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燃えた夏  作者: Karyu
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第百十一話 リベリオンMBS襲撃事件(一)

四年前、リベリオンが鳥取MBS本部へと襲撃したときのお話です。


 これは俺が十二の時の話だ。


 十二年前の日本政府のゲリラ戦争の所為で多数のチルドレンが死亡し、MBSから離脱したチルドレン達がルネサンスを結成した八年後の話。


 そう、つまり今から四年前に起きたリベリオンMBS襲撃事件のことである。


 その時、広島のシコン率いるリベリオンにより当時の鳥取MBS本部は壊滅的なダメージを負わされた。


 当時、俺はグレード1の駆け出しで、MBSでは単独任務に駆り出されることもなかった。

 ここからは俺が十二の時の体験、リベリオンMBS襲撃事件をその当時の進行形で話す事にする。

















 四年前……。

















 俺は鳥取MBS本部内の正面玄関の中のロビーのソファに座っている。


 目の前ではMBS用の黒いスーツを着たチルドレンや一般隊員が行き来している。

 俺の手の中には緑茶の注がれた紙コップが納まっている。


「ふぅ、疲れた……」


 俺は溜息まじりに緑茶を一啜りし、ソファに沈み込んだ。


 すると、後頭部をおもいっきりはたかれた。


「いてっ!」


 後ろを振り返るとそこにはキョウコの姿があった。


「何しやんがんだよっ!!」

「なぜひよっこのお前がこんな所で憩ってるんだ?」

「だからってなんでわざわざキョウコがこんなところにいるんだよ?」

「そんなの私の自由だ」


 キョウコは髪を紅く染めているのか地毛なのかわからないが肩にかかるまで髪をのばしている。そして膝下までながい白衣をMBS用スーツのうえに羽織っていた。


 眼鏡は自分のポリシーなのか、いつも違った眼鏡を掛けている。今日は水色の薄いフレームの眼鏡を着用している。


 綺麗な容姿をしているのに、ぼさぼさの髪と少し汚れた白衣が奇妙な違和感を漂わせている。


「今は俺の休憩時間だ、だからここにいる」

「だからお前はいつまでも上達しないんだな」

「うっさい」

「それが私に向かって言う言葉か?」

「くっ……」

「まあいい、総司令が呼んでるから行くぞ」

「え?」

「とっとと早く来い」


 俺はキョウコに襟元を掴まれながらMBSの廊下を引きずり回された。


 俺たち二人を通り過ぎる隊員達は俺を見るや否や笑いを堪えたり同情の眼差しを向けてくる。


 なんだってんだ、くそっ!


「俺は一人でも歩ける!!」

「お、そうか。昔とは違うんだったな。少し前なら私の後ろをひよこのように……」

「ほっとけ……」


 俺はキョウコの手から逃れた。そして握っていた緑茶を一気に飲み干して近くにあったゴミ箱へ放り捨てた。


「だがまだまだ子供だな」

「うるさい!」


 俺は一言も喋らずキョウコの前に出てカゲフミのおっさん、つまりは総司令室に向かった。


 キョウコはポケットに両手を突っこみながら後ろに付いてくる。


 俺はそれに構わず司令室に入った。

 すると重厚な机の上で鎮座しているカゲフミのおっさんが顔を上げた。


「おおシルキか。キョウコはどうした?」


 すると俺の背後で、


「よっ、総司令」

「キョウコか、どうだ研究の方は?」

「ぼちぼちだな」

「そうか、私が頼んだおいた自動コーヒー豆挽き機はどうなった?」

「ああ、あれ私の分野外です」

「そ、そうなのか。それは残念だ」

「まあ、自分で作ってください」

「はは、これは手厳しいな」

「あの、どうでも良いですけど用ってなんですか?」


 俺は二人の会話に付き合いきれず話を進めた。


 キョウコは火を扱うチルドレンで、MBS生粋の天才科学者である。


 いままで数々の発明品を作り出してきたが自分の興味がそそるものにしか手を出さないため、スランプの時期(自由気ままな研究期間)が多いのだ。


「おお、そうであったそうであった。シルキ、今日はお前に単独任務を言い渡す」

「ほんとか!?」

「ああ。トウキが行方知れずとはなったがお前はゴウキとの先頭において生き残ることができたからな。自分の命の大切さがわかったことだろう」


 俺は声には出さずとも真剣かつ歓喜の眼差しでカゲフミの言葉を一言欠かさず聴いていた。


「それでお前の始めての単独任務はキョウコの助手だ」

「…………は?」

「だからお前が今日一日中私の助手になるんだ」

「な、な、はっ?」


 俺はまたもやキョウコに襟首つかまれ二の句も告げられないまま総司令室から連れ出された。


 部屋を出る前にカゲフミが放った真剣な眼差しと頷きに、俺はその時その真意に気がつくことはできなかった。



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