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燃えた夏  作者: Karyu
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第百七十九話 チルドレン掃討計画

 一橋由梨、清楚だが芯の強そうな刈谷の幼馴染。静香とはまた違ったオーラを纏ってるような感じがするな。目が見えないのか、それはきっと刈谷しか知らないんだろうな。

「それじゃ一橋由梨、説明してもらおうか」

 俺は一橋由梨と正面に位置する椅子に座りながら問いかけた。

「私のことは由梨で結構ですよ? 同年代なのですしそう堅苦しくなくてもいいんじゃないでしょうか?」

「そうだな。それじゃ一橋、説明してくれ」

「………まあ、いいでしょう。それでは中央の地図を見てください」

 一橋に促されるままテーブルの中央に視線を向ける。そこにはレンズが存在し、青白く発光してテーブルの中央高さ五センチほどの場所に日本地図が現れた。

「ハ、ハイテクですね」

 紅葉が口を丸く開ける。確かに、どんだけなんだよこのヘリ。

 ちなみに席順としては12時の方向、すなわちヘリの先頭側に一橋が座り、時計回りに綾夏、桃、青海、俺、静香、刈谷の順だ。テーブルが円形な分、全員の顔が見渡しやすい。

「地図が出ましたか?」

「ああ、出てるぜ」

 刈谷が一橋に答え、なぜか一橋は安堵したような笑みを浮かべそれを面白なさげな目で静香が一視する。ちょっと怖いぞ静香……。

「赤く点滅している部分がルネサンスの本部、青く点滅しているのが支部のはずですが間違いないでしょうか?」

 地図を見るとそこには確かにルネサンスの現状で存在する支部と本部の明確な存在位置が点滅していた。だが、これはっ!

「おいっ! どういうことだ?」

 俺の激にも少しも怖けずに一橋は順々と喋っていく。

「私は、というよりも私の父はルネサンスのスポンサーをつとめているからということで説明できますか?」

「なに?」

 一橋の言うとおり、一橋財閥がルネサンスを支援しているのであれば話は辻褄が合う。いくら政府機関のルネサンスでも国の支援だけでは立ち回らない。だから強力な影なるスポンサーが存在することは暗黙の常識だ。

「はい。こちらが資金協力をする代わりとしてルネサンス側からは情報を提供してもらっています」

「由梨の会社ってのはそんなにすごかったんだな」

「ええ、そうですよ」

「でもなんでスポンサーやってるの?」

 綾夏が質問する。それは確かに俺も思ったことでもある。

「それは日本の行く末を見守るためだと父が言ってましたね」

「見守るか……高見の見物ってとこか?」

 多少の皮肉を込めて言うが、一橋は何も動じずに

「そうなりますね」

 と微笑しながら言ってのけた。

「それでは話を戻しましょう。私が得た情報によればルネサンス側の世界に散布されたチルドレンの情報は多大なものであり、文字通り世界中を叫喚させました。悪い意味でも良い意味でもです。でもルネサンス側からしてみれば今まで秘密にしてきたトップシークレットが漏洩してしまったという失態を考慮した結果、チルドレンをすべて世界から抹消するという結論に達したのです」

「なっ!?」

「そんなっ!」

「え!?」

「そんなことが……」

「嘘だろっ!? おいっ!?」

「うそ……」

 それでチルドレンの半数はすでに殺されたってことか? ふざけてやがる、なんだってこんなことを。

「でもチルドレンも大人しく殺されるだけではないのでしょう? 私達にはそれだけの能力があるはずです」

 冷静な解析力で静香がそう進言する。

「はい。確かにチルドレン個々の能力を持ってすれば易々と殺されることはありません。ですがルネサンス側は対チルドレン用の兵器を開発していました。先程の戦闘にも使われていたものです」

「あ、あれが……」

 紅葉が顔を俯かせる。

 確かにあの銃弾には俺たちの能力を無効化させる作用があった。でも、だとしたら。

「そうだね、ルネサンス……もしかしたらMBSのときからすでに対チルドレン用の兵器開発は始まっていたのかもしれないってことだよね」

 桃が俺の疑問を読み取り、最も最悪な推測を宣言する。

「そうです。つまり今回青海さんがなされた行為に関係なく、ルネサンスはいずれチルドレンを掃討する計画を実行する機会を窺っていたということになります」

「そんなっ!」

 綾夏が立ち上がる。口が震えているところを見ると恐ろしいのだろう。俺も未だ信じられない、だが受け入れるしかない。だとしたらやることは一つしかない。

「一体誰がそんなことをしてるんだ?」

 一橋に顔を向ける。一橋は盲目のわりには第六感が発達しているようで気配に敏感なのだろう、閉ざされた目を俺に向けて答える。

「それは元鳥取MBS総司令のカゲフミです」

「なっ!?」

「そうです。今回の黒幕それはすべてカゲフミにあります。私が使える力すべてを行使しその事実まで辿りつくことができました」

「そんな、親父が?」

 一瞬脳内がショートしたように働かなくなった。カゲフミの親父が、黒幕だと?

「受け入れがたいのはわかります。特に流騎さん、あなたはカゲフミの養子だったようですしね。ですが事実です。すべてが事実なのです」

 一橋は凜とした態度でそう告げる。だが続けられて発せられた言葉のほうが俺にとっては驚愕極まりないものとなった。

「更に続けます。ルネサンスの極秘情報によりますと十二年前の国内でのゲリラ戦争の時、萱場義流と刈谷大地という隊員の二人が行方不明となっています」

「なっ!?」

「何!?」

 俺と刈谷の声が重なる。

「お二人の行方はさすがのルネサンスでも把握してはおりません。ですが記録には秀くんと流騎さん、二人は生まれており、流騎さんの母親については私でもびっくりする真相が発覚しました」

「それは、なんだ?」

 今まで隠されてきた真相が一橋の口により解禁されていく。それは聞くに堪えず、辛いが俺は俺たちは知らなければならない。例え、どんな未来が待っていようとも。

「はい。萱場義流の妻、つまり流騎さんの母親は水のオリジナル流水香であることが記録されていたのです」

「な、んだ、と?」

 流水香が俺の母親……? 流水香が?

「そんな馬鹿な」

 思考が定まらない。だが言葉は漏れる。信じたくはないが事実として受けいらなければならない。その対処の仕方を脳がうまく掌握しきれていない。

「だったら俺は……俺は………」

「流騎、駄目、それを言っちゃ駄目!」

 桃が俺の震える体に抱きつき、俺の口を押さえこむよう俺の頭を抱きかかえようとするが間に合わなかった。

「俺は、俺は母さんを、この手で……殺したのか………?」

 自然と自分の手を見やる。

 俺の手は見えない血によって染まり、寒さを覚えたかのように小刻みな震えを繰り返していた。



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