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燃えた夏  作者: Karyu
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第百七十八話 運命の再会


「な、何があった!?」

 隊長を最初狙っていた一般隊員のリーダー格が驚愕の表情でトランシーバーを通して現状把握を行おうとしています。ですがあの爆発では生き残りはいないでしょう。

 隊長と秀明は爆発による混乱に乗じて一般兵を倒していきます。

 私はエイン・シャッテンで流れ弾を守り抜きます。数秒もしないうちに勝負は決していました。

 しかし、私達チルドレンの能力を無効化にする物が開発されているとは……私達はかなり以前より殲滅させられる運命にあったということでしょうか?

 ですが今重要視する点は誰がヘリコプターを撃ち落してくれたかです。向こうの出方によっては敵にもなりえます。

 隊長と秀明は再度私達と万里の長城の入り口付近で合流しました。

「なんだったんだ、今のは?」

「わかんねぇな………敵か、味方か?」

 隊長がヒエロ・ランスを解き、秀明は土塊を解除します。

「あ、あれっ!」

 綾夏さんが上空を指差します。皆さんして頭上を見上げると空には巨大なヘリコプターが旋回していました。

「おいおい、なんだよありゃ」

「お、大きいですっ」

 青海さんが感嘆の声をあげています。なんだかひよこみたいですね。それはさておき、確かに大きいです。なんというのでしょうか、軍用ヘリ並みの大きさで黒く塗られたボディが陽光を鈍く照らし出しています。

 徐々に高度を下げてきたヘリコプターは粉塵を巻き上げ地面に着地しました。ヘリコプターのプロペラにより生み出される荒れ狂う風は中々治まりませんでした。

「一橋財閥?」

 私はヘリコプターに付いていたエンブレムに描かれていた文字を読み上げます。即座に秀明が声を荒げました。

「一橋だと!?」

 秀明が私の肩を揺さぶります。

「ひ、秀明、ちょ、ちょっと!」

「本当に一橋なんだなっ!?」

「は、はい」

 や、止めてください秀明、視界がぶれます。

 私の肩に乗る秀明の手に一層力が込められます。

 ヘリコプターの扉が開かれます。私達一同はただそれを見守ることしかできませんでした。それでも攻撃態勢は解除しません。

 ゆっくりと開かれた扉の奥には車椅子に座る一人の同年代の少女がいました。

 端整な顔立ちにさらさらとした黒髪は微風に揺れ、彼女は白いガーデガンに黄緑のロングスカートを着ています。

「はじめまして、ルネサンスチルドレンの皆さん」

 車椅子の少女はそう言い、ヘリコプターから降りてきます。彼女の後ろには一人の長身の男性がMBS用のスーツを着ています。彼女は目が見えないのか両目が閉ざされたままです。

 この二人は一体?

 一方の秀明は戸惑いながら微妙な表情でその少女を見つめています。

「あんたは誰だ?」

 隊長がヒエロ・ランスを車椅子の少女に向けて聞きます。車椅子を引いている男性が少女の前に出て日本刀を抜き出します。

「大丈夫です、三鬼嘉」

「わかった」

 三鬼嘉と言う男性は一歩後ろへと下がり武器を鞘に納めます。

「こんにちは、私達はあなたたちを助けに参りました」

「助けにだと?」

「はい、ただいま日本ではチルドレン一掃作戦が実行され、今までで約半数のチルドレンが殺されました」

「なっ!?」

「なに?」

「えっ!?」

「そんな!」

「!」

「うそっ!?」

 車椅子の少女は何を言っているのでしょうか? 

「先程あなた方を襲って来たルネサンスの隊員は本物です。言うならば、あなた達はオリジナル討伐を任されて用済みとなったという訳です」

「そ、そんなっ!?」

 綾夏さんが私達を代弁するように叫びます。

「私もこうは言いたくはありませんが事実です」

 少女が告げます。隊長は冷めた目で少女を見据え、

「だからお前は何者なんだ? 部外者にしては情報を知りすぎじゃないか?」

「そう、ですね。私は一橋由梨。一橋財閥と言えばおわかりだとおもいますが?」

「やっぱり、由梨! 由梨なのかっ!?」

 少女が自身のことを由梨と名乗り、その時点で秀明が前に駆け寄ります。

「秀くん? 秀くんなの?」

 一橋由梨も秀明に顔を上げ、宙を彷徨う手で秀明のスーツを掴みます。

「由梨、目が見えないのか?」

「はい……。でも本当に秀くんなんだね」

 一縷の涙が一橋由梨の頬を伝います。

「由梨」

 私は一橋由梨が秀明を抱いているところを面白なさげに見ます。秀明は手を一橋由梨の腰辺りでぶらつかせています。ここで一橋由梨を抱こうものなら許しません。

「由梨」

 秀明は一橋由梨の肩に手を置き、離します。

「由梨、それより状況を詳しく聞いていいか?」

「ああ、うん。そうだね。それでは皆さんどうぞヘリの中へどうぞ」

 一橋由梨は車椅子に秀明によって戻されました。どうやら歩けなくはないみたいです。私達七人は一橋由梨の後に続きヘリコプターの中へと先導されました。

 一橋由梨の乗る車椅子は電動らしく、ヘリコプターの中に乗り込みます。三鬼嘉は未来さんを担いで私達を促します。

 中は広く、というよりもヘリコプターという次元ではない広さと優美さが施されていました。

「すごい」

「す、すごいです……」

 綾夏さんと青海さんが感嘆の声を漏らしています。

「ですが皆さんも名の知れた方々だと聞き及んでおりますが」

「で、でも自分専用のヘリはないよ」

 綾夏さんは感心した声を出しながらヘリの中を探索します。

「わ、私も父親のには乗ったことはありますが自分のはなかったです」

 三鬼嘉は未来さんを簡易ベッドに下ろし、毛布をかけているのが視界に映りました。

 私は一応自分のヘリコプターがあるので一言しません。

「それにしてもでかいヘリだな……」

 隊長もきょろきょろと見物しています。

「それでは皆さん席にお座りください」

 一橋由梨は手馴れた動作で車椅子を動かして、ヘリコプターの中央テーブルにつきます。

 私達も倣って順々に席につきます。

 ヘリコプターの高度が徐徐にあがっていくのがわかります。

 彼女から告げられた真相は驚愕するものでした。



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