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燃えた夏  作者: Karyu
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第百八十四話 訪れた異変、超越された力


 私と未来は、流騎くんたちとは別のルートで清水寺本殿を目指していた。さすがに、垂直に伸びた骨組じゃなくて木組かな? を昇る度胸はないから。未来はやる気満々みたいだけど……。

「このまま行けば着くんだっけ?」

「そうみたいだね~。まあ所謂観光ルートだから私にまっかせなさーい」

 未来はいつものお調子風で、任務時だからこそ未来が傍にいてくれると緊張せずに済む。

「どうせなら、昼が良かったな。あんまし良く見えないし……」

「そうだねー、でも夜の清水ってのも風格があるよ~」

「へぇー」

 そんな会話をしていたからなのか、早速敵さんが現れた。

「けっ、女二人相手するためにこんなところで見張りなんてついてねぇ」

「はいはい、そうぼやかないでくださいよ。僕達には職務ってものがあるんですから」

「いちいち、うるせぇヤローだな」

「お互い様ですよ」

 なんか、はまってるようではまってない二人組み(忍者風スタイル)がコントしてる。

「ああ、丁度良かった! あのー、道をお伺いしたいんですがよろしいでしょうか~?」 

 甘ったるい声で未来が口の悪い方の敵に言い寄っていく。

 な、なにやってるの未来! あ、危ないよっ!

 と、私が止める暇なく未来に話しかけられた男が答えた。

「ん? あぁ、いいぜ……って、何やってんだ、てめぇ!」

「おおっ! ナイスノリ突っ込み!!」

 グッ! と親指を立てながら未来はその男の人に笑顔を向けて後退した。

 茶化されたと判って、憤りをそのまま表情に出す男の人の横で、背の低い紳士っぽい男が口を手で抑えながら懸命に笑いを堪えていた。

「っくく、ぐっ……く、く、く、くくっ」

「てめぇ、笑いやがったな!!」

「だって、だって、あはははははは!」

 遂に我慢できなくなったのか、笑いの抑制を止めた声が辺りを包む。私も、つられてちょっと笑っちゃう。未来はご満足そうな顔を浮かべている。

「だっー! これだから女相手は嫌いなんだよっ!」

「それって、やつあたりってやつだよ?」 

 と、未来がすかさず返す。

「もう殺すっ! 俺は何があってもあの女を殺すっ!」

 終いには未来に指を差しながら怒鳴り散らす男は、最初に醸し出していた冷静沈着的な雰囲気を崩壊させていた。

「はぁーあ、わかりました。じゃあ、僕はあなたとですね」

 一人称僕の男が私の方を向く。私もすかさず戦闘態勢に移行する。

 すでに私の横にいた未来はもう一人の男と闘っていた。

「フレイムレイピア」

 火で包まれたレイピア型の剣は私の右手に復元されて、男の繰り出した鎌による斬撃を防ぐ。でも、彼の攻撃は単調すぎた。私はすぐさま右手を薙ぎ払い、男の鎌を弾き飛ばしたら男も一緒に後方へと吹っ飛んでいった。

「ぐはっ!」

 男は驚愕の表情とともに起き上がって、再び戦闘態勢に入るもさっきのように、いきなりは攻めてこない。

 未来の方を見ると、もう一人の男と激戦を繰り広げているけど、私が見ている分にはどうもおかしく感じられる。だって、誰もそんなに実力が高いと感じないから。どうしてだろ?

 私はレイピアを構えなおして、鎌を構える男に一気に踏み込んで右手を突き出す。

 男は素早く身を翻そうと試みるが、間に合わず、レイピアは男の右肩を貫いた。

「がはっ!」

 私のフレイムレイピアはただ貫くだけじゃなくて、内側からも灼熱の火で相手を攻撃する。そのため、男は鎌を投げ捨て、のた打ち回っている。

「どうしたんだろう……私?」

 私は自分の両手を見つめながら、自分の体に起きている異常を確かめようにもその余地はさらさらなかった。


 綾夏はもうすでに勝負を終えていた。

 うそ、早くない? でも、本当に相手の男は倒れて悶絶している。

「相方さんは倒れちゃったみたいだよ?」

 脅しをかけてみるも、多分聞く耳は持ちやしないだろうことが瞬時にわかる。

「あぁ? それが、どうした!? 足手纏いがいなくなってやりやすいぜっ!」

 うわー、完全キラしちゃったかな?

 なら私もさっさと勝負つけよっかな。今のいままで能力を温存してたからあんなに怪我したんだし……。とはいっても、今の私じゃ綾夏には敵わなさそうだけど。

「エレキック・パンデミ」

「?」

 男の動きが封じられた。

 というよりも、私が封じた。

 男の両瞳には星型の模様が浮かび上がり、時間が止まったかのように体を硬直している。

「ふぅー、終わった」

「おつかれ、未来」

 綾夏が気を遣って私の体を支えてくれる。

「あははー、ごめんね~」

「ううん」

 さっきの技は滅多に使わない。多大な精神力を貪られるからだ。お蔭で立っていることすら困難になる。きっと綾夏に負けたくないっていう意地が働いたんだろうな……。

「私って子供だな~」

「え? なに?」

 綾夏が不思議そうな表情で私の顔を窺う。

「ううん、なんでも~」

 私は動かせる両腕を綾夏の胴体に巻きつけて、思いっきり抱く。

「うわっ、ちょっと未来! いたいって!」

「んふふー、うれしいくせに~」

「そ、そんな……」

 もー、これだから綾夏はかわいいんだよー。青海ちゃんにはないかわいさが綾夏の武器だね~。ま、でも今は敵陣の中だし、自重しよっと。

「ありがと、綾夏」

「ううん」

「それじゃ、いこっか」

「あ、でもこの人はどうなるの?」

 綾夏は、私が動きを封じた男の様子を指さしていた。

「うん? ああ、時間が来れば動けるよ。生きてられてるかは、精神力しだいだね」

「そっか」

 ルネサンス、それ以前にリベリオンやMBSに入った隊員達は敵を殺すことへの免疫が消えていく。勿論、私も。それは必然で当たり前のことなのかもしれない。でも私の友人が、いともたやすく、しかも一瞬で敵だとしてもなんの躊躇いなく攻撃する綾夏を見てると胸が痛くなってくる。

 でも、大丈夫だよね。

「どうしたの、未来?」

 あちゃ、ちょっと顔に出ちゃったかな。

「えへへ~、内緒」

 私は誤魔化すように笑みを浮かべて、皆が集合する予定の本殿へと向かった。



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