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燃えた夏  作者: Karyu
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第百三十八話 消え行く記憶 蘇る思い出(五)


「第二広島ルネサンス支部所属グレード10のカリヤですね?」


 早速本部に向かっているバスの中でその青年が尋ねてきた。


「ああ」


 俺がその青年といっても俺より少し年上か。ま、関係ないけどな。


 しかし俺が答えた直後、黒い帽子を被っていた女が俺へと顔を向けたがそれをもう一人の背の高い女が制止した。


「始めまして、私は東京ルネサンス本部所属のグレード4のミカゲです。それと……」


 ミカゲは俺から視線を逸らし、黒いロングコートを着ていた二人組みに視線を移した。


「あなたがハルナですか?」


 ハルナと呼ばれた女性、俺がバスに乗る前に声を掛けた方が顔を向けて口を開いた。


「ええ、昨日中国での任務を終えて来た所よ」


「そうですか、そしてそちらが例の?」


「ええ。そうよ」


 俺は一人、話についていけずミカゲに問いただした。


「例のってのはなんだ?」


「すみませんが、それはダイテツ総司令とお会いするまで秘密事項ですので」


「そうか、ってことは俺はこの二人と一緒にダイテツ総司令のとこに行くってことだよな?」


「あ、は、はい」


 ミカゲが少し慌てた口調で肯定したが、ハルナと呼ばれた方は微笑を浮かべた。


「へぇ、少しは頭の回転が速いみたいね」


「まあな。ま、お前達の格好から察するに一筋縄じゃなさそうだしな」


「ふぅん、さすがはグレード10ってとこね」


「そりゃ、どうも」


 俺とハルナの冷めた遠回しの毒舌口論にミカゲはおどおどしていたがそれはバスが本部に到着するとともに打ち切りとなった。


 俺とハルナにもう一人の女はミカゲに案内されながら東京ルネサンス本部総司令のダイテツの元まで行った。


 東京の本部は鳥取とほぼ同格の大きさだ。ただ唯一違った点は東京ルネサンス本部は数並ぶビルを利用し、目立たないようにカモフラージュしながら建ててある。


 一方の鳥取ルネサンス本部は住宅街の地下に造ってある。


 ま、大した差でもないか。それに俺はまだ鳥取ルネサンス本部には数回しか行ったことが無い。


 俺とその黒い二人組みはダイテツ総司令と対面した。


 萱場の話が正しければダイテツ総司令は元鳥取MBS本部総司令のカゲフミと友人関係にあったらしい。


 ダイテツ総司令は正に昔気質の日本人といった感じの顔向きではあるが案外軽い所もある。


 でも今はそんなことは関係ない。


「総司令、用件は?」


 俺は投げやりに質問した。 


 隣にいたミカゲは神妙な顔で俺を直視していたがいつもの調子で喋っているので問題は無い。


「うむ。実はな、お前にはこの二人の護衛任務に就いて欲しい」


「護衛任務? この二人が誰かに追われてるとでも?」


「ええ、そういうことよ。だからちゃんとしなさいよ、グレード10のカリヤ」


 ダイテツが答えるよりも先に嫌味を込めてハルナが即答した。


「なんだって俺が東京くんだりまで来てこんな奴の護衛を……」


 俺は不満をこぼし、それをダイテツが掬い上げた。


「うむ、まあハルナは元々もう一人の護衛に就いていた訳なので二重護衛ということになる」


「だったら、早く顔を見せてもらいたいもんだな。いつまでも顔を隠しとくなんて趣味悪いぜ」


「へぇ、そんな事言って良いのカリヤ?」


「どういうことだ?」


 ハルナはまたしてもイラつく言い方をしてきた。


「ハルナ、早く顔を見せてやれ」


 ダイテツもそう言い、はいと渋々ながらもハルナはもう一人の少女の帽子を取った。


 そして、その帽子の下にあったのは……


「静香……!!」


「え? 誰ですか?」


 そう、ハルナと一緒にいて一言も喋らなかった少女は半年前にLIMロスト・イン・ミッションで死亡されたとみなされていた倉木静香、俺のパートナーだった人物だ。


「静香! 生きてたんだなっ!?」


 俺は感極まって静香の両手を掴んで、そのまま引き寄せて静香に抱きついた。


 俺は心の底から暖かいものとともに涙も目尻に浮かび始めていた。


 しかし、異変が生じた。


「きゃっ!? は、離れてください!」


 そう、静香は俺を突き飛ばしたのだ。


 静香は困惑したような表情で息を荒げながら、


「だ、誰ですかあなた? それに静香って誰ですか?」


「え?」


 そんな言葉が俺の口から漏れていた。



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