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燃えた夏  作者: Karyu
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第百四十三話 若りし頃(二)


 そして十年の年月が流れた。


 いきなり話がとぶかもしれないけど、でもこの十年僕と義流は平凡な任務をこなしていった。そして様々な新しいチルドレンの隊員が増えていったのを僕達二人は見守ってきた。そして数々のチルドレン隊員や一般隊員が命を落としていく現場にも数多く立ち会ってきた。


 僕達は今二十七になる。いい大人なんだろうね。でも僕の喋り方は直らないんだよね。いくら義流に注意されてもそればっかりはね。


 でもそんな僕達にも、いや、MBSにいるチルドレン達全員に大きな変革が訪れようとしていた。


 それは国が起こしたゲリラ戦争だった。国がゲリラを起こすなんてことはありえない……でも、今回ばかりは違ったんだ。


 僕達の国、日本はこの時ひどい政権態勢でぼろぼろだった。そこを狙った右翼と左翼が一緒に政府を乗っ取ったみたいだった。僕はそんなに政治については詳しくない。それを僕が考えもせずに上に任せていたからこの後酷いことになっちゃったんだろうな。


 でもこの戦争で僕と義流の運命が変わったのも事実だった。


 ゲリラ戦争、それは政権を奪われた首相が直々にMBSの上層部に話を持ってきたのが始まりだった。僕達隊員は何も知らされずに任務にいつもどおりに取り掛かった。僕達チルドレンにとってモンスターや人を倒さなきゃいけないのはいつものことで、なんの疑問も浮かばなかったんだ。


 でも義流は一人、浮かばれない表情をしていた。


「どうしたの義流?」


 僕は任務の時、着用を決められているスーツに身を通しながら隣の義流に聞いた。


「ん……ああ。今回の任務、腑に落ちなくてな」

「どうして? いつもの鎮圧任務じゃないの?」

「いや……それにしては情報が少ない。それに一番腑に落ちない点がある」

「何、それ?」

「依頼主がいるということだ」

「え、でもそんなこと書いてないよ」

「文面だけで解る。これは絶対上層部で何かあったな」

「でも、僕達は任務をこなすだけだよ」

「ああ、そうだな。俺たちにはそれしかできないからな」


 僕と義流は任務作戦時間が近付いていくたびに数々の隊員達と最終調整に追われるようになった。


 今回の任務は国会議事堂を占拠したとされる日本軍とそれを率いる右翼、左翼の代表討伐だ。確かにたくさんの隊員達がそれぞれに疑問を述べていたけれど任務となればMBSの決定をそこまで深く否定する隊員は義流以外にはいなかった。


 この任務に動員されたチルドレン隊員は今回最高で68人。一般隊員の数もしかりで230人に上った。僕がオリジナルになってから十年、チルドレンの数は日に日に上昇していった。そしてそれに伴うように政府特別枠に受かった一般隊員の人数も今や軍に匹敵する。MBSは全都道府県に組織の一端を配備しているけど、おおまかな本部は全部で六つある。


 僕と義流がMBSに入ってからの十年間、僕らは目撃情報が確認されたチルドレンの保護を主に行ってきた。でも今回の任務で大半の隊員が命を落とすことになるなんてことを僕も義流も知らなかった。そう、まだこの時点では知る由もなかったんだ。

















 僕達隊員はMBS手配の五つのヘリコプターに搭乗した。東京までの小一時間僕は義流と話そうと思ってたんだけど義流は寝ちゃってた。僕は仕方がないから今回の任務隊長と話すことにした。いくら僕と義流が最初のチルドレンだとしても年長者にはどうしても頭で負けちゃうからね。特に僕と義流は頭いいほうじゃなかったから。


「ビワさん、作戦変更とかはないんですよね?」

「うむ、ないな」


 五十の半ばはもう越しているだろうと思わせるビワ任務隊長は頭脳戦ではMBS生粋の切れ者として有名で殊にこういった大規模の任務では隊長を任せられている。僕は今回会うのが初めてなんだけどね。ビワ任務隊長は滋賀MBS本部の隊員で京都支部を任されているみたい。しかもグレード7だしね。


 僕はまだまだグレード4で義流はグレード6なんだよね。でも位が上がるたんびに色々とめんどそうだから僕はこのままでいいっかな。


 なんて考えている内に僕達は東京、国会議事堂付近に到着した。まだ一般に公開はされていないみたいで国会周辺は物騒な兵士達に囲まれているのに騒ぎがほとんどおきていない。


 敵の陣地より少し離れた場所で降りた僕達隊員は与えられていた任務の指示の通りに一斉に動いた。僕はまだねむけ眼の義流と一緒に並走して敵部隊の正面を目指した。


「義流」

「ん?」

「まだ眠いの?」

「ん、ああ、でも銃一発で起きるかもな」


 冗談めかしながら義流が答える。そこまで言えるんだったら問題はなさそうだな。でも一応言っておかなければならないことは言っておく。


「まったく。死なないように気を付けてよ。義流がけがしたら流騎くんと流水香さんに顔向けできないじゃないか」

「わかってるって。俺もまた流水香にぶったたれたくないからな」


 義流は僕の横でホルスターから銃を取り出し、僕もそれに倣った。目前ではいきなりの襲来に怒声を飛ばす敵兵士達が僕達に向けて銃を構える様子が見て取れた。



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