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俺たちが人数分の薬の調合を終え、エルフの村に向かう頃にはすでに真夜中となっていた。
結局調合を始めてから一睡もしていない。さらに薬が完成したのは期限当日の夕方にまで時間が経っていたため、そのまま駆け足でここまでたどり着いた。
できればこのまま眠りたい。でもそれにはまだ早すぎる。俺たちにはシズクを救うという大事なお仕事がある。この薬が効き、シズクの症状が収まるまでは休んで何ていられないのだ。なんと言ってもシズクは俺たちの工房にとって大事な働き手なのだ。
「はぁ、はぁ、期限はまだ過ぎていないだろうな!?」
俺は村の入り口にいたエルフに声を絞り出して叫んだ。
「ああ、期限までまだ1時間ある。」
「よ、良かったです・・・。」
「安心するのはまだ早い。はぁ、この薬が効くことを確認しなければ・・・、はやくシズクの元へ・・・。」
そう言って俺たちはシズクがいる小屋へと向かった。
シズクの症状はあれから変わっていなかった。相変わらず呼吸が荒いままだ。意識はない。
意識がな者へ薬を飲ませる方法それは。
俺は調合した薬を口の中へ入れると、シンヤから渡された水を口に含み、口移しでシズクの口の中へ水を流し込んだ。
「これで・・・どうだ・・・?」
この薬には即効性がある。まだ高熱は続くものの、荒かった呼吸は次第に落ち着きを取り戻した。
「ふう、成功だ。」
やっとここで一息つくことができる。
「リリカ、後は・・・頼んだ・・・。」
「あ、ちょっと、師匠!もう、わかりましたよ。任せてください。」
そう言い残して俺は深い眠りへと入っていった。
「エルウィン、エルウィン!」
聞き覚えのある声が聞こえた。俺はゆっくりと瞳を開ける。
「良かった。死んだかと思ったわ。」
「それはこっちのセリフだっつーの。」
そこには目を覚ましたシズクがいた。
「もう体は大丈夫なのか?」
俺は体を起こすとシズクに訪ねた。
「うん、おかげさまで。リリカから全部聞いたよ。エルウィンがこの病気の特効薬を作ったって。ありがとう。」
「な、なんだよ、急に改まって。そうだ、エルフ達はどうなったんだ?」
「みんな無事に快方に向かっているよ。君のおかげだ。」
後ろから声が聞こえた。振り向くとそこにはシンヤがいた。
「君たちが村を発った後も何人か同じ症状を発症したエルフがいてな、でも君が多めに薬を作ってきてくれたおかげで何とか数は足りたよ。」
ふう、やはり多めに作ってきたことは正解だったようだ。
「そうそう、長老が君たちにお礼が言いそうだ。後で長老に会ってくれ。」
「ああ、リリカが起きたらな。」
リリカは部屋の隅で寝息を立てて眠っていた。




