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燃えた夏  作者: Karyu
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第百七十四話 森羅万象、それは宇宙の理


「はぁ、はぁ。つ、着いた?」

 軽く息を切らしながらも、私は開けた場所に出た。

「おや、案外早かったね」

 森のオリジナル森羅が振り返る。彼は巨大な石版の前で腕組みをして熟考していたみたいでまだ疑問府を顔に浮かべていました。

「ねぇ、君。この万里の長城がなんで作られたか知ってる?」

「え?」

「この建造物はね、秦の始皇帝が北からの異民族の侵略を防ぐためにできたんだ。そう歴史の教科書には書いてあるね。でも実際にはそれだけじゃなかったんだ」

「え?」

 同じ疑問を繰り返す。彼は何を言っているの?

「この万里の長城の下にはね、世界を混沌へと導く怪物が眠っているんだ」

 子供が欲しかったおもちゃを買ってもらえたときのような幼い嬉しい笑みを浮かべながら説明する。

「……っ!?」

「そう秦の始皇帝は自分の国とともに世界を守ったんだよ」

「あなたは何がしたいの?」

 森羅の言うことを予測できても一縷の希望を信じて訊ねる。

「僕はこの怪物を起こして世界をめちゃくちゃにしたいんだよ」

「っ!? や、やらせない」

 私は森羅を睨んで目を据える。

「君が? 笑わせてくれるね」

 森羅は今日皆提げに答え、石版へと振り返る。私のことなど眼中にないように腕を組みながら石版と睨み合いをする森羅は本当に子供みたいだ。

「やっぱり古代中国語は読みづらいな~」

 私じゃ森羅を倒せない? そう直感が伝えてくる。でもやるしかないっ!

「わが拳よ、炎となりて我が弓矢となれ! ファイアーアロー!」

 でも私のファイアーアローは森羅に届く手前で消失しちゃった。

「うるさいなー、静かにしててよ」

 森羅の片手一振りでファイアーアローが霧散されてしまう。つ、強い。でも私が森羅を倒す。

「フレイムレイピア!」

 右手に出したフレイムレイピアで森羅に駆け寄り、剣先を引いて突き出す。

「うるさいって言ってるじゃんっ!」

 森羅の腕から延びた植物の蔓が私を後方へ弾き飛ばされた。

「うっ……!」

「あーあ、もう面倒だから殺してあげるよ。黙っとけば見逃してあげても良かったのにな~」

 森羅の両腕にさっきの蔓が絡み付いて大木のように大きくなる。

「バーム・ド・クープ」

 森羅の巨腕から蔓が伸びる。鞭のようにしなやかな蔓が私を襲撃する。

「くっ!」

 なんとかフレイムレイピアで弾き返すも私は直撃を喰らう。

「もう終わりにしようか」

 森羅が両手を合わせて一斉に蔓が四方八方に解き放たれる。私の目の前には無数の蔓が自我を持ったようにくねくねと動きながら私を狙っている。

「もう一度チャンスをあげようか? 君が大人しくしてるんだったら僕は攻撃を行わないけど動こうとするなら次の瞬間串刺しだよ?」

 子供が浮かべる無垢の笑みをする森羅はでも口では恐ろしいことを言ってのける。

「私はあなたを倒します」

「あ、そっ。じゃあね」

 森羅が一瞬つまらなさそうな表情に一変して背中を向ける。そしてそれを合図にしてか、部屋中に分散されていた蔓が私へと一直線に迫る。

「火星の神マーズよ、我に御加護を与えたまえフューゴ・ペール!」

 一瞬にして私の周りを炎が包み込む。森羅の蔓がこの壁を抜けてこないということは燃え尽きたということ。私は自分の残像を影として残してフューゴ・ペールから抜け出して森羅に奇襲をかけようとする。

 でも見破られてたみたい。

「ほらっ!」

 森羅の腕にまとわりついた蔓が私の胸を強打して私はフューゴ・ペールの中へと戻される。

「そんな単純な技で僕に敵うわけないじゃん。他のオリジナルが弱かったのは僕があいつらの力を全部奪い取ったから。それでもチルドレンに勝てるぐらいの余力は残しておいてあげたのに……弱くて嫌になっちゃうよ」

「っ……!?」

 胸への強打は私の肺にまで達して私は暫く息ができなくなった。

「あれ? もしかしてさっきので死んじゃった? まあそんなわけないよね」

 満面の笑みを浮かべたまま森羅は両腕の蔓を巻き戻してまた放った。今度はフューゴ・ペールに拒まれることなく飛来した蔓が床に転がった私を容赦なく叩きのめしていく。

「うっ! 炎竜!!」

 私を包み込むように現れた炎竜はその顎で蔓を噛み砕き、炎を吹いて森羅を威嚇する。

「へぇ、そこまでまだ元気があるんだね。君、少しは強そうだ」

 森羅の目つきがちょっとだけだけど変わる。

「炎竜、お願い」

 答えるように炎竜は咆哮をあげて、炎を纏った竜は森羅に突進していく。その間に私は両手を弓矢を射るように構える。

「我が右手に宿りし不死鳥よ飛び立て、火の鳥・火焔・鳳凰の火舞矢!!」

 放たれた火の弓は徐徐に焔を空気を裂くごとに纏って、鳳凰の形となって飛来していく。私の渾身の連携技は次の瞬間、一蹴された。

「!?」

「ふ~ん。これはまともに喰らったら僕でも危ないかな」

 森羅の蔓が彼を覆いこむようにして球体を作り出し私の攻撃を防いだ。

「そ、そんな……」

「知ってた? 植物ってのはね防火にも防風にもとても適してるんだ。ただ植物が火に弱い理由はね他のものとちがって酸素がたくさんあるからなんだ」

 ゆったりとした口調で喋る森羅は一歩一歩私の方へとちかづいてくる。私は相手を見据え続け次の手を考える。でも通用するのかな? 

「だったらその酸素に水素を加えてあげれば防火に適して逆に酸素を増やすと硬くなる。面白いよね」

 森羅の左腕が振り上げられそれに呼応するように蔓が歪曲を成して私を狙う。

「火拳!」

 私はそれを右拳で殴る。

バチン!

 重い衝撃が私を襲う。でもなんとか防ぎきれた。そのまま私は蔓を掴んで引く。でも森羅は動かず、蔓だけが伸ばされる。でもそれが狙い! 

「はぁっ!!」

 私の火拳は炎の勢いを増して、私はそれで森羅の蔓を燃やしていく。炎は一気に燃えつたわって、森羅は左腕の蔓を捨てて後ろへと下がる。

「やけどするところだったじゃん」

「倒すっていったでしょ」

「ふーん。じゃあ終わりにしようか。今度は本気で」

 私も集中する。どんな技がきても防ぎきってみせる。

「森羅万象ってしってるかな? 宇宙の理はね絶対で、偉大なんだよ。じゃあね炎蹄のチルドレン。ビッグ・バン」

 突如、森羅の正面に赤黒い異空間が出現した。あたりの空気は捻れ、熱も冷気をも奪い去っていく。そして物凄い質量の小宇宙が私を一瞬にして取り込んだ。

 私の意識は無限の彼方へと飛ばされていった。



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