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私はリリカをベッドまで運んだ後、普段立ち入ることのない工房の中へ向かった。
私に何かできることはないだろうか。
工房の中に入るのはこれで二回目だ。前回はエルウィンの命令で工房の掃除を行うために中に入ったことがある。そのときは掃除に夢中で落ち着いて中を見渡すことはなかったのだが・・・。
改めて工房のなかを見渡すと、見たこともない器材ばかりが並んでいた。学校の授業で様々な器材を使って実験を行った経験はあるが、ここにある器材は全く使い方すらわからない物ばかりだった。
「はぁ、これじゃ、本当に役立たずだな、私って。」
学校の授業で学んだ事だけでもリリカの役に立つかと思ったが、そうはいかないみたいだった。
考えてみれば当然である。
これまでエルウィンが作った錬金術アイテムは傷を一瞬で治してしまったり、遠く離れた場所からリーゼガングに移動したりと、私の理解を超えた物ばかりである。
もしかしたら魔法の力も混在しているのだろうか?
だとしたら私の出る幕は本当にないだろう。なぜなら私は魔法は使えないからだ。
「やっぱり私にできることはないのかな・・・。」
と、私は部屋の隅にある本棚が目に入った。
遠くから見ると、何の変哲も無い本棚である。
だが気になったのはその棚に並んでいる本にあった。
そこにある本は当然錬金術に関する本なのだろう。だろう、というのは、私はこの世界の文字を読むことができないのである。しかし、かなり昔から保管されているのであろう、その本達のほとんどがかなり年期の入った振るい本ばかりであった。
だが、私の目には一冊だけ比較的新しい本が混ざっていたのである。
私はその本に手を伸ばしてみる。
・・・ぎゅうぎゅう詰めに本棚に押し込んでいるためか、なかなか本棚から取り出すことができない。
ならば、と力任せに思いっきり引っ張り出す。
その本を取り出すことができた、が、それと同時に周りにある古い本達も一緒に本棚から飛び出してきた。大きな音を立てて大量の本が私の上に落ちてきた。
「あたた・・・。」
大量のほんの下敷きになった拍子に大量の埃を被って転んでしまった。
・・・あれ?このメモは何だろう?古い本に挟まっていたのかな?
「ちょっと、シズクさん、何やってるんですか!」
今の音で目が覚めてしまったのだろう。リリカがびっくりした表情で工房の中に入ってきた。
「い、いやぁ、この本を取り出そうとしたら・・・。」
その私の手に握られている本、他の本とは比較的新しい本をぺらぺらめくってみる。
そこにはやはりというか、私の見たことのない文字が並べられている。全く読むことができない。
「だめだぁ、私じゃ何て書いてあるかさっぱりだよ。」
「ちょっと貸してみてください。」
リリカは私からその本を取り上げると、ぺらぺらとめくってみる。
「これは・・・間違いありません!師匠が書き残したメモです!しかもわたしでもわかるように簡略化して書かれてあります!これなら私でもできます!」
「えっ、それじゃあ・・・。」
「お手柄ですよ!シズクさん!」




