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燃えた夏  作者: Karyu
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第百十二話 リベリオンMBS襲撃事件(二)


 キョウコの研究室はMBSのはずれの棟で用のない者なら決して近寄らない場所にある。


 鳥取MBS本部や他の五つの県本部もほとんどが同じ構造で、中央のビルを囲むように五つの棟が存在し、地面からでも地下からでもどの建物にも行き来できるようになっている。

 そんな中でも中央の建物の真後ろに位置する棟は専らキョウコたち研究員の集う場所である。


 俺は一回トウキと一緒に訪れたことがあった。その時は俺専用の銃型水鉄砲を受け取りに行ったときだ。だがその時はキョウコからではなくナギサから受け取った。


 どちらにしろこの棟はMBSの中でも変人ぞろいで有名なところではある。


「キョウコ、一体なにを手伝えばいいんだよ?」

「お前な、私は一応お前よりは年上なんだ。しかも八つも。すこしは敬いという単語の意味を理解しないとな」

「ほっとけ」

「まったく、可愛くないガキだ」

「ガキ言うなっ!」

「ガキはガキだ。悔しかったらグレードを上げてみろ」

「くっ……!」


 キョウコは参ったかみたいな満足げな顔でそのまま自分の研究室まで歩いていき。俺も渋々付いていった。


 キョウコの研究室に入るとそこには誰もおらず、ただ奇妙な感覚に見舞われた。


 なぜなら歩けるスペースどころか空白な部分すらキョウコの部屋にはなかったのだ。そんな光景を目の当たりにした俺の口からは自然とこんな言葉が漏れていた。


「掃除しろよ」

「なっはっはっは。私の特技だほっとけ」

「床ならまだしも、上も横もかよ……」

「ん? なに、気にするな」

「いや、気にしないほうが無理だろ……」


 なんと部屋の壁には一面のポスターやスケジュール表の数々に天井にはなにやら自作の展示品がぶら下がっている。すべてが異形だ……。


 実際に壁の色が何色なのかは壁にかかっているものを返してみないとわからない。


「まさか俺の任務ってキョウコの部屋掃除じゃないよな?」

「おっ、それもいいな!」


 キョウコは両ポケットから手を出し、右手を拳に、左手を広げながら右手の拳で左手の掌を軽く叩いた。


「だが安心しろ。それはない」

「ほっ……」


 俺は本当に心底安心したが、キョウコの発した次の言葉に自分自身を見失いかけた。


「他人に自分のものを整理されるってのは嫌だからな。だがお前の任務は簡単だ。私の開発した発明品の試験体になってくれ」


 俺は度肝を抜かれた。


 なぜって、キョウコの発明品は確かに評判が良いのだが問題なのはキョウコの趣味にある。

 キョウコは根っからのアニメ好きで用途が全てにおいてそういう系統に走る癖がある。


「だからってこれはないだろっ!?」

「いいだろ。それに任務なんだからつべこべ言わずに着ろ」


 俺が渡されたのは今で言うゴスロリ系の服で、あちこちに小さなリボンが付けられていた。

 しかも上から下まですべてが揃っている……。だからといって拒否すると酷い仕打ちが待っていることは身に染みている……。

「ほらさっさとする」


「くそっ……!」


 俺は渋々着替え始めた。


 着替え終わった後俺は白いフリース付き黒いドレスを着せられ、黒い革靴に白い長い靴下、カチューシャ、更には鬘まで全一式に身を包まれた。


「これって、必要なのか……?」

「ああ、付けておいて損はないぞ。なんたってそれは全身が武器になるからな」

「はっ?」

「そのカチューシャは飛びナイフだし、ドレスのリボンを解く度に銃器類が現れる。他にも色々備わってるがおいおいだな」

「それでなんで俺が着てるんだよ!?」

「資料だよ、し・りょ・う」


 キョウコはカメラを取り出し、俺を四方八方から撮り始めた。


「いつまで着てれば良いんだよ?」

「私が撮り終わるまでだ。それにしてもシルキ」

「なんだ?」

「お前どっからどうみても女の子に見えるぞ」


 キョウコはカメラを片手に皮肉げな笑みを浮かべながら言った。


「なっ! お前、キョウコ! 誰のせいでこんな格好してると思ってんだよっ!?」

「ぎゃーすかぴーすかうるさいな。似合うんだから良いだろ」

「……!?」


 俺の体は硬直した。というよりも本能が停止した。


 この服装が似合うだと……?


 俺の脳が麻痺している間、俺の視界はキョウコが放つフラッシュで照らされていた……。



思えば、このお話もとうとう百話を超えたんですね。最近ちょっと時間を見つけてはの更新なので一揆にばーっと書いてる日がなかなかないです。

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