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結局私たちは兵士達のベッドを借りて一泊することになった。幸い、使用していない4人部屋が空いていると言うことなので、遠慮無く使わせてもらうことにした。
私は部屋に入るとすぐにベッドに横になった。
「大丈夫かしら。」
心配そうにフィーナがベッドの脇で話しかける。
「仕方が無いよ。乗り物に酔ったらひたすら耐えるしかない。酔い止めの薬だってそうだろ?あれは酔う前に飲まないと意味が無い。酔ってから飲んでも効果が無いんだ。」
と信也。
「へーそうなんだー。初耳ー。」
「まぁ、ベッドの上じゃ揺れることはないから寝てれば次第に回復するよ。それより、これからのスケジュールはどうするんだ?」
「食料は多めに買ってあるから、予定より遅れても足りなくなることはないわ。だけど帰りの分は補充しないといけないわね。」
しかし、そんな心配は無用だった。
次の日。
「うわぉ!早い早い!」
「よーし、このまま突っ走るわよ!遅れを取り戻さなくっちゃ!」
「おい、あんまり馬に負担かけるなよ。馬が潰れてしまったら歩かなくちゃいけないんだからな。」
「まぁ、そこら辺もちゃんと考えているんだろ。フィーナのことだから。」
「アーカムの言うとおり!ディルガントまでの移動はこのフィーナさんにまかせなさいっ!」
国境からディルガントへ向かう道は石畳で舗装されていたのだ。そのおかげで馬車も快適に走り出す。揺れもほとんどひどくない。これなら酔う心配も無いだろう。否応にもテンションが高くなってしまう。私はフィーナの横から身を乗り出し流れる風を感じながら叫んでいた。
「このままエルウィンの所まで行っちゃえー!」
そして国境を越えて10日目、私たちはついにディルガントに到着した。
この街はリーゼガングとは異なり、厳重に作られた城門を越えると、住宅地が密集した構造になっていた。そして目の前の道をまっすぐ進むとディルガントのお城が見えた。しかし、私たちが目指すのはお城ではない。錬金術師達の集まる工房だ。
でもその前に。
「おっふろー!」
馬車を城門近くの業者に預けると(街の中を馬車で走ることは禁じられているらしい)、私たちは公衆浴場の場所を聞き出し、真っ先に底へと向かった。なんせ10日間もお風呂に入っていないのだ。体中汗臭く髪もべたついて気持ち悪い。とにかく一刻も早くお風呂に入りたかった。




