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事の始まりは半年前だった。
俺はリーゼガングの第二城壁の外側に工房を構えていた。この工房は親から譲り受けた物だ・・・とはいっても正式に譲り受けた物ではない。
俺の母親はこの工房を経営する錬金術師だった。興味本心でその仕事ぶりを見ていた俺に母親は時間を見つけては錬金術の手ほどきをしてくれた。そして新しい物を作り上げたとこはそっと頭をなでて褒めてくれた。俺はそれが嬉しくてますます錬金術にのめり込んでいった。
一方の父親は傭兵をやっていた。基本的には母親の錬金術の材料収集に付き合うことがほとんどだったが、単独で仕事を引き受けることも少なくはなかった。
そんな父親は俺に強い男になって欲しいという希望もあり、剣術を教えてくれた。訓練は厳しいものだったが、次第に腕が上がる度に俺を力一杯頭をなで俺を褒めてくれた。
だが、その両親はもういない。
ある日、母親の材料収集に父親が付き添って家を出たのだが、予定の1週間を過ぎても、一ヶ月経っても帰ってくることはなかった。
後日、騎士団が調査に向かったところ、リーゼガングから遠く離れた渓谷で母親が身につけていたペンダントと父親が肌身離さず持っていた剣が見つかった。このことから始めて俺は両親が亡くなったと認識した。それと同時にこの工房も引き継がなければならないことを認識した。
話を元に戻そう。
「師匠、ただいま戻りました!」
リリカの元気な声で俺は目を覚ました。俺が錬金術で調合を行うときは調合に集中するため一睡もしないで調合を行う。その間、仕事部屋にはリリカはもちろん誰も入ることは許していない。そして調合が終わると俺は居間にあるソファーで死んだように眠る。目を覚ましたら次の日を通り越してさらに次の日だった、と言うことも珍しくない。
リリカには体調が心配だからちゃんとご飯だけは食べてください、とは言われているが大きなお世話だ。俺は俺のペースで仕事を行っている。これで飯が食えたら何の問題もない。
そんなリリカが俺に紙を見せつけた。
「今度の品物の依頼です。」
「ああ、すまない。」
俺はその紙を手にとって依頼物のリストを眺める。
「・・・うーん、これだと材料が足りないな。リリカ、明日材料採取に出かける。準備しておけ。」
「はい、わかりました!」
こう告げると俺は再び目を閉じ、深い眠りに入った。
そして次の日。
近所の森の中で材料採取を行っていたときだった。
「師匠、何か声が聞こえませんか?女の人の。」
女の人の声?・・・確かに聞こえる。
「だれかいませんかー!」
こんな所に女1人で何をしているのだろうか?
俺はその声のする方へと向かった。
そこで見かけたのはオオカミに囲まれた1人の見慣れない格好をした女の子だった。そしてオオカミの一匹がいまにも女の子に襲いかかろうとしている。
「リリカ!爆弾だ!」
「了解です!」
リリカはオオカミの群れの中に向かって護身用に持たせていた特性の爆弾を投げさせた。




