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推理~狼への道~  作者: 菖蒲川
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大蛇 巽

大蛇おろち たつみの回です。

俺が小学生の頃、大蛇おろち たつみという奴は本当に周りの目ばかり気にしていた。

野球部には入っていた。

でも、全然馴染めていなかった。

それもそのはずだ、親父が無理やり入れさせたようなもんだから、やる気なんて起きるわけ無い。

加えて野球部は全員丸刈りという慣習になっていて、俺はどうしても髪を剃り上げたくなかった。

そうしたことから、部活でも浮いた。

負の連鎖からか、クラスでも陰湿ないじめを受けるようになっていた。

だから、俺はよく人を観察して、敵・味方を判断した。

そして、そんな環境から逃げたくなって勉強をしだした俺は少し離れた私立の中学に通えることとなった。

そんな俺に中1の春、思わぬ出会いが起こる。


いわゆるキャラチェンとして、俺は中学に入ってからは人の目を気にしながらも平穏な学校生活を送っていた。

だけどある日校内を何となしに歩いていたとき、廊下を走ってきた女の子とぶつかった。

彼女は見た目はとても清楚系(?)みたいな感じで綺麗だった。

そんな彼女が廊下を走るなんてよほどのことなのだろうと思った。

「だ、大丈夫!?」

俺も尻もちをついていたが彼女のほうが気になった。

「イタタタッ。うん、大丈夫、ありがとう。君は・・・巽くん?」

「え、あぁ、はい。」

「ごめんね。私急いでるから、またね。」

これが俺と神威凛の初めての出会いである。

次の日、彼女が俺と同じクラスだということを初めて知った。

そして、彼女は俺を見るなり昨日のことを謝ってきた。

彼女の綺麗な顔立ちに男子ファンは多いらしく、俺は彼女の謝罪よりもそっちの目線が気になって仕方が無かった。

彼女は最後に、

「昼休み、屋上に来てくれない?」

と、耳元で囁いて自分の席へ戻っていった。

彼女に何を言われるのか気になって、授業なんて耳に入って来なかった。

昼休み、彼女より俺は早く屋上に行った。

はやる心臓の鼓動は彼女に誘われたからか、走って屋上まで来たからかわからないが、緊張はしていた。

数分して彼女は来たのだが、俺が弁当をここに持ってきてないのを知ると食べながら話したいからと、取りに戻らせた。

そんなに長い話なのかと、俺はさらに教室と屋上を走って往復した。

「じゃあ、まずはお弁当食べましょうか。」

彼女はニコッとして自分のお弁当を開けた。

「今日、私サンドイッチなんです。おひとついかがですか。」

「あ、そうなんですか、俺はおにぎり自分で握ったやつだけど交換するってことでどうかな?」

「あら、お昼は自分で作っているのかしら? 偉いわね。ひとついただくわ。私のもどうぞ。」

こんな調子で俺達はお昼を食べていった。

(俺、なんでここに呼ばれたんだろう?)

見た感じでは彼女は俺の敵ではなさそうだ。

雰囲気とか仕草とか、でも味方という感じも最初から受けてはいなかった。

「さて、じゃあ私の用件をそろそろ話してもいいかしら?」

「は、はい。」

「フフ、さっきから別に敬語じゃなくていいのよ? 同い年なんだし。まあいいわ。あなたよく人のこと観察しているでしょう?」

ギクリとした。

別に悪い事を指摘されたとかそういうのではないが、なにか自分の観察という行為を後ろめたいと一瞬思った。

「ばれるくらい俺、あからさまにしてたっけ?」

引きつった笑いになっているのが自分でもわかる。

一筋の汗が頬を伝っていくのも感じた。

「いえ、私がたまたま気づいたんですわ。安心して、別に誰かに話したりしてないから。」

「あ、ありがとう。」

「それでね、お願いがあるの。私と一緒に人狼部を作って欲しいの。」

「人狼部? 人狼っていうのは知っているけども、なんで俺が? だって俺そんな頭がいいわけじゃないと思うけど。」

「あら、その口ぶりだと人狼のルールとかはご存知なのかしら?」

「ああ、小さい頃からたまたま家にカードがあって、ルールくらいは知っているよ。でも人数がいないとできないし、それに俺があんな頭使って推理できるわけがないから、1度もプレイしたことはないよ。」

「あらあら、あなた人狼が頭を使う競技だと思っているの? 使うには使うけど、あれは要は慣れで補えるわ。数学だって難しい問題は最初解けなくても、解法に慣れを感じるとそこまで難しくなくなってくるでしょう?」

「確かに。じゃああれはたくさんプレイすれば強くなれるゲームなのか?」

「確かに強くなれるわ。でもそれが大事な要素ではないわ。私が考える大事な要素ってなんだかわかる?」

頭の善し悪しはそこまで関係していないなら、あとはなんだろうか。

そういえば、さっき俺の観察のことを言ってから話し始めたよな。

「人を見る観察力か?」

結構、自信有りげに答えた。

「違うわ。それも大事だけど本質じゃないわ。」

「え、まじ?」

「やっぱり引っかかったわね。教えてあげる。”心理学”よ。」

「心理学?」

まあ、確かに大切そうな要因だとは思うが、引っかかったってなんだ?

「そう、心理学。私があなたの観察力を話題に出してからこの話をしたから、観察力が大事だと思ったんでしょ? これも簡単な心理学よ。人は文と文、会話と会話の行間に意味を見出したがるわ。それが正しそうであればあるほどにね。」

「な、なるほど。」

「それでね、私は巽にはその才能があると思うの。人を観察してきたんでしょ? 心理学っていうのは一種の統計学よ。だから、あなとの統計を使えばきっとあなたは人狼に強くなるわ。どうかしら?」

ここで、俺の名前呼び捨てなんて・・・これも心理学か?

「わかった、そこまで言われたんならやってみなくちゃ損な気がしてきたよ。」

「ホント?! あ、ありがと~!」

これ以後俺らはお互い呼び捨てになった。

心理学というのを学ぶ中で使えそうなものは日常生活にも応用させてみた。

そうすると、クラスの中で話し上手な人気者に俺はなっていき、明るさが俺にも現れていった。


「高校でも、明るく過ごせたらいいな。」

愛媛に進学した俺は、坊ちゃん列車に乗りながらポンジュースとアホ丸出しの格好をしながら、夏目漱石の『坊ちゃん』を読んでいた。

今の大蛇巽は人の目線をあえて集中させて、統計を集めていた。

(俺の強みはこれしかないからな。)

「次はバリィさんの人形持って今治にでも行っていみるかな?」

冗談ながらそんなことを周りに聞こえるように言える余裕も出来ていた。

言っておきながらさすがに恥ずかしくなり、自重する俺は青春を謳歌していた。

人の心理を理解するにはまず、自分が楽しい経験、辛い経験をしてみないとわからないのだと。そうして人は強くなっていくのだと。

・・・。

すいませんでした(笑)

次回はいよいよ5人のうちの最後、したなが 衣鈴いすずの回ですの。(笑)

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