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燃えた夏  作者: Karyu
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第百六話 最初のチルドレン(二)


 その後、義流は他のクラスメイトからの注目を浴び、教師のほとんどからも称賛が上がったり、おちょくられもした。


 しかし、いつもと変わらない平凡な一日はまた過ぎていこうとする。


 冬らしく、日も早くなり、下校する時刻には夕陽も落ち始めていた。


 義流と大地は学校の校門を二人して出た。


「ふぅ、冷えるな。大地、これからどうだ?」

「あ、ごめん、義流。今日僕あれなんだ」

「そっか、そういえば今日は木曜だったもんな。わりぃ、気付かなくて」

「ううん、今日は義流も色々あったんでしょ?」

「あ、ああ」


 義流は今日一日起きた出来事を振り返りながらそう呟いた。


「それじゃ、また明日」

「じゃあな」


 義流は大地と別れ、大地の後姿が見えなくなるまで背中を眺めて、


「じゃ、今日は一人でやるか……」


 義流は、放課後いつも大地と一緒に行く近くの空き地でサッカーに勤しんでいる。


 その空き地は二人しかしらない場所で人気のない静かな場所にある。


 義流は一人で空き地へと向かい、隅の方に置かれていたドラム缶の中から使い古されたサッカーボールを取り出した。


 義流はドリブルやトリックの練習をして汗を流した。

 華麗なフットワーク、ヘディング、ボール捌きを繰り広げながら義流は自分の技の出来具合を確認していった。


 太陽もすっかり沈み、冬らしく寒い夜が義流の世界を覆った。


「うぅー、さみぃな。汗も掻いてきたし、そろそろ帰るか」


 義流は巧みな足捌きでボールを腰あたりまで蹴り上げ、そのまま空中で回し蹴りの要領でボールを蹴った。


 するとボールは勢いよく空き地の角、つまりは住宅の外堀にあたり、そのすぐ真下のドラム缶の中に入った。


「うしっ!」


 義流は鞄を片手にガッツポーズを決めた後、歩き出した。


 時刻はもうすぐ九時。きっと今日も親にしかられるなと思いながらも急ぐことも無く義流は人気のない道を歩いて帰路についた。


 しかし異変が生じた。


 義流の視界に一直線に延びている道の真ん中に夜の色に隠れている牛ほどの動物がいる気配がしたのだ。


 義流のいる道の端には電灯が取り付けられてはいるが、壊れているため鈍い光しか放っていなかった。


「ん?」


 義流は目を凝らしたが、その動物は闇に隠れているので正視できない。

 義流は一旦停止し、闇の中で蠢く生物の様子を窺った。


 すると次の瞬間、暗闇の中から一本の緑色をした槍のようなものが義流目掛けて飛んできた。


「うおっ!」


 義流は持ち前の動体視力と俊敏性でなんとか飛来してきた槍を回避した。否、それは槍ではなく緑色をした触手であった。


 触手はまたも暗闇に隠れたが、今回はその触手の持ち主だと思われる生物が視界に現れた。


「な、なんだよ、これ……?」


 義流は驚愕の表情を浮かべ、目の前の生物を恐怖の色で凝視していた。


 そう、なぜなら義流の視線の先には緑色の触手の生えたライオンとも豹とも言いがたい生き物が牛ほどの大きさで義流を睨んでいたからだ。


「うそ、だろ……」


 その奇妙な生き物は義流に余分な時間を与えようともせず、また触手を伸ばして義流目掛けて伸ばしてきた。


 義流は必死に触手を回避したが今回の触手の数は五本にも達していたため、義流は全てを避けきれず一本の触手が義流の頬を掠った。


「ちっ!」


 義流は転がるように地面に倒れたが体勢を整え、一気に翔けた。それも、謎の生き物目掛けて。


 生き物は驚いたのか警戒したのか、一瞬身を引いた。


 それを見計らってか義流は大声を上げ威嚇しながら触手を体に引き寄せている最中の生物を通り越して走った。


「くそ、なんなんだよ、あれは!?」


 義流はとにかく走り続けた。


 人通りの少ない一本道には段々と街灯の光が差し始め、人影も見えるようになってきた。








 その後、息も途切れ途切れに義流はノンストップで十分間走り続けた。


 視界には徐々に様々な色と音に覆いつくされ始めたが未だ恐怖が拭いきれない義流はとにかく走った。


 人気のあるところまで走ってもやはり義流は追われている感覚にどんどんと追い詰められていった。


 義流の顔が焦燥と恐怖で染められた頃、義流の目の前に大地が現れた。


「大地っ!」


 義流は走るのを止め、大地の名を叫んだ。


 しかし眼前の大地の目は虚ろで、大地のすぐ後ろには屈強そうな大男と色気さを重視した服装を着こなすスレンダーな女が立っていた。



大地も登場。


過去編って結構好きですね。

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