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燃えた夏  作者: Karyu
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第百十八話 トウキ カゲフミの影の中で(一)

「ぐっ……」


 俺は深手を負っていた。目の前には俺の弟のゴウキが、俺の幼少時、奴にあげたプレゼントのチェーンを握っていた。


 シルキは既に逃がした……。後はカゲフミの親父に任せるしかない。


「兄さん、もういいでしょ? こっち側においでよ。僕は歓迎するよ?」

「へっ、いくらお前だからってそれはこっちから願い下げだ。俺はあのシコンが心底嫌いだからな」

「そっか、僕は悲しいよ。じゃ、力ずくでもつれて帰る」

「やってみな」


 比婆山の開けた場所で俺とゴウキは睨みあっていた。


 このままじゃ、実力差で負けちまうな。


 親父の奴まだかよ……。


 仕方がない、時間稼ぎさせてもらうかっ!


「俺を浚え大樹の茂みよ、樹楼淋葉塵(じゅろうりんようじん)!」


 陣風が舞い、無数の木の葉がゴウキと俺の間を泳いだ。


 無数の木の葉は俺を包み込み、風と共に俺の体は森の中へと運ばれた。


「無駄だよ、兄さん。ビバーチェ・モルト・ストリングス! ブリランテ・スピリトォーソ!」


 木の葉の旋風の裂け目から視界に捉えたゴウキは両手のチェーンを振り回し始めた。チェーンが互いに擦れ奏でる金属音はしかし鈍くはなくテンポの速い強力な音楽であった。


『あいつ、俺のやったチェーンであんなことができるなんてな。身から出た錆かよ。これだとせいぜい五分程度しか逃げられないぜ』


 俺はゴウキが俺の技をどんどんと切り裂いていくのに焦りを感じつつもできる限り距離をとった。


 俺の目前では斜めに縦横するチェーンが俺を覆う木葉を無尽に切り刻んでいった。


「待て待て兄さ〜ん。はは、なんか昔鬼ごっこをしたことを思い出すよ」


 あいつ、なに楽しげな声だしながら殺す気満々で仕掛けてくんだよっ!

 くっ!


 遂に俺を守っていた葉っぱがゴウキによってすべて吹き飛ばされた。


「あ、兄さんみつけた〜」

「お前、俺のこと嫌いだろ。それにかくれんぼの間違いじゃないか?」

「いや、愛してるよ兄さん。この世の全てより好きだよ」

「お前、おかしいぞ」

「兄さんのせいだよ」

「俺の所為かよ……」


 くそ、これが愛と憎悪は紙一重ってやつかよ。


 ゴウキは両手のチェーンを手に絡めボクシングのフォームで俺に近寄ってきた。

 やばい、このままじゃ……!


「!!」


 来たっ! やっとかよ、親父。

 俺はカゲフミの親父からのホタルを受け取った。


「ゴウキ、俺もお前のことを愛してるよ」

「ほんと! 兄さんっ!?」

「ああ、殺したくなるほどにな」

「え?」

「ジャイアント・バーム! アバー・シ・アングリフ!!」


 俺は近くの樹に拳をぶち込みながら叫んだ。


 俺が殴った樹は大きく震動し、周辺の木々も揺れだした。


「!?」


 ゴウキは異変に気付いたのか後方へと跳躍し俺との距離を取った。


 さすがに俺の弟だ。俺の思考の一部ぐらいは感知できるんだろうな。だが、


「じゃあな、ゴウキ。もう会うことはないだろう」


 俺は自分でも精々するほどの笑みを浮かべ、樹が震動し崩れた地盤の中に溶け込むように消えていった。


 いや、空間移動と言ったほうが正しいな。


 もうちょっと技の種類を増やさないとな……。


 今度シルキに会うときに面目立たないしな。


 俺が次に現れた場所は鳥取MBS本部内部、総司令室だった。
















「来たか、トウキ」

「ああ、待たせたな親父」

「これからは私の傍で働いてもらうぞ」

「覚悟の上さ。だが暫くはここを離れるぞ」

「ああ、用意してある。どれぐらいかかりそうだ?」

「まあ、遅くても三年、いや四年だな。今からでもいけるのか?」

「ああ、ここにチケットがある。インド行きの航空券がな」

「ありがたい。それじゃさっさと行かせてもらうぜ」

「ああ、修行に励めよ。紹介状も書いておいた。今は亡き我が父の友人である倉木闇千華、闇のオリジナルがそこでお前を待っている」

「闇のオリジナルだと!?」

「ああ、黙ってはいたがそういうことだ」

「そうか……。まさかオリジナルだとはな。だが俄然やる気が出てきたぜ」


 俺の冷えきった闘志がふつふつと沸き始めていた。



トウキ「なあ」

作者「はい?」

トウキ「俺ってもはや幽霊だよな?」

作者「いや、だから今出番をあげようと」

トウキ「ってことはよ、この話なかったら俺は本当に幽霊扱いだったって訳か」

作者「う、い、いや最初から考えてあったよ? うん」

トウキ「まあいっか……ラーメン喰いにいこうぜ」

作者「あ、いくいく!」

トウキ「お前のおごりな」

作者「え?」

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