8
「ビルガス砦に行くのなら、急がないと。」
そう考えて、大勢の人々をかき分けて、私たちが向かった先は街の入り口にある馬小屋だった。ここで馬を借りてビルガス砦へ向かおうと考えたのである。
しかし。
「申し訳ない。馬はみんな貸し出し中なんだ。」
馬小屋の店主はこう言って頭を下げた。
「この事態だからね。兵士達がみんな借りていったよ。」
「そうなんだ・・・。」
「ちょっとまて、この事態ってなんだ?」
そう言い出したのはアーカムだった。
「なんだ、知らないのかい?戦争だよ。戦争。これから戦争を始めようとしているから兵士達が慌ただしくしているんだよ。」
戦争!?
一体どこの国と戦おうとしているの?もしかしてリーゼガングと!?
でもエルウィンはリーゼガングではなくビルガス砦へ向かうように言っていた。ここはエルウィンの指示に従うべきか。
「参ったわね・・・どうやってビルガス砦まで行きましょうか。」
「あの馬車は使えないのか?」
「ダメよ。道が悪かったら馬車なんて意味が無い。歩いて行った方がましよ。」
「なんだ、君たち馬車を持っているのかい?しかも行き先はビルガス砦か?」
私たちの会話に割り込んできたのは馬小屋の店主だった。
「なら心配いらないよ。ビルガス砦までの道はきちんと整備されている。馬車でも問題無く使えるよ。」
「なんだ、それを早く言ってよ!だったら馬車で行きましょう!」
私たちは馬車に乗り込みビルガス砦へ向かった。
馬小屋の店主は親切にもビルガス砦までの道のりを教えてくれた。それに従ってフィーナは馬車を走らせる。馬小屋の店主が行っていたとおり、砦までの道のりは石畳で整備されていた。
「見えたわよ。あの砦ね。」
砦までは半日程度でたどり着くことができた。
砦の中に入る私たちを門番の兵士達が「止まれ」と命令してきた。ここで荒事は避けたい。私たちはそれに従うことにした。
「貴様達、何者だ。何のためにこの砦にやってきた?」
「私たちはリーゼガングからやってきた旅の者です。エルウィンの指示でこの砦にやってきました。」
私は正直に答える。
「なんと、エルウィン殿の紹介だと!?それは本当か!?」
「ええ、ここでエルウィンと合流することになっています。」
「わかりました。エルウィン殿はもうじきこの砦に来られるでしょう。ご案内します。こちらへ。」
ずいぶんと丁寧な対応だ。エルウィンはとんでもなく手厚い歓迎を受けていたとしか思えない。
私たちは砦の入り口に馬車を止めると、兵士の案内で砦内の一室へと案内された。
「ここでお待ちください。エルウィン殿が到着されましたらここへお連れします。それまでごゆっくりおくつろぎください。」
そう言って兵士は部屋の外へ出て行った。
「・・・一体何が起ころうとしているんだろう。まさかリーゼガングと」
「それはあり得ないわね。この砦はリーゼガングとの国境とは離れすぎているわ。攻めるならディルガントから直接向かった方が遙かに早いのよ。」
そう言ってフィーナは地図をテーブルの上に広げ、指を差して説明してくれた。なるほど。地図を見れば一目瞭然だ。」
じゃあ、これから何が起きようとしているのか?
・・・兵士に聞いてみればいいじゃん。
なんでこんな簡単なことに気がつかなかったんだろう。そう思って部屋の扉を開けると。
「うわっ!」
「うわっ!」
・・・エルウィンがそこにいた。




