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「ち、ちょうど良かった。みんな無事か?」
「え、ええ、なんとか。でも私たち何も説明を受けていないんだけど。一体どういう状況なの?」
お互いちょっと驚いた様子で話しかける。無理もない。扉を開けたら相手がそこにいたのだ。マジで思わず声に出してしまったほどびっくりした。とりあえず落ち着いて、全員中央のテーブルを囲むように座り、エルウィンは全員が揃っているのを確認すると静かに話し出した。
「・・・簡単に言えば内戦だ。ディルガント国王が死亡し、この国の実権を握ろうとしている皇后ローゼリッテ派と皇太子シェルド派が対立することになった。で、シェルド派がこのビルガス砦に集結している。」
「なぁ、ローゼリッテとシェルド・・・だっけか?この二人が対立している理由は何だ?」
口を開いたのはアーカムだった。
「何も理由がないなら、普通は皇太子が新たな国王となるはずだろ?」
うーん、そこら辺の話は私は全くわからないが。
「理由は錬金術に対する価値観だ。シェルド皇太子は錬金術は国民のためにある物と考え、国の発展のために錬金術を利用しようとしている。一方でローゼリッテ皇后は錬金術を戦争の道具として利用しようとしている。俺がシェルド側についたのもその錬金術に対する価値観に賛同したからだ。・・・もう一度聞く。どちらが錬金術のあるべき姿と思う?」
「そんなの決まってるじゃない。」
私はフィーナ、信也、アーカムと視線を合わせる。彼らは無言でうなずいた。
「錬金術を戦争に利用するなんて間違っている。私たちもシェルド皇太子側につくわ。」
「ふふ、それを聞いて安心した。それじゃあ会いに行こうか。我らの大将、シェルド皇太子の元へ。」
私たちはエルウィンの案内に従って後をついていく。たどり着いた先はおそらくこの砦の中心となる場所だろう。大きな扉のある部屋の前へとたどり着いた。その扉の両脇には兵士が立っている。
「さぁ、我らが対象とのご対面だ。」
そう言ってエルウィンは扉を開けた。
部屋の中にいたのは一人の青年がいた。年齢は私とそれほど変わらないだろう。ただ、その姿には王族特有の、ニルード王子にも持っていた、気品をも持ち合わせているようだった。
その隣にはその青年とは少々年上と思われる女性が立っていた。外見は美しい女性だが、その鋭い目つきから、常に殺気立っているようにも感じられた。おそらく青年の方が、エルウィンが言っていたシェルド皇太子なのだろう。
彼らの前には大きなテーブルがあり、その上にはこの国の地図と思われる大きな紙が広げられていた。二人はその地図を見ながら何か話をしていたようだ。
と、青年が私たちの方へを視線を向けると、エルウィンは青年の目の前でひざまついた。後ろを振り向くとフィーナもアーカムも信也も同じようにひざまついている。と、慌てて私もエルウィンの見よう見まねで同じようにひざまついた。
「ああ、そういう堅苦しいのはまだ無しで。みんな面を上げてくれ。」
「・・・これは失礼いたしました。」
そう言ってエルウィンは立ち上がった。後ろの三人も同じように立ち上がる。それに釣られるように私も立ち上がった。




