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燃えた夏  作者: Karyu
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第百四十四話 若りし頃(三)


 義流の能力によって生み出される陣風が敵からの弾幕を吹き飛ばし、僕が敵に弾丸をあてていく。義流の卓越した繊細なコントロールで僕の撃つ弾丸は風の軌道に運ばれて百発百中の狙撃率を誇る。


 僕達二人の他にもたくさんの隊員が銃撃戦へと移行して、僕達みたいなチルドレンの能力のある隊員は各個独自でターゲット向かって駆けて行く。それにしては敵の数が微妙ではあるけれど少なく感じるのは僕だけなのだろうか? 国会を占領するぐらいなのだから少なくとも軍の三割は動員されてるはずなのに……。


 敵対する組織も僕達チルドレンに敵わないと知ってか一般隊員の方に専念して、僕達もターゲット討伐が最優先のため案外スムーズに移動することができた……かのように思った。


 でも、それが作戦だったらしい。国会議事堂に繋がる大通りを駆けていると前方に見たこともない巨大な大砲が二台配置されていた。


 大砲はそれぞれにコードが延びており、いかにも電子ビームをブッ飛ばしそうな恍惚で重鎮な黒一色でコーティングされていた。


 そして何の前触れもなしに大砲から閃光が放たれた。僕は咄嗟に、


「岩壁岩山!」


 能力を発動して僕と義流の前に地面のコンクリートから厚さ三メートルほどの壁を出現させて、その突如、巨大な破壊音と光によって僕の視界と聴覚は暫く麻痺した。


「だ、大丈夫、義流?」

「あ、ああ。助かったぜ」


 僕は義流の腕を取って立ち上がらせて背後に振り返って唖然とした。


「こ、これは……!」

「くっ、酷すぎる」


 そう、二台の砲台から発射された一線は敵味方構わず巻き込み、光線の進行上にあったものすべてを一瞬で掻き消していた。MBSの一般隊員や数々のチルドレン隊員も一瞬で閃光の中で消滅していた。敵兵士達の多くも無情にも殺されていた。道路には光に巻き込まれなかった体の一部が生生しく散らばっていた。


 僕の出した壁にも穴が貫通していて後数センチ違っていたら僕の頭は消失していたことだろう。


「大地、どうやら次の発射まで時間が掛かるらしい。一気に行くぞっ!」

「うん!」


 僕は両腕をコンクリートに沈ませて抜き出した。両腕は重厚な銃の形状で、手の辺りには巨大な銃口が見える。僕は急いで義流に続いて、義流の前を走る。


 僕達二人の連携はフォワード兼ディフェンスが僕の役割、義流は主に後方射撃と後方援護を担っている。


 その陣形で僕達は一気に砲台に疾走して通り抜ける。今これを破壊している余裕はない。僕達はいち早く任務を遂行しなければならない。


 国会の入り口までまだ百数メートル……数々の兵士達が僕達の進行を遮るように弾幕を張った。


「義流!」

「おうっ! 神風・風羅翁」


 義流の叫び声がすぐ後ろで聞こえ、迫る無数の銃弾が僕達を避けるように通り過ぎていく。そして僕の両手から飛び出すコンクリートの弾丸が吹き飛び、ぶつかると共に爆発する。その威力は膨大で十数人の兵士が頼りない防弾板とともに吹き飛ばされる。


 僕達は勢いを殺さずそのまま国会の中へと辿りついた。数々の兵士が後方に倒れ、僕達二人は支給されていた地図をもとにターゲット撃破へと向かう。


「大地」

「うん、わかってる……中の兵士の数が少なすぎる。見張り程度だけなんて、これじゃまるで………」

「ああ、外で起きようとしていることがここでも起きるってのか? だったら、急ぐぞっ!!」

「うん!」


 僕達二人は目的地に向かうため駆け急ごうとしたら突如として地震が発生した。


「うわっ……!」

「くっ!」


 地震は治まる事がなく、さらに激しさを増し始めた。僕は震動の大きさで歩くこともできなくなった。


「な、なにっ?」

「だ、大地、壁作れるか?」

「う、うんっ!」


 僕は咄嗟に揺れる地面に両手を浸ける。


「岩壁岩山!!」


 僕と義流を包むように出現したコンクリの殻は厚さ最大の七メートルに達している。


 そして轟音が僕達を包み込む。重厚なコンクリートがぶつかって砕ける音が鼓膜を鈍く震わせる。な、なにが起きてるんだっ?


 崩壊音が止み、僕と義流は岩壁岩山から出ようとした……。でも、あたりは暗く物音一つしない。


「閉じ込められたか……。どのくらいかわかるか?」

「うん。でも、そんなに多くはないみたいだね。だけど生身の人間が生存できる見込みゼロ程の量だね」

「一体全体どうなってるんだ?」

「わからないね。義流の予感があたったみたい」


 僕は声を低くして岩壁岩山の壁に手をあてる。そしてコンクリートを溶解させながら僕と義流は覆いかぶされた瓦礫から身を這い出した。



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