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燃えた夏  作者: Karyu
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第百五十三話 結束する六人―six to be along


 一体全体どう話を転がしたら紅葉さん自身がルネサンスへ入りたいなんて言い出すんだ?


 なんてことを紅葉さんとハヤブサ総司令の会話を聞いてるうちに答えは出た。


 ぜってぇに勝つっていきこんだのにものの見事に静香に先を越されていた。


「マジかよ……」


 俺は静香のいつも正しく伸びた背中を眺めながら、自分の敗北に気付かされた。


 でも、どうやらそれは俺以外の三人にも言えることみたいだ。


 萱場は眉間に皺を寄せて、それを右手の指で摘み、西園寺さんは未だに状況が理解できないのかさっきまでつくっていた笑顔を硬直させて紅葉さんの背中を凝視し、木宮さんは少しブルーな表情で紅葉さんと静香のことを交互に見比べていた。


「はぁ……一体どんな手使ったんだよ……」


 そう俺が漏らすと、どうやら紅葉さん、ハヤブサ総司令、それと静香の話し合いが終わったのか、紅葉さんは和気藹々とした可愛らしい笑顔を緊張しながら全員に向けていた。


「というわけで、皆さん! きょ、今日からよろしくお願いいたします!!」


 ホントに紅葉さんは小動物系だよな。俺のタイプだが、静香の前ではこんなにやけ顔をするわけにもいかねぇ……。


「ああ、よろしく紅葉さん。俺はカリヤ。刈谷秀明」


 俺はソファから立ち上がって紅葉さんに手を差し伸べた。それを少しの間見ていた紅葉さんはお約束どおり、はっ! とした表情で俺の手をとってくれた。


「わ、私の方こそ、よ、よろしくお願いいたします!」


 うわ、マジでやべぇ……。


「紅葉さんは元気だな」

「はいっ! それだけがとりえですから」

「そっか」


 俺と紅葉さんの会話を少し、恨めしい双眸で眺めていた静香の視線がこのときばかりと痛かった。


「ふぅ……。はあ、ま、なにはともあれチルドレンが増えることはありがたいんだがな」


 背伸びをしながら立ち上がった萱場も、俺同様に立ち上がって自己紹介しはじめた。


「俺はシルキ。萱場流騎だ。スペクタクルで水と風を使う」


 萱場の名前を聞くや否や、紅葉さんは顔に稲妻が走ったように硬直した。


 多少唇と膝を震わせながらも、紅葉さんは平静を装い、


「よろしく、おねがいします」


 と弱弱しく言った。


 怖がってんのはバレバレだけどな……。そして萱場はそんな態度を取られたことが少しなりにもショックみたいだな。


 それで今度は西園寺さんが立ち上がり、それを察知した紅葉さんの肩は一瞬ビクッと震えた。


「紅葉ちゃん」


 西園寺さんがそういうと、紅葉さんは警戒心オーラ丸出しだった。


「な、なんですか?」

「さっきは驚かしちゃってごめんね~。私はミキ。西園寺未来。よろしくね~」


 西園寺さんが自己紹介を済ませるのと共に木宮さんも立ち上がって名乗り出た。


「えっと、私はアヤカ。木宮綾夏、クラス委員長をやってます。青海ちゃん、よろしくね」

「は、はい! 私のほうこそよろしくお願いします!」


 紅葉さんは頭をぺこぺこと三回往復しながら上げ下げした。


 やっぱ、小動物系キャラ健在だよな………。


 俺はそう思いながらも、一つの疑問が俺の頭を過ぎった。


「で? どうするんだ……?」


 俺は紅葉さんを見つめながら視線を背後へと回し、ハヤブサ総司令の方へと向けた。


「む?」


 萱場も俺と同じように視線をハヤブサ総司令へと向けながら、


「ああ、手続きとかはどうするんだ? 紅葉の親はたしか総理だけだったろ。このまま合宿に入っても良いのか?」

「あ、ああ。それで構わない。よろしいですか、紅葉殿?」

「は、はい! なにからなにまですみません」

「いえ! 私にできることはこれぐらいですのでっ」


 なんか、すげぇ腰低いよな総司令。昔、紅葉さんとなんかあったのか?


 何はともあれ、無事に? 紅葉さんはルネサンス、第二広島ルネサンス支部「スペース」配属が決まった。


「それではお前達、紅葉殿を頼むぞ」

「「はい」」

「よろしくお願いします!」


 なんか、立場が逆っぽく感じんのは俺だけか? ま、いいか。そこでハヤブサ総司令からの通信は途絶えた。


「よし、じゃ、パーティしようぜ、パーティ。歓迎パーティと再会パーティしようぜ」

「お、いいな刈谷。じゃ、早速放課後いくか」

「いこーいこー」

「いいですね」

「青海ちゃん、それでいいかな?」

「は、はい!」

「よし、決まりだな。じゃ、昼も終わるし教室戻るか」


 俺はそういって、早々にスペースから出て行こうとして、他の五人も小話をしながら出て行こうとしたら地震が起きた。


 ガガガガガガガガガガガガガガガッ!!


「「!?」」


 俺たち六人は咄嗟に地面に伏して、地震が病むまでその体勢を保った。


 スペースは学校の二階にあるのだが、地震対策も施されていて、大きな家具などは金具で固定されているため上から物が落ちたり移動したりすることが無い。


 それ以前に学校自体が地震対策が万全であるため今感じている震度はそれほど高いものではないはずなんだがこれは……!


 地震が収まり始め、俺はすかさず立ち上がり、


「大丈夫か!?」


 俺は外の様子を確認するため、スペースの窓から様子を窺った。


「!? な、なんだありゃ!!」


 そう、俺が窓の外、この学校敷地内のグラウンドには巨大な生き物が地表を突き破って現れていた。


 萱場と静香も即座に立ち上がり、俺と同じようにその生き物を確認していた。


「神龍虎獣!?」

「静香、その神龍虎獣ってのはなんだ?」


 俺はその巨大な生き物、高さ5m、全長20mものを観察しながら静香に聞いた。


「はい、中国古来の叙述に記せられていた幻の生物です。虎の頭部と四肢、龍の躯と尾を有した神獣として祀られてきた生き物です」

「なんでそんなものが日本にいるんだ?」


 萱場の最もらしい判断を聞きながら、俺の額には一筋の冷たい汗が流れた。


 木宮さん、西園寺さん、紅葉さんも窓越しにこの獣を視界に捉え、特に紅葉さんの体は硬直していた。


「どうする?」

「とりあえず、目撃者を断ちます」


 静香はそう言い、早速自分の能力を始動した。


「偽りの闇よ、この光と同化し我を隠したまえ、ブラインド」


 静香が始動した力により、神龍虎獣は一旦俺たち以外からの視界からは消えた。しかしこれはあの化け物のいる空間を視覚から遮断しただけだ。


 つまり、あの化け物が静香が作った結界らしきものから出るとまた他の一般人の視界に現れることとなる。正確に言うと、今このスペース内とグラウンドは静香の技で見えない空間となって繋がっているのだ。


「よし、いくぞっ!」


 萱場はそう声を上げ、スペースの窓を開け放ち、二階から飛び降りていき俺も続いた。



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