第百二十三話 綾夏、未来との出会い(二)
私は未来と一緒にザ・カフェ喫茶と書かれた喫茶店に来ていた。
この喫茶店は店長の趣味なのか店内は竹をモチーフに作られたような内装をしていた。
「あんまり人いないね、ここ」
私はちょっと不安になって聞いてみたが、
「だからここにしたの。友達が言うには落ち着ける場所なんだって」
「へぇ」
「それでなにたのもっか? お金のほうは大丈夫でしょ?」
「う、うん。それは心配ないかな」
「じゃ、すいませ〜ん」
未来は片手を挙げて店員を呼んだ。
「私、ナポリターナとデザートに抹茶アイスください」
「じゃあ私、このカツサンドとチョコパフェを六人分」
「「え??」」
未来と店員さんが驚いたような声を二人一声にあげた。
「え、なんか私まずいこと言った?」
「い、いえ。それではオーダーを繰り返させていただきます。えー、ナポリターナお一つ、抹茶アイスお一つ、カツサンド六つ、チョコパフェ六つでよろしかったでしょうか?」
「あ、はい」
「それではデザートの方は食後にお出しいたしましょうか?」
「はい、よろしくおねがいします」
「かしこまりました」
店員さんは軽くお辞儀をしてから立ち去っていった。
「綾夏、そんなに食べれたっけ?」
「う、うん。学校ではあんまし食べれないんだ。や、野次馬が多くて……」
私は少しばかり気が引けつつもそう言った。普段の私から出る言葉じゃなくても、未来の前だと素直になれたから。
「あはは、そっか〜。でもそんなに食べれてよくそんなに痩せてるよね〜。羨ましいな〜」
「こ、これは生まれつきだよ。それに食費だって半端ないんだから」
「ふ〜ん」
「それよりもさ、私達ってなんで似てるのかな?」
「うーん。なんかよくわかんないんだけど、内側から引き合ってるっていう感じがする。なんかSFっぽいね〜」
「うん、でも私もそんな感じ。うまくいえないんだけどね」
そう、私と未来は繋がっている気がした。そう、それは単純に気が合うとじゃなくてもっと根本に潜んでいるものだと思う。
「あ、来た来た!」
「失礼致します」
店員であるウェイトレスさんが先ずは未来のナポリターナと私のカツサンド三皿を持ってきてくれた。
「もう少しお待ちください。ただいま残りの三皿をお持ちいたしますので」
「す、すいません」
私はちょっとだけ俯き加減に、頬が仄かに温かくなったのを感じた。
ちょっと、頼みすぎたかな……。
ウェイトレスさんは私の残りのカツサンドのお皿を持ってきて、
「それでは後ほどデザートの方をお持ちいたします」
と言い残して厨房の方へ去っていった。
「それじゃ、綾夏。かんぱ〜い!」
「うん、乾杯。これからよろしくね」
「モチのロンだよ〜」
「それって、ふるーい」
「あはは〜」
それから私達は三時間程そのお店で過ごして、商店街でウィンドウショッピングをした頃には四時近くになっていた。
「これからどうしよっか?」
未来は私の方を向きながら話しかけてきた。
「うーん、帰っちゃう?」
「えー、帰るの〜??」
「え? どっか他に行く?」
「カラオケとか行こうよ」
「う、うん。いいよ」
私はカラオケには一回も行ったことがなくて楽しみだったけど、最近多発しているカラオケ店での暴行のニュースが頭を掠めていた。
私は未来と一緒に商店街を歩いてカラオケ店の中に入ろうとしたら変な男二人組みに足止めされた。
「お、かわいいねお嬢さん達」
「おや? どうやら中学生みたいだね」
「どう? お兄さん達と一緒に歌わない?」
「奢ってあげるからさ」
その男組みは同じサングラスに派手なシャツにジーンズを着ていて、
「ナンパ……?」
私は未来に聞くと、
「だろうね〜。めんど……」
え?
私は未来の急激な表情の変化に戸惑った。未来は一瞬だけ微かに殺気を込めていたからだ。