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燃えた夏  作者: Karyu
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第百三十話 動き出す世界(三)


 俺の所属する新聞部は本校舎とは別に、まあ一種の物置小屋を改造して使っている。


 その為いつも自由気ままに過ごせるし、部長もいい人なため色々な要望にも応えてくれる。

なんでも高校の理事長の孫であるためだと影で噂されているが真意は定かじゃない。


 それに物置小屋だから人もあまり用が無い限り近付かない。


 そして今は俺しかいない。鍵を取り出して閉まっている新聞部の部室を開けて中に入る。電気を点けて、壁際の作業デスクに腰をかける。


 俺は早速鞄の中から電子機器を取り出してそれぞれをPCと繋げて起動させた。


 俺はまずインターネット回線に繋げて、ルネサンスのホームページを開いてみた。


 それは素っ気無くなんとも無機質なイメージが第一印象として残った。


 俺はそのHPを暫くサーフィングしていると今まで知らなかった事柄が発覚した。


 ルネサンスんは少数の本部に多数の支部によって形成されているらしい。


 人員募集などは記されてなくて、活動内容も曖昧だった。


 でも中奇戦での活躍をみると結構武装に徹した強攻部隊であることには変わりないらしい。


 ニュースでも中奇戦の映像でルネサンスが闘っている場面が映されていたのを思い出す……。


 あの時、ルネサンス側はまだ正式に合併してなくてMBSとリベリオンの連中が入り混じっていた。


 そしてバズーカ砲や最近国が開発した高ガンマ線圧縮砲を用いていたりしていた。


 だが三鬼嘉のような隊員、不思議な現象を(もたら)すような映像は何一つなかった。


「一体なにがちがうっていうんだ? 三鬼嘉のような奴は他の隊員とは違うのか? 国は三鬼嘉のような奴を隠したがっている……。そこで一般人も組織に入れてカモフラージュさせているのか?」


 俺は念仏のようにそんなことをぶつぶつと呟いていた。だが、頭の回転はどんどん速くなっていく。


 俺はそのHPを出て他のルネサンスやMBS、リベリオン関係のサイトを見つけ出したがあまり良い情報は得られなかった。家でも多少調べてはみたものの、やはり結果は一緒のようだ。


 やっぱ、国がプロテクトをかけているんだろうな。くそっ。


 俺は他にも画像サーチをしてみたが、すべてがルネサンスのHPに載っていた画像ばかりだった。


 諦めかけていた瞬間、俺は一つの画像に目をやった。 


 それはまだMBSが存在していた時のスーツを着ている一人の男の写真だった。


 俺はもしやと思い、その画像を拡大、俺が撮った三鬼嘉との写真と比べてみた。


 髪型や身なりは変わってはいても、それは紛れも無く三鬼嘉本人であった。


 俺はその画像も保存し、他の画像も調べようとしたらさっきの画像がなくなっていた。そう、第三者の手によりネット上から削除されていたのだ。


「やっぱり国の監視は四六時中、抜かりなしか……」


 俺はその後一時間ばかり調べていると、ある一つのサイトに辿り着いた。


 それは裏・政府サイトで環境省のサイトページであった。


「MBSは元、環境省の一端?」


 なんで今や第二日本公認軍と言われてる組織が環境省に入っていたんだ?


 それにそのサイトにはMBSは十二年、いや今じゃ十三年前に起きたゲリラ戦争にも介入していたとの記事も存在していた。


「一体誰なんだ? これを作ってる奴は?」


 俺はサイトの下に書かれている著作権の所にクキョウと書かれていた文字を見つけた。


「クキョウ?」


 クキョウ、その名前は俺にとって物凄く馴染みのあってとても親近感のある名前である。


「クキョウって、あのクキョウか?」


 そう、俺の親友の一人にクキョウと言う名の男がいる。


 久夾、色耶しきや久夾くきょう。俺と同い年で幼馴染の俺の唯一のダチの名前がそこには書かれていた。


「いや、そんな訳ない。あいつは生粋の漫画オタだ。こんなのを作れるわけが……」


 そう、それにここに書いてある名前はカタカナだ。


 だが俺はそんなのは関係無しに携帯に手を伸ばしていた。


 SIMを取り替えても名前と電話番号は無くなってはいない。


 俺は久夾の名前を見つけ出し、早速掛けた。


 電子音が携帯越しに聞こえてくること数分。


「なんだよ尊? 今学校だぞ?」


 懐かしいダチの声が鼓膜を刺激する。


「お前が学校いくタマかよ。それに久しぶりだな」

「ああ。ま、それもそうだな。で、なんの用だ?」

「ああ、お前もしかしてHP作ってるのか?」

「ああ、で?」

「それって裏・政府ってやつか?」

「ん? ああ、そうだ」

「なんでお前がこんなの知ってるんだ?」

「別に、理由はない。それに今はもう無くなってるだろそのサイト」

「え?」


 俺はマウスを動かしてそのサイトを更新してみたらサイトは見つからず、戻っても消えていた。


「なんで?」

「どうせ、国の所為だろ」

「今から会えるか?」

「ん? いいぞ。ならいつもの所に来い」

「わかった」


 俺は携帯を切ってノートパソコンを()まい、スポーツバッグの中に入れて部室を出た。


 外で北海道の冬の冷たい風が俺の頬を赤く吹かせた。


 吐く息が白い靄となって消えていく。



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