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エルフ族の男の名前はシンヤと名乗った。
彼はもちろんエルフではない。俺たちと同じ人間だ。
なぜ彼がエルフ達と行動を共にしているのか俺は知らない。興味が無いからだ。
そんな事よりシズクの治療が最優先だ。シンヤが言うにはシンヤが放った、シズクの肩に刺さった矢尻には毒が塗られているらしい。それほど強力な毒ではないが、この毒に犯されると、しばらく動くことはできないという。実際、シズクは目を閉じたまま苦悶の表情を浮かべ、自力では動くことはできない様だ。
俺はシズクを担いで森の中に進むシンヤに付いていった。
歩くこと30分程度と言ったところだろうか。俺たちはシンヤが所属するエルフ族の村へと到着した。
「これからシズクの治療を行ってから長老の許可を取ってくる、それまでここで待ってくれ。」
シンヤはそう告げると、シズクを担いだまま村の中へと入っていった。
村の入り口の手前には門番と思わしきエルフの男が2人立ってこちらをにらんでいる。
「うわ・・・実際にエルフを見るのは初めてです・・・。」
当然だ。エルフは人間の住む森の外には出てくることはない。俺だって始めて見るのは初めてだ。俺は彼らを見つめる。そうすると彼らは機嫌が悪そうににらみ返してくる。俺はすぐさま視線をそらした。
このような状況から30分経過した頃だろうか。村の中からシンヤが戻ってきた。
「一応長老の許可は取ってきた。ただし、彼女が回復するまでの間だけだ。彼女が回復したらすぐにこの村から出て行ってもらう。」
「まぁ、当然だろうな。了解した。」
「それじゃ、彼女の所まで案内する。ついてこい。」
俺たちはシンヤについて、エルフの村の中へ入っていった。
周りのエルフ達は、ひそひそ話をしながらこちらをにらんでいる。幼いエルフにとっては「人間だ!」と叫んではこちらに指を差す。側にいる大人のエルフ達はその行動を見て見てはいけないというような事を話しかけて子供達を戒める。
「緊張します。たぶんエルフの村に入った人間は私たちが最初じゃないでしょうか。」
「いや、正確には2番目だな。」
当然だ。一番最初はおそらくシンヤとかいう男になるだろう。
そんなひそひそ話をしながらシンヤの後を付いていくと一件の小屋の前にたどり着いた。中に入ってみると、底には肩を治療を終えたシズクが質素なベッドに横たわっていた。顔を見ると未だに苦悶の表情を浮かべている。まだ意識は戻っていないようだ。
「解毒剤を使ったからあと2時間もすれば目を覚ますだろう。それまでこの小屋で大人しくしているんだ。俺は小屋の前にいる。何かあったら声をかけてくれ。」
「わかった。」
そう返事をすると。シンヤは小屋を出て行った。
「シズクさん・・・、師匠、シズクさんは大丈夫ですよね?目を覚ましますよね?」
「わからん。今はとにかくシンヤとかいう男を信用するしかないだろ。俺たちにできることはシズクの回復を待つだけだ。」
そう言って俺は小屋の波部に背をつけて床に座った。
リリカはずっとシズクの側について離れようとはしなかった。




