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燃えた夏  作者: Karyu
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第百六十一話 人ならざるものども―unhumanbeings


 こ、これは俗に言う絶対絶命という状況なのでは……?

 私は今、刈谷さんと静香さんに密着しています。静香さんの技であるブラインドは、確か相手から私たちの姿を隠す技であったはずなのですが……。

 見事に敵さんに囲まれてしまいました。

 静香さんは状況を静観して落ち着き払っています。さすがです……。私なんて心も体も震えているのに。

 刈谷さんが静香さんに目配りをして、静香さんはそれを察知したのかブラインドを解きました。

「なんで分かった?」

 刈谷さんは顔付けをしながら、私たちを囲っている兵士たちの隊長格であるらしき人に喋っています。

「お前たちのデータはこちらの方で検証済みだ。シズカの使うブラインドには一つの弱点あり。それは、熱は発するということだ」

 微かに、静香さんの背中が一瞬震えたのがわかりました。

 私はどうしようかと迷っている間に、すでに静香さんと刈谷さんは動いていました。

「おめぇたちがどんなもんかはしらねぇけどな、死んでもらうのが一番だ。いくぞ、静香」

「はい」

 わ、私は……? い、いえ、ここは静香さんみたくクールに静観させていただきましょう! 今後の勉強のために! 

「ヤマタノオロチ!」

「シャドークロー!」

 私の目の前で、刈谷さんの背後からは石の八岐大蛇が、静香さんの影から無数の鈎爪が現れて兵士さんたちを片っ端から倒していきました。

 す、すごいです!

 敵は銃で応戦しようとしたのですが、その前にお二人の攻撃で辺りは制圧完了してしました。

「す、すごかったです!」

「ん? こんなのは朝飯前さ。それよりもとっとと行くぞ!」

「ええ。行きますよ、青海さん!」

「は、はい!」

 私は刈谷さんと静香さんの後を追いながら、行き先の指示を恐縮ながらに声を大きくして発しました。

「そこの角を右です!」

 私たちは後ろから追いかけてくる足音を聞きながら全速力で通路を駆けました。もうすぐでコントロール・監視ルームに着くはずです。

 しかし、それは淡い期待でした。なぜなら、目的地の部屋の前にも兵士さんが警備にあたっていて、追いかけてきた人たちも尋常ではなかったのです。

 なぜなら、追いかけてきた兵士が全員さっき倒した人たちだったからです。

「なっ!?」

「これは、厄介ですね」

「し、静香さん。そ、そんな冷静に……」

「我々は死ぬことはない」

 隊長格の兵士がそう口を開きながら話していましたが、もうすでに顔はなくなり金属の破片などが露骨に現れていました。

「へぇ、サイボーグの類かよ。気味わりぃもん作るな、ビワって奴はよ」

「そうですね。ですがこれで心置きなく戦えますね」

「す、す、すごいですね」

 私は精巧な作りが施されていたサイボーグ兵士たちの姿を見て話していました。

「そうだな。一つぐらい確保しとくか?」

「本部に送るのですか?」

「ただ単に俺が興味ある」

「刈谷さんは工学が好きなのですか?」

「ああ。紅葉さん、俺はああいうの見ると弄りたくなるんだよ」

「そうなのですか」

「秀明、そろそろ無駄話は切り上げましょう」

「へっ、悪かったな無駄話で」

刈谷さんはそう言いながら、

「大地の拳、土塊!」

 刈谷さんが敵陣の中へと駆け出し、私と静香さんはコントロール・監視ルームで警備にあたっている兵士と対峙することとなりました。

 後ろからは機械が硬いもので殴られたような無機質な音が鳴っています。多分、いえきっと刈谷さんなら大丈夫です。

「静香さん……」

「ええ。それでは私が敵の動きを止めますので、青海さんは相手を行動不能にしてください。それでは、行きますよ!」

「はい!」

ダダダダダダダダダ!!

 前方の兵士は機械的でもスムーズな動作でガトリング銃を連射しはじめました。私と静香さんは左右に分かれて、銃弾を避けて技を詠唱しはじめた。

「惑わしのフローラ!」

 静香さんの手中から無数の黒い花弁(はなびら)が舞い、視界は一気に黒くなりました。私はその中央を走りながら両手を左右に伸ばして提唱しました。

「氷水・止水・凍結・氷刀・水鉛。両手に宿りし氷人よ、鋭塊氷郡刀!」

 私の両手を分厚い鋭利な氷の刃が現れて、私が疾走している間に両手からは何か硬いものを壊す音と感触が伝わってきました。

 視界が晴れて、床に積もった黒色の花弁の上に二つに切断されたサイボーグが火花を散らしているのが目に見えました。

「これでいいのですか?」

「はい、完璧です。素晴らしいですね」

「い、いえ……そ、そんなには」

「いえ、チルドレンになって一ヶ月も経たないのにここまでできるのは素質があるという証拠ですから」

「あ、ありがとうございます。か、刈谷さんは!?」

 私は急いで後ろを振り向くと、そこには砕け散った機械の破片を足で踏み潰す刈谷さんの姿がありました。

「こっちは終わったぜ。それにしても、こいつらかてぇな……」

「そうなのですか?」

「ああ、土塊も少し削れた。通りで最初の時、必死の攻撃加えても威力がそこそこだった訳が判ったぜ。でもすげぇな、ブラックテクノロジーーの宝庫だ」

「そうですか。ですが、今は先を急ぎましょう」

「そうですね」

「も、もう行くのか? もうちょっと、いても……」

「いえ、行きます」

「静香、ちょっと待てよ!」

「待ちません」

「あ、静香さん」

 私は先に行く静香さんの後を追って、刈谷さんも渋々ながらもついてきました。まるで緊張感がないのは、どういうことなのでしょうか? そ、それともこれが普通っ!?

 コントロール・監視ルームの扉を開けるとそこにも複数の兵士がモニターを確認していました。

 私は身構えましたが、それより先に刈谷さんが部屋に疾走し、3秒にも満たない内に制圧が完了しました。

 お早いです……。

 そして、私は部屋の中に取り付けられた監視カメラのモニターを見て唖然としました。

 この部屋があったことは知っていたのですが、初めて入ったからです。驚いたのは、監視モニターが私の部屋にも設置されていたということです。ということは、私のあんなことやこんなことが全部っ!?

 急に頬が紅潮して、私は羞恥に飲み込まれかけていました。

 しかし、私の隣にいた静香さんはある一つのモニターを眺めて、眉間に皺を寄せていました。といってもそのお姿は凛々しいといった表情で……はっ、今はそんなことではありませんでした。

 なぜならそのモニターには綾夏さん、流騎さん、それに未来さんが坂城ともう一人の女性の方と対峙していたからです。

 女性の方は流水香さんでした。



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