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燃えた夏  作者: Karyu
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第百六十七話 雷電の激双、交わることなき思考

 私達六人は流騎に流水香のことを任せて万里の長城の中へと突入した。長城の中は奥に続いていて後から点けられたであろう松明が続く石造りの廊下をぼやく照らしていた。

「流騎くん大丈夫かな?」

 走りながら、綾夏ちゃんが私の隣で心配の声を呟き、静香が即座に答える。

「隊長は大丈夫です。あの人はこんなことで死ぬようなフヌケではありませんから」

「結構きついこと言うな静香……ま、同感だな」

 呆れつつも秀明君が静香に同意する。私も同感。だって流騎が死んじゃったらお話終わりだもんね。え? 誰に話してるかって? そんなことは今どうでもいいじゃん。

 青海ちゃんには今日私は始めて会うんだけどどうやら皆となじめているみたい。でも人見知りタイプのようで私からは距離を取っている。それも未来ちゃんのすぐ傍にいる。

 私は走る速度を少し落として青海ちゃんの隣まで寄った。

「青海ちゃん」

「は、はい!?」

「桃と会うのは始めてだよね?」

「は、はい……」

 青海ちゃんは肩を狭めて余計に縮こまっちゃった。本当、最初から思ってたけどハムスターみたいな小動物系だよね~。

「じゃあ、これからよろしくね。桃のことは桃って呼んじゃってくれて問題ないから」

「は、はい、わかりました桃さん」

「ん~硬いけどまあいいかなー」

 私達六人は延々と続く廊下を走った。それきり口を閉じていた青海ちゃんが私を見上げて尋ねにくそうに聞いてくる。

「桃さんは私のことをどうも思っていないのですか?」

「ん、なんで?」

「だって私は皆さんのことを……」

 私は青海ちゃんの言わんとしていることを察知する。この能力はやっぱり友達の間では使いたくない……でも、私には解除できない理由がある。

「じゃあなんで青海ちゃんはここにいるの?」

「え?」

 青海ちゃんの顔が陰る。あ、違う意味で受け取っちゃったのかな。

「ここに青海ちゃんがいるってことは私たちはなんとも思ってないってことだよ」

「本当ですか?」

「うん、そうだよ~」

 恥ずかしそうに照れて笑みを浮かべる青海ちゃんは抱きしめたくなるほどかわいいけど不謹慎だよね。

 そのまま走り続けていると私達は多少開けた場所へと辿り着いた。

「ん、ここか?」

「いえ、どうやら違うようですね」

 静香が戦闘態勢に入って、未来ちゃんが前に出る。

「幾万の守護星よ、私を隔壁せよ。バーテェスタン!」

 私達の目前に透明な青色をした大小様々な星が現れる。そして次の瞬間、無数の電気の帯が飛来して未来ちゃんの星の結界に遮られる。

 バチバチとまだ音を残しながら消えていく光、電気の筋の為、今いる場所の全体図が見て取れた。正立方形の部屋の奥にはまた一つ廊下が存在し、そこを遮るように一人の男が立っている。

「楼雷!」

 私と未来ちゃんの声が重なる。

「よぉ、林果桃と西園寺未来じゃねぇか。ん? どうした?? 俺と会うのが言葉にならねぇぐらい嬉しいのか?」

 獰猛な笑みを刻む楼雷の顔には狂喜と獰猛さが見て取れた。

 私達の緊張が高まる。でもここで立ち止まるわけにはいかない。

「ねぇみんな。ここは桃に任せてくれないかな?」

「ですが桃っ―――」

「いいの静香。あの人は、桃が倒さなきゃいけないの」

「私も残る。楼雷には私も借りがあるからね」

 未来ちゃんが私の隣に歩み出る。

「駄目だよ未来ちゃん。オリジナルはまだ六人もいるんだよ? ここで二人残っちゃったら不利になるだけだよ」

「でも二人で掛かればすぐ決着が……」

 未来ちゃんも楼雷を倒したいみたい。未来ちゃんの頭の中では過去が葛藤していて楼雷への怒りが露となってきている。でも、ごめんね。

「未来ちゃん……お願い」

 私の言葉の意味を解ってくれたのか、未来ちゃんは黙ってもう一度視線を楼雷に向けてから頷いた。

「それじゃ静香、お願い」

「ええ。頑張ってくださいね桃」

「まっかせときなさーい」

 私は胸を反って胸に拳を掲げる。

「よし、それじゃいくぞっ!」

 秀明君が先頭を切り、みんなは縦一列に楼雷の後ろに続く廊下目指して走っていく。向かいでは楼雷が声をあげる。

「はっはー、俺のことを抜こうってのか? いい度胸だなてめぇら!! 全員黒焦げにしてやるぜっ!」

 みんなは動じることなく各々に補助技を駆使して楼雷の横を無事に抜けていった。さすがの楼雷もチルドレン5人相手には手が出なかったみたい。でも彼が本気じゃないことをわかっている。

「あーあ、抜けられちまったなー。まぁいいぜ、てめぇが残ってるからな。林果桃」

「でも桃はあなたに負ける気はさらさらないよ~」

「ふん、相変わらず嫌な喋り方するぜてめぇはよ」

「それじゃ桃もあなたを倒してみんなの後を追わなきゃねー」

「勝てれるもんなら勝ってみせな」

 私は目を細めて腰のホルスターから二つのエレキガンを取り出す。

「電雷丸」

 私の右手に電子分解、そして構成された電雷丸が握られていた。

「へぇ、日本刀か……。いっちょまえにカッコいいことしてくれるじゃねぇか。ならいくぜっ!」

 楼雷の先頭スタイルは拳闘。両手に大量の電気が生み出され相手は触れる前に感電し絶命する。

「はっはー!!」

 繰り出される楼雷の拳を私は電雷丸で受け止めて斬り返す。楼雷も両手を使って私の斬撃を払いのける。

「強くなってんじゃねぇか! 嬉しいぜ、林果桃!!」

「あなたは桃が倒す!!」

 私がオリジナルである楼雷と対等戦える理由は元より私に司られた能力。人の顔を見るだけで相手の思考を読み取る能力……それは私がチルドレンになったことで余計に強まった。

 まだまだ余裕の表情を浮かべている楼雷はまだ本気を出していないということになる。それは私も同じなんだけど。

「決着をつけるとするかっ! 強羅春電の弦、白雷蒼弓!」

 それは綾夏ちゃんのファイアーアローよろしく、楼雷の右手には弓が、左手に電気を帯びた矢が出現してその矢先は私に向けられる。

「雷電丸、三の太刀」

 私は雷電丸を懐まで引いて刃を天井に並行するように構える。

「はっはー!」

 放たれた矢は光の速度で私に迫る。でも元から軌道を知ることのできる私は左に一歩避けて楼雷向かって駆ける。

 楼雷は眉を顰める。楼雷は私のこの能力のことは知らない。だから最後の最後で私には分があると思う。私が突きの形で楼雷の胸元へと電雷丸目掛けて延ばしたら楼雷は余裕の笑みで私の攻撃を受けた……。



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