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燃えた夏  作者: Karyu
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第百三話 電雷丸、一の太刀(二)

 ふぅ、疲れた……。


 時刻は九時半。私は買い物を済ませた後、その荷物を自分のアパートに持って帰った。でも、荷物が多すぎて未だに両手は赤いまま。


 ちょっと、買いすぎたかな……? ま、いっか。


 それでも、任務時間に間に合うために私は制服を脱いで身軽に動ける赤色のジャージを着て、スニーカーを履いて部屋を出た。


 アパートには私しか住んでいない。というよりも両親の顔も今ではもう思い出すこともできない。小さい頃からMBSで育てこられた私は両親という者に対する感情が薄れてしまっている。でもそれを苦とも悔とも思ったことはない。


 私の着るジャージの中はルネサンス専用のスーツを着ている。ルネサンス専用といってもMBSの時のと全然かわらない。ただ紋章(ロゴ)が変わったぐらい? かな。


 ルネサンス専用のスーツは防水、防火対策は勿論のこと無伝導で外部からの衝撃を和らげる特殊な繊維を使ってる。

 そしてこのスーツにはホルスターが備えられていて私はその中に馴染みのエレキガンを二つ左右の腰に装着した。


 私のアパートから大江神社までは約二十分。


 充分時間もあるし、もうすっかり冬だから夜は寒い。外は真っ暗だなー。


 私は車が通る大通り沿いを歩いて、やく三キロ程先にある大江神社が建てられている方角を眺めた。


 それにしても、久しぶりに思う存分暴れられるなー。うれしぃー。


 寒さのせいで耳が赤くなり始めていたけど任務のことよりも任務内容を考えるだけで興奮してきて、心は暖かくなり始めていた。


 道沿いの店舗のネオンサインが色鮮やかに輝く中、私の高揚感が心を侵食してきた。

 徒歩二十分で目的の場所に着いた。


 大江神社付近半径三キロ以内は封鎖されて、等間隔で警官が立っていた。


「おい、君、ここからは立ち入り禁止だぞ。君は高校生か?」


 私は一人の警官に呼び止められた。


「あ、はい。倉東の生徒でーす」

「なら、とっとと家に帰りなさい。ここから先は立ち入り禁止だ」

「なんでですか?」

「鬼が出るそうだ」


 警官は若い青年で、真面目そうな顔でそう答えてた。


「あはははははは、お、鬼ですか? そんなのいるわけないのにぃ。お兄さん面白いですねー」

「わ、笑うな。俺だって信じてないんだ。鬼なんてこのご時世にいるわけないのに、なんで俺の上司はあんなことを……」


 あんなこととは今日の警備理由が鬼を市街地に出ないようにするらしい。 


 私は警官に聞かないで顔を見るだけでその事を読み取った。


 私の力は雷で人間が常に放出している脳波の電極を読み取って相手の思考を読むことができるというもの。


 脳波も一種の規則があってそれさえ理解しちゃえば誰の思考も読み取れちゃう。ま、範囲に限りがあるけどね。


「そうですか。じゃ、桃を通してくださいな」

「だから、一般市民はここから先には入れないってっ……!?」

「はい、ルネサンスの者でーす。だからお兄さんはどいといてね」


 私は上のジャージのジッパーを降ろして中のルネサンスの紋章(ロゴ)を警官に見せた。


 私の顔が雲の間から差し込む月光で照らされる。

 私の顔を始めてはっきりと見たのか目の前の警官は私の顔を凝視してかわいいと思ってるらしい。


「君みたいな子がルネサンスの隊員……?」

「はい。それじゃお兄さんは他の人が入ってこないように見張っててくださいね。それじゃ」


 私は警官の横を通り抜けて奥へと進んだ。


 周りには木々が暗く生い茂って地面もでこぼこしてる。


 早く黒鬼でないっかなー。


「我の周囲を覆いつくさん。電子粒流結界」


 私は空気中のプラスとマイナスイオンに電子を放出して大江神社付近半径三キロメートルを埋め尽くした。

 この電子フィールドを展開していると生き物が出す酸素、炭素、水素、窒素、カルシウム、リンの電子を感知しその居場所を特定ことが出来る。


 これで一瞬にして黒鬼の居場所を割り出すことができる。


「ふーん、ここから北北西五十メートル、こっちに向かって来てる。よーし」


 私はジャージを脱ぎ、近くの芝生に隠して、ルネサンス用スーツの両腰のホルスターからエレキガンを取り出し電子分解させて銃剣に変えてその刀身を眺めていた。


「電雷丸、今日もよろしくね」


 私は電雷丸を構え北北西を向いた。電雷丸は全体が黒く、


 黒鬼はゆっくりと私の方に気配を消して近付いてきたけど私の電子粒流結界の電子フィールドでは無意味。

 段々と足音が大きくなり、木々を押し除けながら三メートルにも及ぶ鬼の特徴である一角を頭部に生やした黒鬼が私の前に現れた。


 黒鬼は報告どおり全身が墨汁のように黒かった。


「ニ、ニン、ニンゲン……ニンゲーン!!」


 そう叫びながらその豪腕な腕を私に向かって振り上げてこようとした黒鬼の思考を読み取って私は黒鬼の高速で振り下ろされる長爪を避けた。


 私は後方に下がって、足元にあった枯れ木がぱきっていう乾いた音が響いた。


 黒鬼が低い咆哮をあげながらまた私に迫ってくる。人間とも動物との言葉とも判別のつかない唸りを上げながら黒鬼は自慢の長爪を振り上げている。


 私は電雷丸を下段に構えて黒鬼に向かって駆けた。

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