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「すまない、君を国の面倒事に巻き込んでしまって。」
口を開いたのは青年の方だった。
「いえ、この戦いに首を突っ込んだのは私の意思です。それに今の私には頼もしい仲間がいます。彼らの力があれば必ず勝利することができるでしょう。」
「で、君が連れてきたのがその頼もしい仲間、と言うことだね?」
「はい。そうです。」
青年はエルウィンと簡単に会話を交わすと、私たちの方に向き直った。
「自己紹介が遅れてしまった。私はこの国の皇太子シェルドだ。エルウィンから聞いていると思うが、この国は内乱状態に突入しようとしている。君たちはリーゼガングの中でも優秀な傭兵と聞いている。是非私たちに力を貸して欲しい。」
その言葉を聞いて、私は緊張した面持ちで口を開いた。
「あ、あの、私はそれほど優秀な傭兵とは思っていません・・・。戦争なんて初めてですし、その中で私がどれだけ活躍できるかわかりません。でも、錬金術を戦争に利用するなんて間違っていると思います!私は知っています。錬金術の力があれば、沢山の怪我人の傷を癒やすことができるし、病気を治すことだってできます!」
そう、かつてエルウィンが私にしてくれたように。
「だから、私たちはシェルド様のために戦います!!」
「そう言ってくれるとはありがたい。私も全く君と同意見だ。君、名前は?」
「あ、すいません、私、雫といいます。」
「シズク・・・珍しい名前だね。」
そりゃ、この世界にない日本の名前だからね。
他のみんなも一通り自己紹介を終えたところでシェルド皇太子が話し始めた。
「さて、エリス、今回の戦いについて、作戦を説明してくれないか。」
そう促されて、シェルド皇太子の側にいた女性が口を開いた。
「では、説明させて頂きます。あ、申し遅れました。私はシェルド皇太子の警護を請け負っております、エリスと申します。今後ともお見知りおきを。」
そう言ってエリスと名乗った女性は私たちに向かって一礼した。
「今回の戦い、敵の戦力を10とすると、我々の戦力は3ほどしかありません。戦力の差は圧倒的に不利です。正面から戦ってはまず勝ち目はないでしょう。従って、今回の戦いではこの砦に籠城し、敵の戦力がこちらに集中している間に、少数精鋭の部隊を敵の本拠地に送り込み、敵の大将、ローゼリッテを討ち取る、という先方が最適ではないかと思われます。幸い、この砦は他の砦より強固に作られており、敵の攻撃を受けても3日程度はしのぐことができるでしょう。」
「たった3日間か。」
そう口を開いたのはアーカムだった。当然この場にいた全員の視線がアーカムに集中する。
「アーカムって、戦争経験があるの?」
「ああ、俺はいろんな国に行って傭兵をやってきたからな。勿論戦争にも参加したことがある。」
し、知らなかった・・・。この世界に来て始めて知り合った傭兵だったのに。
「まぁ、この戦力差で3日持てば良い方か。」
「アーカム殿の言うとおり、この戦力差では3日と持たないでしょう。ですからそれまでに決着をつけなければなりません。」
「そこで、敵本拠地に乗り込む精鋭部隊を君たちにお願いしたい。」
「正気ですか!?シェルド様!!」
声を荒らげたのは、それまで淡々と作戦説明を行っていたエリスだった。
「この得体も知れない、他国の人間に任せるなど、私は反対です!」
「では、代わりに適任者がいるのか?」
「それは・・・ならば私が行きましょう。」




