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見る限りこの傷薬はエルウィンが作った物とはほど遠いように感じる。
しかし、実際に使ってみないことにはわからない。
「そういえば、肘に擦り傷があったっけ。」
この傷は仕事中に野獣の攻撃をかわすため、転倒したときにできた傷だ。それほど深い傷ではないのでそのままにしていたのだが、この傷薬の効果を試すにはちょうど良いだろう。
私はリリカから受け取った傷薬の軟膏を指で少しすくい、肘の擦り傷に塗ってみた。
「つっ!」
浸みるような痛みが傷口からこみ上げてくる。エルウィンの傷薬ではこのような事は無かった。しかし、その痛みを堪えてしばらく放置してみる。
わずかだが、傷口が塞がっていくような気がする。しかし、エルウィンの傷薬とは遙かに傷がふさがる速度が違う。エルウィンの傷薬ならば塗ったとたんに傷口がみるみる塞がっていったはずだ。
作る人によってここまで差が出てしまうとは。
「やっぱりこれじゃ師匠には遠く及びませんよね。すみません。」
「うん、リリカには悪いけど・・・。」
これではエルウィンに及ばないどころか、売り物にもならないだろう。
「もっと・・・勉強しなくちゃ・・・。」
そう言ってリリカは席を立つと、ふらふらとした足取りで調合部屋へと向かっていく。
「ちょっと待って!リリカ!」
その姿を見て私は慌てて声をかけた。と、それと同時に、リリカは壁にもたれるように倒れてしまった。私はすぐに席を立ち、リリカの元へと駆け寄る。
「リリカ、錬金術も大事だけど、体をもっと大事にしなくちゃ。リリカの代わりなんていないんだからね!」
「す、すみません・・・。」
私はリリカをベッドまで運ぼうと、リリカの体を抱え持ち上げる。と、そのとき、リリカの体に違和感のような物を感じた。リリカの体をよく見ると、リリカの足に包帯が巻かれてある。
「リリカ、この包帯・・・。」
私はリリカをベッドまで運び、寝かせると、その包帯をほどいてみた。その包帯の下には無数の切り傷が見つかった。
「リリカ、もしかして・・・。」
「へへ、バレちゃいましたね。」
私はその傷を見てすぐにわかった。リリカは自分の作った傷薬の効果を試すため、自分でわざと足に切り傷を作っていたのだ。
「リリカ!」
「は、はい!」
私は涙目でリリカに訴えかける。
「自分で傷を作らなくても・・・私が傷だらけで帰ってくるから!薬の効果を試すのだったら私の体で試して!だから・・・自分で自分を傷つけるような真似はしないで!」
その言葉を聞いたリリカは大粒の涙を流していた。
「すみません、本当にすみません、シズクさん・・・。」
私はリリカの傷の手当てを行った。その処置が終わりリリカの顔を見ると、リリカは静かに寝息を立てて眠っていた。




