ああ、わかった。ほんとに悪かったな……」
俺は申し訳なかったものの着替えるといっている綾夏のことをその場で待つわけにもいかず、元いた場所いたところへ帰ったのだが、妙に焦げ臭い匂いが俺の嗅覚を襲った。
「しまった……!魚が、朝飯が……。くそっ、綾夏が帰ってくる前に新しいのを捕まえなきゃな」
俺は、すぐさま新しく魚を捕らえ、活きのいいまま黒焦げになった魚を刺している枝を使い何事もなかったかのような感じを作り出し、綾夏の帰りを待つことにした。しかし、十分待っても綾夏は帰ってこなかった。一体なんで女は着替えるだけにこんなに時間がかかるんだ?などと考えているうちに綾夏が帰ってきた。
「あ、綾夏、大丈夫か……?」
俺は恐る恐る尋ねた。
「うん、大丈夫だから。全然気にしてないよ。ほんとに全然気にしてないから。ただ、この合宿が終わったらおなかいっぱいイチゴパフェが食べたいなー」
綾夏は俺に上目を使いながら見上げてきた。
「う……。わ、わかったよ、イチゴパフェがいやになるほど買ってやるよ……。はぁ……」
絶対、綾夏怒ってるよな……。くそっ、俺が悪いにしても納得いかない。やっぱり女は苦手だ……。
「あ、おいしそー。じゃあ遠慮なくいただっきまーす。あむあむ」
綾夏はおれように取っておいた脂のたっぷりの焼いた鮎を口いっぱいに頬張りはじめた。
「はあ、しかし綾夏一体あそこでなにやってたんだ?」
「なにって、水浴びに決まってるでしょ。女の子は皆きれい好きなの。だからお風呂に入らない一週間なんて考えられないの」
「そういうものなのか……」
「そういうものです。けど、この鮎おいしいね。脂がいっぱいのってて」
「あ、ああ、そうだな……。それにしても綾夏、さっきの炎竜はどうやって覚えたんだ?あれは少なくともあと1年ほど訓練しないとできないはずなんだが……」
「え、ああ、炎竜ね。うーん、なんか流騎くんが言ったように火のケイを自然と同化させようとがんばって、竜の御加護を得ようとしたらほんとの炎竜がでてきちゃって。これからはいつ何時も助けてくれるって約束してくれちゃった」
「す、凄いな綾夏は……俺でも一年かかってやっと覚えたのに。綾夏はほんとに防御系なのか?見るからに攻撃に秀でていると思うんだけどな。でも、炎竜が契りを交わしてくれたんだったら、蛍火も使えるんじゃないのか?」
「ああ、そっか!そうだよね、流騎くんあったまいい」
「いや、いいから、ちょっとやってみな。傷とかはないのか?」
「あ、そういえばさっき川で転んだときに足をちょっと岩で切っちゃったからちょうどいいね。よーし、火山の守り竜、炎竜よわたしに癒しの御加護を与えたまえ、蛍火」
そしたら綾夏の手から暖かな橙色の光が生まれ足の傷口に掲げたとたんゆっくりと皮膚がくっついていき何事もなかったかのように足には何のあとも残ってはいなかった。
「おお、綾夏できたぞ。蛍火完成だ。これで一通り合宿のメニューは終えたぞ」
「え、ほんと!やったー、傷も治ったし合宿メニュー終わったし一石二鳥だー」
「いや、まだ喜ぶのは早い。今日はもうここまででいいが、明日はこれまでやってきた訓練の総合テストだからな」
「はーい……。でも今日はこれから自由時間なんだよね?」
「ああ、でもま、今日の残った時間は俺の話を聞いてもらう」
「え?何の話をするの?」
「俺たちのMBSでの役目と活動内容だ」
「あ、うん、わかった。そういえば私もうMBSの一員なんだよね」
「ああ、一応な。だから山を下りる前に一通りの知識を身につけてもらう。あんまり凝ってはないから安心しな」
「え、ほんと?よかったー」
俺は四年前におきたことも思い起こしながら話を始めた。
はい、なぜ「?」がサブタイに入っているかと言いますと……これなら六日目かな?と思わせることができるかもしれないという一縷の希望を込めたからです。はい、すみません、でも他に浮かばないんです……ど、どなたか救いの手を……。