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燃えた夏  作者: Karyu
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第百二十話 トウキ カゲフミの影の中で(三)


「CNCだと……?」

「その通りだ。私はお前を鍛える。だがそれと同時にお前にはこの山にいる間、その全てのケースにCNCをためてもらう」

「!?」


 そう、車のトランクの中にはびっしりと約千本ものCNCケースが収まっていた。


 CNCケースは掌で軽く握れるほどの円柱型をしており中は空洞である。そのケースをチルドレンが握ると、自らの能力がそこに凝縮され赤い液体CNCが溜まるのだ。


 CNCとは一種の絞り汁のようなものでチルドレンの能力の源が凝縮されているのだ。だが能力をケースの中に取り込むには多大な精神力と忍耐力を要するため、今まで数々のチルドレン達が耐え切れず死んでいった例も多い。


 訓練後はそのCNCたる赤い液体を飲むことで訓練は終了となる。その成果は凄まじく、その液体を飲むことで今までの能力値は倍以上に跳ね上がる。


 昔この特訓を本部で受けたことがあったが、そのあまりもの過酷さに廃止になったCNCケース訓練……。


 一本を全部満たすのに俺は一ヶ月かかったのを覚えている。それを千本だとっ!?


「なに、臆することはない。そんなことで死ぬようならそこまでだったと言う事だ。その時は私が殺してやる」

「へっ、だれが怖気付いたって? やってやろうじゃないか」

「そうか」


 俺は豪快に右手をトランクの中に突っ込みCNCケースを三本程取り出した。


 俺は闇千華を静かに睨んだ。


 あいつは奥知れない。さすがに闇のオリジナルなだけはあるな。


「それでは私についてこい」


 闇千華は闇に溶け込むように消えた。


 そして次に現れたのは百メートル程離れた森林の中であった。


「! こっちの能力はお見通しってことかよ」


 俺は森の中に入り込めば何がどこにいるのか把握でき、それは有機生命体も同じだ。


 そして闇千華は一瞬にしてこの視界の悪い中、百メートルも先のほうへと移動した。


「追いかけて来いって意味か……」


 俺はケースを三本片手に持ち、ケースに自らの能力源を凝縮させながら森の中を駆けた。






















 そうして俺の特訓は始まったわけだが……。


 闇千華という男はいけ好かない野郎だ。


 カゲフミの親父の親の友人だと聞いていたからな……あんなに若いとは。


 ていうか、反則だろ。


 なんなんだあの若さ、俺と同じぐらいじゃないか……。それとも俺の一つ、二つ上ぐらいだ。オリジナルの分身ってのは外見も変えられるのか?


 そんな不満はさておき闇千華との訓練は鍛錬になったが相当きつかった。


 しかし、俺はそんなに柔な男じゃない。


 いくらうさぎ跳びで山を駆け上ろうが、滝を泳いで上がるとか、素手で今日のおかずを手に入れるとか、傷は根性で治せとか、木を足だけの力で登るとか………。


 だが、さすがに疲れた。


 訓練はいつも日が落ちてから。その間、闇千華は姿をくらましている。


 しかし今日は闇千華を無理に引きとめ、話をすることにした。

















「闇千華、ちょっと待て」

「なんだトウキ? 私には色々用があるんだが」

「今日はちょっと雑談があってな」

「そうか、ならば仕方がない。付き合ってやろう」

「先ず第一にお前なんでそんなに若いんだ?」

「若い時の分身を作ったからだ」

「そうか。やっぱり分身なのか?」

「ああ、だが本体よりもこちらの方が私は好きだがな」

「そうか、だから喋り方もそうなのか」

「これは癖だ。気にするな」

「わかった」

「トウキ、いいことを教えておいてやる」

「なんだ?」

「もしお前の友人か恋人がまったく同じ行動、思考、記憶を持った人形と入れ替わっていたとしよう。お前はどうする?」

「普段と変わりないだろうな……」

「そしてその人形は故意に自らの本体を殺したとしたら?」

「なに?」

「私達オリジナルの全てが本体の分身だ。そして全員が友である。その意識は変わりない。だが意志が本体(もと)とは違うとしたら?」

「もしかしてお前たちはっ!?」

「そういうことだ。この世に正も真もない。常に勝者が正で真なのだ」

「ならお前たちは何をしようとしてるんだ?」

「それは私達が勝ってからわかることだ。だが今のお前はそれ以前に強くならなければならない」

「ああ、わかってるぜ」


 そう言い残し、闇千華は夜の中へと消えていった。



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