あまたのあなたのものがたり
あなたはふと疑問に思った。
この風は一体どこから吹いているのだろうかと。
風はなんのために吹いているのだろうかと。
そう考えると次々に数多の疑問が溢れ出て来た。
せき止めてた水が流れるように。
あなたの頭が疑問で満たされた時、あなたは旅に出た。
あまたの地を廻った。あまたの人と出会った。
あなたは新たな土地に着くたびにそこを見て回り、そして道行く人に訊ねた。
あなたはどうして生きているのかと。
突飛な質問に目を丸くする人が大半だった。
そんな質問をするあなたに人々はあまたの答えをくれた。
誰かを守りたいから。
誰かを殺したいから。
幸せになりたいから。
不幸にさせたいから。
生きている実感が欲しいから。
探し求めるものがあるから。
失われたものを取り戻したいから。
希望を灯したいから。
絶望を与えたいから。
あまたの人のあまたの答え。
それは同じようでいて全てが違う。
あまたの人の数だけあまたの答えがある。
きっと風にもあまたの答えがあるのだろう。
湧き出たあまたの疑問にも、あまたの答えがあるのだろう。
そうしてあなたは思った。
あなたはどうして生きているのだろうかと。
あまたの答えを聞いたあなたは考えた。
あまたの出来事が頭を過る。
決して短くない時間を費やしたことにあなたは想いを馳せる。
そうしてあなたは答えにたどり着くのだろう。
『あまたのあなたのぶんだけ答えがある』
これはあまたのあなたのものがたり。