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燃えた夏  作者: Karyu
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第百二十五話 夢を蝕む悪魔(一)

タイトルは 夢を蝕む悪魔ようせいです。


現在進行形でお送りします短編です。


 俺は今、綾夏と二人で愛媛に来ていた。


 それというのも新しい任務が言い渡されたからだ。


 その任務というのが……


「ねえ流騎くん。本当にいるのかなそんな生き物?」

「いるんじゃないか? 本部が確認したっていったんだしな」

「そっか」

「それじゃ、行くか」

「うん」


 俺と綾夏はタクシーを拾って目的地まで向かった。


















 タクシーに乗って一時間。


 俺たちは一つの住宅の前で止まった。


「ここって…………」

「ああ、その場所だ」


 俺たちの前にある住宅は誰も住んでいないのかと思わせるぐらいに静まり返っていた。


 静謐が故の威厳。


 そう思わせるこの一つの家は誰もが夢見るマイホーム。一軒家であるこの家の屋根は赤く、多少なりとも小さな子供が駆け巡ることのできる庭もある。


「入るか」

「う、うん」


 俺はまず門を潜り、扉のドアノブに手を掛けた。


 すると


「ぐっ!!?」


 ドアノブに掛けた手から何かが伝わってきた。


 直接の刺激ではなく悪寒のような肌寒い感覚……。


「どうしたの、流騎くん!?」

「だ、大丈夫だ」


 俺の額から一筋の冷や汗が伝った。


 俺はドアを開け、中に入る。


 家の中は普通。しかし、普通過ぎる……。


「こ、この家」

「ああ。やっぱりいるな」

「う、うん」


 そう、誰もが夢見るマイホームの中身は夢みたいに完璧すぎた。


 完璧すぎた故に感じる違和感。


 それがこの家に入ったときから感じ取れた。


 俺たちが今日ここに来たのはある妖怪の殲滅。


 その妖怪は人間の家庭の軋轢を好み、そしてその歪みゆく家に憑りつく。


 その妖怪の憑りついた家は完璧を保つことになる。誰もが夢見る完璧を取り揃えていた。埃一つのない絨毯、一度も使われたことのない最新型のワイドスクリーンテレビ、食料の何一つ収納されてはいない冷蔵庫、ワックスで光沢された床や廊下、そして白い壁やカーテンには傷や染みの一つもついてはいなかった。これらもすべてはその妖怪の仕業なのである。


 妖怪は住人をいつの間にか廃人へと変え世界から抹消させる、つまりは食べるのだ。


 しかしそれに気付く者はいない。この家にいてもそれに気付くものはなく一瞬にして喰われてしまうのだ。


 そしてその妖怪は家に成りすまし、次の獲物を待つのだ。


 だがそれは一般人には気付かれないという意味で俺たちからしてみれば簡単に察知できることだ。


「それでもなんで私達が今回この任務を渡されたの? 妖魔精って結構弱い妖怪じゃなかったっけ?」


 妖魔精というのがこの妖怪の名前だ。


「なんでも今回のは違った種類の奴らしい」

「違った種類?」

「ああ、詳しくはわからないが」


 俺はまずリビングに土足で上がりこみ見渡すと、やはり家具の配置から汚れの無さまですべてが完璧としか言いようが無かった。


「すっごーい」

「ああ、こいつはかなり手強そうだな」

「そうだね」


 妖魔精はその力が強ければ強いほどその完璧さは凌駕する。だから見つけやすい。しかし一つの難点が存在する。


「仕方が無い。さっさと済ませるぞっ」

「うん、わかった」


 綾夏は背負ってきた鞄から一つの容器を取り出した。


 その中には黒い液体が入っていた。


 そして綾夏は液体を床のカーペットに撒き散らした。


 散らばった黒い液体はカーペットに染みを大きく残した。



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