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職人街を後にした雫とリリカは第三の城壁の方へと歩いて行った。
「リリカ、こっちって・・・お城の方向?」
「はい。師匠はお城からの依頼も受けているんですよ。」
・・・私が思う以上にあのエルウィンという錬金術師は有名、かつ実力のある人間なのかもしれない。とても外見からは想像できないけど。
そんな事を考えているとすぐに第三の城壁の門へとたどり着いた。
第三の城壁は入り口はこの一ヶ所しか無い。ここを抜ければリーゼガングのお城は目と鼻の先だ。
その城壁の脇には門番の兵士が2人立っている。
「こんにちわ、リウィお兄ちゃん。お仕事ご苦労様です!」
「お、お兄ちゃん?」
私は思わず突拍子も無い声を上げてしまった。
「あ、いえ、私が勝手にそう呼んでいるだけなんです。年も近いですし、毎日のように会っているんで。」
「あ、そうなんだ。びっくりした・・・。」
「リリカか。ん?おい、そっちの女、怪しいやつだな。姿格好も見たことの無い。外人か?」
「お兄ちゃん、そんな言い方無いでしょ!シズクさんは確かに外人だけど、今師匠の工房で一緒に住んでいるんです!決して怪しい人じゃありません!」
確かにこの格好、セーラー服にスカート姿ってこの世界じゃ見ないもんね。怪しまれるのも当然か。
「まぁ、リリカが一緒なら大丈夫か。通っていいぞ。」
ちょっと納得のいかないような言いぐさだったけど、何とか私もお城の中に入ることができた。
「わぁ!大きい!」
「シズクさん、こっちです!広いからはぐれないでください!」
「あ、うん、ごめん!」
そして私たちはお城の中のある一室へとやってきた。
「お仕事ご苦労様です。頼まれたものを持ってきました。」
「うむ、ご苦労。ん?こっちの女は初めて見るが?」
「あ、遠い国からやってきたシズクさんです。いま私たちと一緒に住んでいるんです。」
「雫です。はじめまして。よろしくお願いします。」
「うむ。私はラウルという者だ。今後ともよろしく頼む。じゃあ、納品物を確認しようか。」
「はい。傷薬が10個と爆弾が30個ですね。」
「ば、爆弾!?」
あの男はあの工房の中で爆弾も作っていたの!?
「あぁ、昔は鉱山の発破用に使っていたのだが、最近は城外の野獣も凶暴になってきてな。何よりも我々の仕事はこのリーゼガングの住民を凶暴な野獣から守ることにある。万が一のことを考えてこうやって準備しているのだ。」
むぅ。そう考えれば納得はいく。でも同じ建物の中で爆弾を作っているのは非常に恐ろしい。もし万が一調合に失敗して爆発してしまったらどうなるのだろうか。あ、もしかしたら、他の住民へ被害を出さないためにわざわざ一番外側の、農業地帯に工房を作ったのかもしれない。
「あ、ちなみに、私たちも爆弾を使いますよ。初めて会ったときも私爆弾を使いましたよね?」
「あ、そういえば。」
「そうです。まだ備蓄もあるんですよ。これも万が一のためです。」
そう言ってリリカは私にほほえみながら話しかけた。
・・・いや、笑い事じゃ無いんですけど。