表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界のアルケミスト  作者: 多岐川ノリ
リーゼガングの城塞都市
9/104

 買ってきた服に着替えた私は、すぐに工房を飛び出したリリカの後を追いかけた。

 リリカは少々急ぎ足でリーゼガングの第二の門をくぐる。私もそのあとに続く。そしてリリカが向かったのは商店街からそれほど離れていない飲食店街だった。

 日はすでに沈んでいた。それにもかかわらずこの一帯は大きな賑わいを見せていた。露店で飲食物を売っては、それを購入し、近くのベンチやテーブルなどに座って食べているカップルなどが多く見受けられる。

 そのような中をリリカは他のカップルに目もくれず飲食店街を突き進んでいく。その行動には何も迷いは無かった。すでにエルウィンの行動はお見通しの様にも見える。実際、リリカは一件の飲食店の扉の前で足を止めた。

 「ここに・・・あいつがいるの?」

 「そうです!さぁ、行きますよ!とにかく早く連れ帰るのです!」

 そう言ってリリカはお店の入り口の扉を勢いよく開けた。


 「親父!おかわりくれ!」

 「エルウィンの旦那、そんなに飲んで大丈夫か?またお弟子さんにしかられるのが目に見えてるぞ。」

 「大丈夫!やっと大きな仕事が終わったんだ。だからその報酬でお金も十分にある!ちょっとぐらい飲んでも何とも言わんよ!」

 「へー、ずいぶんと余裕ですね師匠!」

 テーブルの席について数人の男達に囲まれ、木製のコップに注がれた飲み物を豪快に口の中に流し込むところを、私とリリカは目撃した。

 間違いない。

 この賑わい。

 このにおい。

 ここは酒場だ。

 エルウィンは工房のソファーで眠った後、この酒場にやってきてお酒を飲んでいたのだ。

 「よう、シズクじゃないか!お前も一杯飲んでいくか?」

 「私は無視ですか、師匠!」

 「いや、私はまだ18歳で未成年だからお酒は飲めない。お酒は20歳にならないと飲めないの。」

 「シズクさんも、普通に回答しないでください!」

 「おい、エルウィン、この子がさっき言っていた外国のお嬢ちゃんか?可愛いじゃねぇか。ちゃんと紹介してくれよ!」

 「だから私を無視しないでください!」

 1人この状況にいらだっているリリカをよそにエルウィンは私に話しかけ続ける。

 「その、20歳にならないと飲めないのはニホンとかいう国の決まりなのか?この国、リーゼガングは18歳から酒を飲むことが許されているんだ。だからお前も遠慮しないで飲んでみろ。」

 「じゃ、じゃあ、一杯だけ・・・。」

 そう言って私の元に運ばれたのは、黄色い泡立つ液体の上を白い泡が覆い被さっている飲み物だった。ん?これはどこかで見覚えがあるような。私は周りにいた男達に訪ねる。

 「これは・・・なんていうお酒なんですか?」

 「それは麦酒と言って、小麦を発酵させて作った発泡酒なんだ。この泡と、液体ののどごしがたまらなくおいしく、何杯でも飲める酒だ。お酒初心者のお嬢ちゃんでも飲めるだろ?」

 間違いない。これはビールだ。

 私はそのビールを一口飲んでみた。

 ふわりとした白い泡が口の中で溶けだし、その後に流れてくる液体が炭酸のジュースのように喉に適度で心地よい刺激を与えてくれる。


 ・・・おいしい!


 私はそのままコップに入ったビールを一気に口に流し込んだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ